幸福サーカス団

もちもちピノ

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第二シーズン

プロローグ 後編

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 数日後ジョーカーは退院し久しぶりに外を歩いた。

「快晴だね」
小鳥がピチュピチュ鳴いている。

そしてルーシー先生から支給されたしばらくの間寝泊まりをする家の前に着く。

町から離れた田んぼ道を歩き山に登った先にある古民家。

「ここか…」

すると後ろから足音が聞こえ振り向くとエドガーとミヒャエルが古民家を見ていた。

「アントワーヌさん??」
「……」

どうやらこの二人も自分と同じらしい……とりあえず自分たちは家の中に入っていき、スマホを確認するとルーシー先生からのメッセージ中身を開いてみる。

三人へ
今日からしばらくの間安全が確認でき次第一緒に生活をしてください。仕事は無理せずほどほどに あと言い忘れていましたが兄弟三人仲良くね♡ ps 生まれ順はアントワーヌ ミヒャエル
エドガーです
           ルーシー先生より

そのメールを見るにエドガーは驚く。
「私達って兄弟だったんですか??」
ミヒャエルはボーとしていたがジョーカーはなんとなく察してはいた。

「同じ苗字で容姿も似てるし…血縁以外ありえなくない……あっエドガーはよく見たらあんま顔似てないから気づかなかった」

「という事はアントワーヌさんをお兄ちゃん呼びしてもいいという事」

そしてエドガーはアントワーヌの手を掴む。
「お兄ちゃんって呼んでいいですか?」
「別にいいよ」

エドガーはにっこり笑うとジョーカーは少し目を逸らした。

(誰かに似ているなって思っていたけどこいつ顔立ちはママに似ているんだ ボクとミヒャエルとは二卵性双生児かな)

ミヒャエルもエドガーを続き自分に指を刺した。

「あっわかりました ミヒャエル兄さん」
ミヒャエルは急いでポケットからメモを取り、書いていく。

「…わかった よろしくねアントワーヌお兄ちゃんとエドガー……ぼくすぐ忘れちゃうから……」

二人はコクリと頷いた。

こうして今日から三人で暮らすことになったものの…生活リズムが違う三人はお互いに苦労していた。

翌日の朝のこと早めに起き朝の支度をするエドガーは朝早くジョーカー達を起こす。

「朝ですよ 起きてください」

「まだ午前1時…だよ」
ジョーカーの隣でお布団にくるまるミヒャエル
元気なエドガー…

(エドガーはショートスリーパーなのか??それにしても迷惑だ)

「あのさボク達もう少し寝ていたいんだよね…」
「いえ 朝は早い方が一番ですよ お兄ちゃん」

キラキラした目で見つめられた。

(ウゼェ)

紆余曲折もあり二人は朝ごはんを食べたあとミヒャエルが遅めに起き「だれ?」と聞いてきたので改めて挨拶と経緯の説明をし、コクリと頷いたあと朝ごはんを食べ始める。

家に付属するテレビのアニメでスーパーでよく聞く曲が流れるとミヒャエルはニコニコと笑い出しそれをおかずにご飯を食べていた。

「ミヒャエル兄さん テレビを見ながらご飯だなってみっともないですよ」

「ぼく…これでいいの」

ニコニコしながら曲をおかずに食べるミヒャエル…そのアニメが終わり別の曲が流れると苦い顔をしながらご飯を残した。

「ううっまずい……苦い…味が消えちゃう」

口を押さえながら吐きそうにするミヒャエルに
ジョーカーは気づいた。

「ちょっとチャンネル変えるね」

チャンネルを変えるとなつかしの曲特集というテレビ番組に変わるとミヒャエルの表情が緩む。

「あっまずいのなくなった」

またニコニコしながらご飯をかき込む。

「やっぱり…そうだったか」
「やっぱりって??」

エドガーはそう聞く。

ジョーカーはミヒャエルのあの特徴からある個性を思い出していた。

「ミヒャエルは共感覚かもしれないね」
「共感覚??」

五感を主観的な知覚現象を生々しく捉えている特徴を持つ個性…共感覚

人によっては数字や音に色がついていたり、味を感じたり、絵などで音を感じることができる
記憶力がいいというメリットもある。

「ミヒャエル その音は何味だい」
「…甘い味 ふわりってしてる」

聞いている曲はふるさと、ミヒャエルは懐かしい曲に甘みを感じ、逆に激しい曲には強い苦味を感じているらしい。

「…ぼく 一日で忘れちゃうけどそれまで本で見たことや文字はすぐに覚えられるよ……みんなにも褒められてる」

「すごいですねミヒャエル兄さん」

エドガーはミヒャエルを褒めていた。

「羨ましいですね…私色がわからないので…」
「色?」

エドガーはジョーカーを見る。

「私 灰色に見える色盲で聴覚もあんまり優れていません常日頃雑音がきこえているので……でもそんなに不便ではないですよ」

「……」

誤魔化すように笑ってはいたがその言葉の裏にはどうにもならない闇を感じた。

そして……朝食を食べ終わりジョーカーはスマホを開くと団長からのメッセージが届いていた。

「なんだろう…えっ!?」

そのメッセージには衝撃的な内容が……

「モルガとアクアマリンちゃんが…スノーダイアモンドサーカス団に??」

 ジョーカーは急いで団長に連絡する。

「団長!モルガとアクアマリンちゃんが」

団長は電話越しに口をゆっくり動かす。

「再建のためにスノーダイアモンドサーカス団に資金援助の際二人を明け渡す事になった すでに二人には伝えてある」

「そんな」

あまりに突然の出来事により立ち尽くす。

そんな中一人の来客がふらりと現れた。

「よう 元気にしているか?サファイア」

その男は虹色の髪色と白目が虹色の色白の男、ミヒャエルはその声に顔を出す。

「??」
「また忘れたな…俺だよ俺 スノーダイアモンドサーカス団の団長 キース」

ミヒャエルはまだキョトンとしている。

「おはよう御座います ボクはミヒャエルの兄のアントワーヌと申します…あの付かぬことをお聞きしますが貴方はスノーダイアモンドサーカス団の団長さんですよね」

その男はキースはジョーカーの声にニヤリと笑い出すと余裕な表情で笑う。

「どうも ミヒャエルのお兄様……私は貴方の団長様の清き仲でして……今回資金援助をさせていただきました」

「お金の援助ありがとうございます……二人は元気にしていますか??」

「ええっもちろん……あっ今回こちらに来た理由はもう一つありまして……」

そう言うとジョーカーに一枚の紙を渡した。

「…これって」
それは幸福サーカス団がスノーダイアモンドサーカス団に援助した借金の数字と団長の直筆のサイン……

「大体一億円ぐらいの額ですね…必ず返してくださいね?」
「こんな額すぐにでも」

キースは書類の小さな文字に指を指す。
「あぶく銭の支払いはご遠慮くださいと描かれていますので能力でお金を出すのはダメですよ」

ジョーカーはキースを睨みつけた。

「じゃあ私はこれで ミヒャエルしばらくの間近くにテントを貼るので必ず…」
「はい」

そう言ってキースは帰って行くのだった。

謎の生物に一度殺され、再建のために一億円の借金をしたサーカス団……

「今年は厄年だな……」
ジョーカーはストレスにより血の涙を流していた。












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