幸福サーカス団

もちもちピノ

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選ばれなかったヒーローの話

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 2年前
ある町にお菓子やパンを配る1人のぽっちゃりとした若者が1人 彼の名前は安堂万太郎あんどうまんたろう

彼は紛争地域やスラム街にたびたび訪問し 食べ物を無償で配るボランティアをしていた。
しかしその行動は評価されなかった 周りから馬鹿にされ 助けた子供達ですらあんまりいい印象は持たれなかったそれでも彼は助けた。

自らが世界の平和のために…


ある晴れた日 安堂は1人おにぎりを配っていたが悪戯好きの若者が彼の背中を押し
その時に散らばったパンを通行人が知らん顔で踏み潰していく

「拾わなきゃ」
泥でぐちゃぐちゃになったパンを拾い集めると偶然通りがかった道化師が一つ拾い

それを口に入れた。

「悪くないね」道化師はパンの代金を出そうとするが…

「いいんです…お代は結構です」

ぐちゃぐちゃのパンを拾い そそくさと何処に行ってしまう。

「…」

道化師はぐちゃぐちゃのパンを片手に安堂を見ていた。

安堂はスラム街の一角にあるキッチンカーに戻り 深く深呼吸。

キッチンカーにあるキッチンにぐちゃぐちゃになったパンを置く

「…はぁ」

するとこんこんと車の扉を叩く音がし ゆっくり開くとあの道化師が立っていた。

「ついてきたの…」

少しビクッとなるが道化師はズカズカと車内に入り キッチンにあるぐちゃぐちゃのパンを食べようとしていた。

「あの……」

静止しようとしたが道化師は黙って口に入れた。

「んークセになる」

そしてぐちゃぐちゃのパンは空になってしまった。

「あのそんなに美味しかったの??」

安堂は恐れながら道化師に聞くと口についた
砂を落としながら

「まあまあかな」

安堂はその言葉に「ボク…それより美味しいパン作れるよ…」

道化師はその言葉に振り向き

「作ってよ」

強い口調だが安堂は喜んでパンづくりに励む。

小麦粉を測り イースト菌とお砂糖を入れ
少しのお塩さらに水も入れ一気に混ぜ、まとまりがつく際に強くこねる。

ジョーカーはその間に周りを見ていた。

あぶらぎって汚い車内だがどことなくイースト菌の匂いがする。

ベッドに近い所には何故か白い錠剤の瓶が置かれている。

「お茶でもどう?」

「いいね」

安堂はフレンドリーに道化師にコップに注いだ紅茶を出す。

「お客さん来たの 久しぶり」

道化師は紅茶を飲む。

「お茶は安物だけど美味しいよ」
かちゃりとカップを置くと安堂は笑う。

「それは良かったよ ところで君の名前は
僕は安堂万太郎 君は??どこからきたの」

道化師は名刺を出す。

「ジョーカー みんなを幸せにする道化師さ どこからきたのどこでもないところ」

その言葉を聞き安藤の目は輝く

「僕と同じだね 僕もみんなを幸せにする夢があるんだ」

安堂はある本を出す。

その本はヒーローの絵本で困っている人にご飯を与えたり順来のヒーローものでよくある悪い人をやっつけるというものではなく貧しい人に食べ物を与えるのが特徴であり子供向けにはよくある話だった。

「僕は美味しい食べ物があれば世界は平和になれるって思っているんだ だからさっきみたいに無償でパン配っていて…見向きはされないんだけどね」

道化師 ジョーカーはなるほどなと言う顔をしながら「泣きながら潰されたパンを拾う馬鹿がいるなって思って近づいたんだ でも砂だらけのパン…不味くはなかったよ?」

安堂はジョーカーの手を握り締め

「不味くはなかったんだね 嬉しい…砂だらけでも不味くはないんだ…」

嬉しそうに笑う安堂に戸惑う。

(バカにしようかなって思ったんだけどこんなになつかれるなんてね…)

ジョーカーはすんとした顔をしていた。

それからというもの安堂とジョーカーの交流は続いた。

安堂のパンを食べに行くためわざわざキッチンカーに向かい たまに貧しい人々にパンやお菓子などを配り続けた。

そしてその夜

いつものように2人はコーヒーを飲んでいた。
ジョーカーが本を読みながら呟く

「万太郎 君の願いってある?」

その言葉に安堂は目を見開き…コーヒーを一口飲見ながら答えた

「僕の願いね…君と友達になりたいなぁなんて」

ジョーカーはチラッと見ていた。

「僕ら友達じゃなかったの」
そう答えると安堂は赤面する

「…ジョーカーすごく嬉しいよ」

もじもじとしだす安堂にジョーカーは本を置き
コーヒーを飲み干すとキッチンカーの扉から出ていき 飛んだ。

1人になった安堂は嬉しそうな顔でメモを取り
白い錠剤を飲む。

「ジョーカー…ぼくのともだち…ふふっ」

メモを書き終えるとキッチンに強い粘着テープで貼り付ける

一方ジョーカーは変な気持ちでもじょつく


奇妙な縁出会った2人だが病魔が安堂の体を蝕んでいたことはジョーカーは知らなかった。

翌日

いつものように安堂はパンの材料を測っていた。

しかし 小麦粉の分量を忘れてしまった野田

「あれ?なんだっけ…えっと」

その時ジョーカーが突然現れた。

「うわっ」

とっさにキッチンにある紙を見た。

「ジョーカー…なんでここに?」

安堂の言葉はどこかたどたどしい。

「君のパンが食べたくて どこにあるの」

安堂は一瞬(パンってなんだっけ)と思ったが
すぐにメモを見て思い出し。

急いで作る。

ジョーカーは何処か怪しいと思いながら安堂を見ていた。

その日から安堂の様子がおかしかった

パンのレシピを忘れてしまったり ご飯を食べたことを忘れたり さらには車の運転を忘れ危うく事故になりかけたことがあった。

ジョーカーは安堂の症状が悪化していることに気づいていた これ以上車の運転をさせるわけにはいかず わざわざ車の免許を取り代行して
貧しい人々にパンやお菓子などを配っていた。

その間 安堂の症状は悪化している。

「えっと…トイレしたっけ?」

とうとうトイレのことまでわすれてしまいその日からおむつになってしまった。でもそんな彼を見捨てずジョーカーは助けていた。

友人の介護は大変だったがジョーカーにとっては苦ではなかった。

しかしそんな献身的な介護も長くは続かなかった。

ある日 安堂が姿を消したのだ。

ジョーカーがパンを作っている最中に…

「万太郎」

ジョーカーはその時自分でもわからない何かがずきんとしたため万太郎を探しに出ていた。

街中や森のなか安堂を探したが見つからない

そしてある森の奥の道路でボロボロの安堂を見つけた。

きっと歩いている時に車に跳ねられたのだろう

「…あっ…あっ」

口から血を吐きながら安堂はジョーカーを見る

「万太郎 もう喋らなくていいよ 辛かったね」

本来なら彼を生き返らせることは可能だだけど
安堂は願う口もなく全身がものすごく痛いだろうからジョーカーは安堂に優しく触れた。

「万太郎…ボクは君と友達に慣れて悪くなかったよ 生まれ変わったら会おうね…」

そう答えると安堂は笑いながら ジョーカーの腕の中で息を引き取った。

そして安堂の亡骸は綺麗なお花のある場所に埋葬された。

「さようなら 醜く美しいヒーロー」

ジョーカーは安堂のおでこにキスをした。


その後 安堂は小さなメディアには行方不明と
報道されたが次第にみんなから忘れ去られた。

でも誰よりも幸せな人でした。

その後ジョーカーは命日になるとある花を買いに行くと律子に出会い尋ねられる

「その花って」

「これ?ボクの友人の好きだった花だよ彼はボクの知る中で最高に愚かで最高に幸福な人だったな…」

ジョーカーの手には真っ青な花色のデルフィニウムの花束 

花言葉
清明 あなたは幸福を振りまく







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