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始まり

愛憎

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 その日からアントワーヌの扱いは変わった。
雑用係から泣きピエロつまりはみんなから笑われるピエロになる。 

ジョーカーがギャグをやりそれを受けるのが仕事しかし日を追うごとに過激になる内容

アントワーヌが芸をやる際にジョーカーに足をかけられ転び客から笑われる日もあれば、的として扱われナイフを複数投げられたりする日もあったが最も最悪だったのはジョーカーが縄で縛ったアントワーヌを梯子からバンジージャンプさせ水の入ったバケツに頭から落ちるなどの虐待に近い芸を披露し客はそれを見て多いに喜んだ。

そしてサーカスの開演時間が終わり夕ご飯を食べていたピンキーはアントワーヌに言う。

「アントワーヌ 主役より目立ってはダメだと何回も言っているだろ 君は僕の下でやればいいんだよ」

「…わかりました」

ハッピーはシナモンロールを一口食べコクリと頷いた。

その光景を狼沢は神妙な顔見ていた。
(アントワーヌ)

その夜
春前の寒い夜に薄めの生地の布団で眠っていたアントワーヌ
そこに狼沢が布団を持ち、テントまで来ていた。
「アントワーヌ…いるか」

アントワーヌはムクッと起き上がると指をパチンと鳴らした。
するとキラキラとした光と共にお菓子と紅茶が出てきた

「狼沢さん~もう朝でしょうか?」
寝ぼけ眼で答えるがその光景にsilkは驚いている。

「アントワーヌ…お前魔法が使えたのか…」
そう質問をするとアントワーヌはキョトンとする。

「なにか問題でも」

「なんで魔法が使えるって教えてくれなかったんだ」

アントワーヌは狼沢の質問に対してこう答える。

「団長には伝えていますよ それにあのハラスメント野郎に伝えたら自分を目立たせる為にボクの魔法が使われるのは目に見えていますしいざという時のために取っとこうかなと…」

狼沢はこくりと頷く。
ジョーカー事ピンキーは昔っから調子に乗りやすく自分より目立つのが許せない性格のため、
散々困らされていた 自分も種族の事をギャグにされた時は不快な気持ちでいっぱいだったが我慢していた。

アントワーヌはピンキーに自身が魔法が使えるとわかれば絶対に自分を目立たせる道具にされる、だからジョーカーの前では無能を演じていたんだと…しかし気になるところがあった。

「いざっていう時っていつなんだ」

アントワーヌは真顔で答える。
「春頃に大きなショーを開催しますよね その時に壮大にネタバラシしますよ お客様の前で」

その言葉にゾクっときた狼沢は紅茶を一口で飲み干した。

一方その頃ピンキーはある女性に会いに行っていたが…

「私 貴方のこと好きじゃないの…」
「そんなボクの何が悪いんだい マリアンテ」

その女性マリアンテはこう答えた。

「私…クールなハッピーくんの方がタイプなの!!」

晴れた日の夜うなだれる。

「クソがァァァ」

その日からジョーカー事ピンキーは新入りのアントワーヌを憎むようになった。

翌日世間はクリスマスムードの中アントワーヌはいつものように
ピンキーの衣装を縫い直すとピンキーがニコニコしながら声をかけた。

「メリークリスマス アントワーヌ今日は君に
特別なショーに出ろ これは命令だ」

「はい わかりました」

アントワーヌは立ち上がり言われた通りピンキーについていく

ピンキーは今回のショー用の衣装を見せた。

その衣装はお世辞にもかっこいいとは言えず
いかにも古ぼけた衣装。

「これをきて今日のショーに出ろ」

「はい」

仕方なくぼろぼろの衣装を着るとピンキーは何故かニヤニヤしていた。

「今日は君の晴れ舞台だからね」

ピンキーはそう言って笑う。


「メリークリスマス 今日は特別ショー
今回はこのハッピーが跳び芸を披露しますのでお楽しみあれ」

観客は興奮でわーと歓声を上げると同時に
ハッピーが舞台裏から現れて手を振ったその時
テントの上から泥のようなものが振ってきた。

観客は泥の臭いに耐えられず帰って行く。

それを見た狼沢は舞台裏から急いでハッピーを助け出した。

その頃 ピンキーを問い詰めた狼沢

「お前…自分が何をしたのかわかってんのかよ!!」

「わかっているよ……あいつが生意気なのが悪いからお灸を据えたんだよ?スターは一人で十分だ…僕より目立ったあいつが悪い」

その言葉に今までの感情が爆発した狼沢はピンキーを殴ろうとするがハッピーに止められた。

「ハッピー」
ハッピーは黙ったまま狼沢の拳を掴んだ。

狼沢はその場から去ろうとした瞬間
ハッピーはピンキーに対してクスリと笑っていた。そして部屋に戻ったハッピーは今は亡き母の手紙を見ていた。

「ママはいつも言っていたねやられたら100倍にしてやり返せって……さてと…今日やられた嫌がらせを日記に描いとこ」

ハッピーはそう言って日記に嫌がらせを書き留めた。






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