それは語られなかっただけ

karon

文字の大きさ
上 下
6 / 14

容疑者たち

しおりを挟む
「この場合、一番得したのは誰だ」
 太郎の疑問にはあっさりと答えた。
「孝徳天皇、斉明天皇、天智天皇、天武天皇」
「天皇しかいないの?」
 太郎が目を丸くする。
「山背大兄皇子か古人大兄皇子のどちらかが即位していたら、そのうちの三人は廃れ皇子の運命だったはずだ」
 中大兄の皇子と日本書紀にそう記されているが、ことが起きる前は単に葛城の皇子とだけ呼ばれていただろう。
 大兄というのは大王候補という意味で呼ばれる。
 この時点で大兄の地位にいたのは山背大兄皇子と古人大兄皇子の二人だけ。つまり蘇我氏の母を持つ二人だけだった。
 そして、そうじゃない皇子は最初から候補に上らない、大兄の称号を得ることはできなかった。
 つまり、この時点で大兄の地位にあった山背大兄皇子は入鹿と不仲という事実はなかったという仮説が成り立つ。
「皇極天皇は中大兄の皇子が成長するまでの中継ぎという説が有力だと聞いたことがあるけど」
 太郎がそう呟く。
「でもな、この場合、たぶん舒明天皇は、古人大兄皇子を即位させるために皇極天皇を即位させたんじゃないかと思う」
 俺はそう考えた。
 はなっから蘇我氏は中大兄皇子を皇位継承など考えていなかっただろう。
「大兄になるには年齢制限がある感じだな。舒明天皇が亡くなる直前大兄は山背大兄皇子しかいなかったんじゃないかな、そして古人大兄皇子が大兄の身分を得るまでの時間稼ぎに皇極天皇を即位させたんだ」
「それ、皇極天皇は不満に思わないわけ」
「ないだろうな」
 愛人の息子を即位させるために、普通に怒る。
「しかしまあ、そんな考え方ができるというだけだけどな」
 俺はこきこきと首を鳴らす。
「そもそも舒明天皇も即位するために法提郎女と娶ったんじゃね、法提郎女の産んだ子供を大兄にするという条件でさ、皇后はただのお飾りだったんじゃないかね」
 ああ、軽く頭を抱える太郎。
「やばいよな、それ」
「そもそも舒明天皇の父親は彦人大兄皇子っていうんだけど、敏達天皇の長男だったが蘇我系の皇子に追い落とされて生涯即位できなかったんだ」
 ああああと太郎がつぶやく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
故郷、甲賀で騒動を起こし、国を追われるようにして出奔した 若き日の滝川一益と滝川義太夫、 尾張に流れ着いた二人は織田信長に会い、織田家の一員として 天下布武の一役を担う。二人をとりまく織田家の人々のそれぞれの思惑が からみ、紆余曲折しながらも一益がたどり着く先はどこなのか。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~

橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。 記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。 これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語 ※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...