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予定外の行動
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「綺羅、飲みに行こうぜ」
敦が綺羅を誘っている。しかし飲みに行こうって、あいつアルコールアレルギーだろ、あれは弱いとかそういうんじゃなくて飲んだら命に係わるやつじゃねえの。
「おい、誰を誘っているんだよ」
思わず止めに入ってしまった。
「いや、綺羅が飲みに行くわけないだろ」
俺が綺羅の前に立ちはだかってそう言えば敦は不機嫌そうに俺を睨んだ。
「お前は誘ってねえんだよM」
綺羅は俺と敦に挟まれて少々戸惑った顔をする。
「じゃあ、こうしようか。三人で飲みに行くっていうのはどう?」
綺羅がいきなりそう切り出した。
「おい、綺羅?」
「そうじゃないといかない」
きっぱりとそう言った綺羅に敦は戸惑った顔をした。
いや、俺も戸惑う。俺は一週間以内に敦を始末しなけりゃいけないんだが、それで飲みに行ってもいいもんなんだろうか。
「それじゃ決まり」
綺羅はそう言ってにっこりと笑った。
「おい、綺羅?」
「盾になってくれると嬉しいな、敦最近やけに飲まそうとするんだよね、かわすのも面倒くさくて」
綺羅は人の気も知らずにへらりと笑った。
俺はやれやれとため息をついた。知り合いを殺すのは初めてなのでどうも調子が狂う。こういう時いらん接触を避けた方がいいのか、それともあえて仲良く飲みに行った方がいいのかの判断も悩ましい。
綺羅はというと鼻歌交じりだ。そして敦は何とも嫌な目で俺を見ていた。
まるで邪魔な障害物を見ているような。
障害って、敦は確か女好きだったはずだ。いくら奇麗でも綺羅はれっきとした男だったはず。
それは間違いない。俺は確かに綺羅の真ッ平らな胸板付きの上半身を見たことがある。あの年齢の女ならあそこまで真ッ平らはあり得ない。
だが敦が男もいけるという情報は今まで一度も聞いたことがないし、ましてや仲間の綺羅を誘うくらいなら隠しきれるはずもないのだが。
俺の煩悶にも気づかず、あるいは無視して綺羅と敦は連れ立って歩き出した。
俺はそのあとをよろよろとついていく。
そして敦が俺たちを連れてきたのはちょっといかがわしい感じの飲み屋だった。
内装はダーク調だし、客も俺たちは堅気じゃないと全身全霊で訴えているような恰好をしていた。
俺たちも業界人のはしくれだが、俺は普段着に凝る質ではないのでごく普通のシャツにジージャンとジーンズという格好だったし、綺羅自身もこの日は大人しめにグレーのジャケットと黒のパンツといういで立ちだった。
敦だけが鉄鋲でキラキラしている革ジャンに川のパンツそしてこの暗い中よく見えるなという感じの真っ黒なメガネをかけている。
そんなわけで俺と綺羅はごく普通の格好をしているという理由でその場で浮き上がっていた。
俺はこんなに目立ったのは生まれて初めてかもしれないという感慨にふけっていた。
そしてこの酒場、本当にいかがわしい場所だった。
顔は向けず視線だけで回りを観察してみると何やら錠剤のようなものをやり取りしているのが見えた。
健康にいいものではなさそうだと判断する。
敦が綺羅を誘っている。しかし飲みに行こうって、あいつアルコールアレルギーだろ、あれは弱いとかそういうんじゃなくて飲んだら命に係わるやつじゃねえの。
「おい、誰を誘っているんだよ」
思わず止めに入ってしまった。
「いや、綺羅が飲みに行くわけないだろ」
俺が綺羅の前に立ちはだかってそう言えば敦は不機嫌そうに俺を睨んだ。
「お前は誘ってねえんだよM」
綺羅は俺と敦に挟まれて少々戸惑った顔をする。
「じゃあ、こうしようか。三人で飲みに行くっていうのはどう?」
綺羅がいきなりそう切り出した。
「おい、綺羅?」
「そうじゃないといかない」
きっぱりとそう言った綺羅に敦は戸惑った顔をした。
いや、俺も戸惑う。俺は一週間以内に敦を始末しなけりゃいけないんだが、それで飲みに行ってもいいもんなんだろうか。
「それじゃ決まり」
綺羅はそう言ってにっこりと笑った。
「おい、綺羅?」
「盾になってくれると嬉しいな、敦最近やけに飲まそうとするんだよね、かわすのも面倒くさくて」
綺羅は人の気も知らずにへらりと笑った。
俺はやれやれとため息をついた。知り合いを殺すのは初めてなのでどうも調子が狂う。こういう時いらん接触を避けた方がいいのか、それともあえて仲良く飲みに行った方がいいのかの判断も悩ましい。
綺羅はというと鼻歌交じりだ。そして敦は何とも嫌な目で俺を見ていた。
まるで邪魔な障害物を見ているような。
障害って、敦は確か女好きだったはずだ。いくら奇麗でも綺羅はれっきとした男だったはず。
それは間違いない。俺は確かに綺羅の真ッ平らな胸板付きの上半身を見たことがある。あの年齢の女ならあそこまで真ッ平らはあり得ない。
だが敦が男もいけるという情報は今まで一度も聞いたことがないし、ましてや仲間の綺羅を誘うくらいなら隠しきれるはずもないのだが。
俺の煩悶にも気づかず、あるいは無視して綺羅と敦は連れ立って歩き出した。
俺はそのあとをよろよろとついていく。
そして敦が俺たちを連れてきたのはちょっといかがわしい感じの飲み屋だった。
内装はダーク調だし、客も俺たちは堅気じゃないと全身全霊で訴えているような恰好をしていた。
俺たちも業界人のはしくれだが、俺は普段着に凝る質ではないのでごく普通のシャツにジージャンとジーンズという格好だったし、綺羅自身もこの日は大人しめにグレーのジャケットと黒のパンツといういで立ちだった。
敦だけが鉄鋲でキラキラしている革ジャンに川のパンツそしてこの暗い中よく見えるなという感じの真っ黒なメガネをかけている。
そんなわけで俺と綺羅はごく普通の格好をしているという理由でその場で浮き上がっていた。
俺はこんなに目立ったのは生まれて初めてかもしれないという感慨にふけっていた。
そしてこの酒場、本当にいかがわしい場所だった。
顔は向けず視線だけで回りを観察してみると何やら錠剤のようなものをやり取りしているのが見えた。
健康にいいものではなさそうだと判断する。
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