22 / 33
第二十一章
しおりを挟む
ドンペリーは朗々と語る。
「泥棒を見つけたら決して近づいてはならん、我らはこの地の領民なのだ、そのような卑しい存在にかかわりあうことはならぬ」
まことにその通りと衛視たちは答える。
「赤子を泣かす乳母には、早く寝かし付けろと命じろ」
まったくもってその通りと衛視たちは答える。
「酔っ払いどもは早めに寝かしつけることだ」
「寝ない場合はどうするので?」
「その時は寝るまで待つがいい。どうせそう時はかからないだろう」
そして咳払いをする。
「明日は領主さまのご息女の婚礼だ、何事もなく終わらせねば」
まことにまことにその通りと衛視たちは答えた。
べろべろに酔っ払った二人は軒下で大声でわめいていた。
「しかし、よくもまあうまく引っかかったものだな」
コンラートはゴブレットをもてあそびながら呟く。
「まあ、あれだ、俺は先見の明があるからな」
ポラチョは大分出来上がっていた。顔は真っ赤になり息も荒くなっている。
「あのマーゴットをたぶらかしたのも先見の明のたまものだ」
「そうか、たまたま引っかかったのがヒローインの小間使いだっただけじゃないのか?何しろ城中の腰元に言い寄っていたじゃないか」
コンラートの戯言をポラチョは黙って黙殺した。
「俺はマーゴットにおべっかを山ほど使いヒローインのドレスだってお前の方がよく似合う。お前の方が美しいと何度も言った。そしてまんまとマーゴットはヒローインの衣装の一つをこっそり借りて俺とのあいびきにやってきたというわけさ」
「それでごまかせるか?言っちゃなんだがマーゴットとヒローインは似ても似つかないんじゃないか」
「そこはそれだ、ヨハン様がちゃんと場所を考えてくださった。丁度後ろ姿しか見えない場所を選んでベネディクトとペドロ様にご覧になっていただいたという寸法さ」
ポラチョは胸を張って嘲笑う。
「かくしてヒローインは淫売の汚名を着たわけだ。婚礼の前日男と逢引とは全く持ってふしだらな」
「本当にマーゴットをヒローインだと二人は思い込んだのか」
「それはもう、明日の婚礼ではベネディクトはヒローインのような淫売と婚礼などごめんだと騒ぎ立て、ペドロ様は面目を無くされるだろう。ヨハン様はその有様を見て笑いが止まらないという寸法」
「あわれなもんだ。そのまま嫁ず後家加、明日はヒローインの婚礼ではなく葬列だな」
そして二人は下品な笑い声を立てた。
「この者どもを捕らえよ。顰蹙なる姫君ヒローイン様にまことに無礼な発言だ」
ドンペリーが引きつれた衛視たちに告げた。
「確かにとてもまともじゃないことを言っていたようですが。かかわっていいのでしょうか」
「ヒローイン様のためだ仕方あるまい」
べろべろの二人はあっさりと捕まった。
「泥棒を見つけたら決して近づいてはならん、我らはこの地の領民なのだ、そのような卑しい存在にかかわりあうことはならぬ」
まことにその通りと衛視たちは答える。
「赤子を泣かす乳母には、早く寝かし付けろと命じろ」
まったくもってその通りと衛視たちは答える。
「酔っ払いどもは早めに寝かしつけることだ」
「寝ない場合はどうするので?」
「その時は寝るまで待つがいい。どうせそう時はかからないだろう」
そして咳払いをする。
「明日は領主さまのご息女の婚礼だ、何事もなく終わらせねば」
まことにまことにその通りと衛視たちは答えた。
べろべろに酔っ払った二人は軒下で大声でわめいていた。
「しかし、よくもまあうまく引っかかったものだな」
コンラートはゴブレットをもてあそびながら呟く。
「まあ、あれだ、俺は先見の明があるからな」
ポラチョは大分出来上がっていた。顔は真っ赤になり息も荒くなっている。
「あのマーゴットをたぶらかしたのも先見の明のたまものだ」
「そうか、たまたま引っかかったのがヒローインの小間使いだっただけじゃないのか?何しろ城中の腰元に言い寄っていたじゃないか」
コンラートの戯言をポラチョは黙って黙殺した。
「俺はマーゴットにおべっかを山ほど使いヒローインのドレスだってお前の方がよく似合う。お前の方が美しいと何度も言った。そしてまんまとマーゴットはヒローインの衣装の一つをこっそり借りて俺とのあいびきにやってきたというわけさ」
「それでごまかせるか?言っちゃなんだがマーゴットとヒローインは似ても似つかないんじゃないか」
「そこはそれだ、ヨハン様がちゃんと場所を考えてくださった。丁度後ろ姿しか見えない場所を選んでベネディクトとペドロ様にご覧になっていただいたという寸法さ」
ポラチョは胸を張って嘲笑う。
「かくしてヒローインは淫売の汚名を着たわけだ。婚礼の前日男と逢引とは全く持ってふしだらな」
「本当にマーゴットをヒローインだと二人は思い込んだのか」
「それはもう、明日の婚礼ではベネディクトはヒローインのような淫売と婚礼などごめんだと騒ぎ立て、ペドロ様は面目を無くされるだろう。ヨハン様はその有様を見て笑いが止まらないという寸法」
「あわれなもんだ。そのまま嫁ず後家加、明日はヒローインの婚礼ではなく葬列だな」
そして二人は下品な笑い声を立てた。
「この者どもを捕らえよ。顰蹙なる姫君ヒローイン様にまことに無礼な発言だ」
ドンペリーが引きつれた衛視たちに告げた。
「確かにとてもまともじゃないことを言っていたようですが。かかわっていいのでしょうか」
「ヒローイン様のためだ仕方あるまい」
べろべろの二人はあっさりと捕まった。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
踏み台令嬢はへこたれない
IchikoMiyagi
恋愛
「婚約破棄してくれ!」
公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。
春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。
そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?
これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。
「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」
ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。
なろうでも投稿しています。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる