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食糧庫
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鈿花は、なんとなくだが、後宮や王宮内の人間関係は読めてきた。
徳妃は完全孤立。宗教関係の人なので、誰とも積極的にかかわろうとしない。儀式があるとき以外はひたすら自室の祭壇に祈っているらしい。
賢妃は可もなく不可もなくだ。容姿が劣っているというものがいるが、せいぜい可愛いくらいだ。
本人の性格もどうやら負の方向に向かいやすいようだが、それが妙な行動力につながっている。
淑妃はやはり完全孤立。貴族達のためだけに後宮内にいる。そして貴族達との信頼関係が皇帝に全くないため皇帝から全くの虫という態度をとられている。もしまともな頭があったなら彼女はあまりにあまりな絶望的な状況に泣き暮らすしかなかっただろう。しかし、幸いなのか不幸なのか彼女にまともな頭はなかった。
頑張ればなんとかなると希望を捨てないその姿勢は美しいかもしれないが、頑張りようがないという事実を理解できる頭がなければ状況打開は難しいだろう。
現実を見なければ状況を何とかする手段など見つからない。
皇后は皇帝よりだいぶ年上に見える。見えるだけでなく本当に年上なんだろう。そしてそんな年まで独身だったということはまあ、そういうことだろうと判断がつく。政治的とか本人の資質とか。そんな皇后を立てざるを得なかった理由は他に適当な独身公主がいなかったに尽きる。
皇后がどれほど皇帝に影響を及ぼせるかは未知数。
こうして考えると、皇族といっても、人間関係には変わりないものだ。
実は鈿花の料理はうまい。実家は食料を商う商家。そのため食材の扱い、それに試食するためにいろいろ調理法を試したため料理の腕前は家族全員旨かった。
鶏と魚は生きたまま持ってこさせた。
野菜に有害な植物が混じっていたため死んだ肉なら何を仕込まれるかわからないからだ。
いちいち絞めるのが面倒だが安全には変えられない。
汚れた手をぬぐいながら入ったばかりの魚をさばく。
生きたままという条件だとこの海から離れた離宮だとどうしても川魚になってしまう。
臭み消しに醤でコトコト煮込むことにする。
後は野菜の膾など。
しかし皇帝が貴妃の部屋に通うようになったきっかけが食事だとは。
鈿花は生ぬるい笑みを浮かべた。
確かに月姫は料理屋で賃仕事などして、それなりにできたけれど。お隣の徳日当たりに教えてやりたいが。皇帝は食事で釣れると。
皇帝の食事を用意するとなると責任はかなり重くなる。
そのため食材に異物が混入していないかの確認に時間がかかる。
毎回混入しているが。
一度賢妃のところに確認してみたいが、どういうべきかわからない。
危ない草を取り除くと、それを袋に入れておく。
後で焼却処分だ。
「そういえば、水仙がどうして葱と混ざるんだろう」
書類仕事中にあまりに延々と続くためいい加減嫌になって雑談で気を紛らわそうと思ったのか龍会陰はそんなことを呟いた。
「混ざるわけがないでしょう、水仙は葱と全く違う場所に生えます」
完成した書類をまとめていた側近がさぼるなと冷たい視線を投げつつ言う。
「だが、貴妃の食糧庫で混ざっていたと言っていたが」
「そうですね、水仙に毒があると聞いたことはありますが」
言っていて不意に思考が戻ってくる。
「業者を調べなおさせろ、それと、貴妃の食糧庫を信用のおける人間に調べさせろ」
貴妃の夕餉に行くといったのだ、もし有毒なものが混じっていたら危なくてしょうがない。
側近も慌てて業者を呼び出す手はずを整えに行った。
徳妃は完全孤立。宗教関係の人なので、誰とも積極的にかかわろうとしない。儀式があるとき以外はひたすら自室の祭壇に祈っているらしい。
賢妃は可もなく不可もなくだ。容姿が劣っているというものがいるが、せいぜい可愛いくらいだ。
本人の性格もどうやら負の方向に向かいやすいようだが、それが妙な行動力につながっている。
淑妃はやはり完全孤立。貴族達のためだけに後宮内にいる。そして貴族達との信頼関係が皇帝に全くないため皇帝から全くの虫という態度をとられている。もしまともな頭があったなら彼女はあまりにあまりな絶望的な状況に泣き暮らすしかなかっただろう。しかし、幸いなのか不幸なのか彼女にまともな頭はなかった。
頑張ればなんとかなると希望を捨てないその姿勢は美しいかもしれないが、頑張りようがないという事実を理解できる頭がなければ状況打開は難しいだろう。
現実を見なければ状況を何とかする手段など見つからない。
皇后は皇帝よりだいぶ年上に見える。見えるだけでなく本当に年上なんだろう。そしてそんな年まで独身だったということはまあ、そういうことだろうと判断がつく。政治的とか本人の資質とか。そんな皇后を立てざるを得なかった理由は他に適当な独身公主がいなかったに尽きる。
皇后がどれほど皇帝に影響を及ぼせるかは未知数。
こうして考えると、皇族といっても、人間関係には変わりないものだ。
実は鈿花の料理はうまい。実家は食料を商う商家。そのため食材の扱い、それに試食するためにいろいろ調理法を試したため料理の腕前は家族全員旨かった。
鶏と魚は生きたまま持ってこさせた。
野菜に有害な植物が混じっていたため死んだ肉なら何を仕込まれるかわからないからだ。
いちいち絞めるのが面倒だが安全には変えられない。
汚れた手をぬぐいながら入ったばかりの魚をさばく。
生きたままという条件だとこの海から離れた離宮だとどうしても川魚になってしまう。
臭み消しに醤でコトコト煮込むことにする。
後は野菜の膾など。
しかし皇帝が貴妃の部屋に通うようになったきっかけが食事だとは。
鈿花は生ぬるい笑みを浮かべた。
確かに月姫は料理屋で賃仕事などして、それなりにできたけれど。お隣の徳日当たりに教えてやりたいが。皇帝は食事で釣れると。
皇帝の食事を用意するとなると責任はかなり重くなる。
そのため食材に異物が混入していないかの確認に時間がかかる。
毎回混入しているが。
一度賢妃のところに確認してみたいが、どういうべきかわからない。
危ない草を取り除くと、それを袋に入れておく。
後で焼却処分だ。
「そういえば、水仙がどうして葱と混ざるんだろう」
書類仕事中にあまりに延々と続くためいい加減嫌になって雑談で気を紛らわそうと思ったのか龍会陰はそんなことを呟いた。
「混ざるわけがないでしょう、水仙は葱と全く違う場所に生えます」
完成した書類をまとめていた側近がさぼるなと冷たい視線を投げつつ言う。
「だが、貴妃の食糧庫で混ざっていたと言っていたが」
「そうですね、水仙に毒があると聞いたことはありますが」
言っていて不意に思考が戻ってくる。
「業者を調べなおさせろ、それと、貴妃の食糧庫を信用のおける人間に調べさせろ」
貴妃の夕餉に行くといったのだ、もし有毒なものが混じっていたら危なくてしょうがない。
側近も慌てて業者を呼び出す手はずを整えに行った。
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