3 / 18
訪問者
しおりを挟む
アリスのレッスンはドアベルが鳴った直後に終わった。と
メアリーがアリスのバイオリンを取り上げアリスを追い出したのだ。
「邪魔よ」
それだけ言うとメアリーはピアノの前に座った。そして単純なメロディを自慢げに弾き始めた。
メアリーの得意げな顔にアリスは唇をかむ。
この家は森の反対方向に玄関があり、森の側は庭園になっていた。なんとなくアリスは庭に出ることにした。庭ではピアノの音はあまり聞こえない。
アリスはとっさに庭園のほうに向かった。
アリスの奏でる不協和音が終わったためかどこかに隠れていたディアレストとリガードがアリスの足元にじゃれついてきた。
そっくりな猫を見分けるのは大きさしかない。ディアレストのほうが一回りだけ大きかった。
つまり一匹だけならそれがディアレスとかリガードか見分けるすべはないということだ。
庭にはエイミーが先に出ていた。
エイミーはまだ家庭教師に勉強を習う段階には来ていなかった。
エイミーは褐色の髪を肩のところで切りそろえられていた。
自分の髪を扱えないからだ。もう少ししたら自分で結べるように伸ばし始めるだろう。
「デイジーいるね」
エイミーがそっと指さす。
デイジーが庭園の花をのぞき込んでいた。
白い花の構造を興味深げに観察している。
「デイジー」
アリスがそっと声をかけた。デイジーは夢中になっているようだ。花の構造のどこがそんなに興味深いのかアリスにはちっともわからない。
「デイジー?」
デイジーはどこかを見ているのかわからない目をして振り返る。
しばらくデイジーは空を見ているがゆっくりと振り返った。
「デイジー、何を見ていたの」
アリスはデイジーにそう声をかけた。デイジーはぱちぱちと目を瞬かせた。
そしてにっこりと笑う。そしてデイジーは両手を空に伸ばした。
「デイジー私たちは家に戻るけどデイジーはどうするの」
デイジーはそっと私の手を握る。デイジーの手は少し乾いてひんやりとしていた。
「どこか行きたいの」
そう尋ねたらデイジーは二人に先導して家の中に入っていった。アリスの後をエイミーとデイジーもついてきた。
三人が進んだのはこの家で一番大きな部屋、父親の仕事場兼書斎から聞きなれない声が聞こえた。
アリスはそっとドアの隙間から中の様子をのぞき込んだ。
少々枯れた声だが老人というほど年老いてはいないようだ。
アリスは驚いた。髪の生え際と眉毛が驚くほど広い。髪の色は濃くのっぺりとした色白の顔に小さな目鼻がついているような顔なので余計に額がだだっ広く見えた。
そして書いたような口ひげを生やしている。
痩せて背の高い父親と違って背丈こそ父親よりやや低いが身体の厚みは倍近くありそうだ、その人は背後に女性を連れていた。
その女性もとても背が高い。
父親と二人向かい合って何やら話し込んでいるようだ。
ぼそぼそと聞こえる声を何とか拾おうとアリスはそっとドアに張り付いた。
「随分とあちらにいらっしゃらないのですね」
アリスは物心つく前にこの家に越してきた、エイミーはこの家で生まれた。メアリーはこの家に越してくる前のことを覚えていてそこがどれほどすごいところだったか自慢そうに言うことがあった。
アリスはこの村しか記憶がない。ずいぶん前に父親が遠くに行っていたことがあった。メアリーは連れて行ってほしかったとしばらく膨れていた。
「そんなところで何をしているんだね」
ドアの隙間からアリスの影が見えていたようだ。
メアリーがアリスのバイオリンを取り上げアリスを追い出したのだ。
「邪魔よ」
それだけ言うとメアリーはピアノの前に座った。そして単純なメロディを自慢げに弾き始めた。
メアリーの得意げな顔にアリスは唇をかむ。
この家は森の反対方向に玄関があり、森の側は庭園になっていた。なんとなくアリスは庭に出ることにした。庭ではピアノの音はあまり聞こえない。
アリスはとっさに庭園のほうに向かった。
アリスの奏でる不協和音が終わったためかどこかに隠れていたディアレストとリガードがアリスの足元にじゃれついてきた。
そっくりな猫を見分けるのは大きさしかない。ディアレストのほうが一回りだけ大きかった。
つまり一匹だけならそれがディアレスとかリガードか見分けるすべはないということだ。
庭にはエイミーが先に出ていた。
エイミーはまだ家庭教師に勉強を習う段階には来ていなかった。
エイミーは褐色の髪を肩のところで切りそろえられていた。
自分の髪を扱えないからだ。もう少ししたら自分で結べるように伸ばし始めるだろう。
「デイジーいるね」
エイミーがそっと指さす。
デイジーが庭園の花をのぞき込んでいた。
白い花の構造を興味深げに観察している。
「デイジー」
アリスがそっと声をかけた。デイジーは夢中になっているようだ。花の構造のどこがそんなに興味深いのかアリスにはちっともわからない。
「デイジー?」
デイジーはどこかを見ているのかわからない目をして振り返る。
しばらくデイジーは空を見ているがゆっくりと振り返った。
「デイジー、何を見ていたの」
アリスはデイジーにそう声をかけた。デイジーはぱちぱちと目を瞬かせた。
そしてにっこりと笑う。そしてデイジーは両手を空に伸ばした。
「デイジー私たちは家に戻るけどデイジーはどうするの」
デイジーはそっと私の手を握る。デイジーの手は少し乾いてひんやりとしていた。
「どこか行きたいの」
そう尋ねたらデイジーは二人に先導して家の中に入っていった。アリスの後をエイミーとデイジーもついてきた。
三人が進んだのはこの家で一番大きな部屋、父親の仕事場兼書斎から聞きなれない声が聞こえた。
アリスはそっとドアの隙間から中の様子をのぞき込んだ。
少々枯れた声だが老人というほど年老いてはいないようだ。
アリスは驚いた。髪の生え際と眉毛が驚くほど広い。髪の色は濃くのっぺりとした色白の顔に小さな目鼻がついているような顔なので余計に額がだだっ広く見えた。
そして書いたような口ひげを生やしている。
痩せて背の高い父親と違って背丈こそ父親よりやや低いが身体の厚みは倍近くありそうだ、その人は背後に女性を連れていた。
その女性もとても背が高い。
父親と二人向かい合って何やら話し込んでいるようだ。
ぼそぼそと聞こえる声を何とか拾おうとアリスはそっとドアに張り付いた。
「随分とあちらにいらっしゃらないのですね」
アリスは物心つく前にこの家に越してきた、エイミーはこの家で生まれた。メアリーはこの家に越してくる前のことを覚えていてそこがどれほどすごいところだったか自慢そうに言うことがあった。
アリスはこの村しか記憶がない。ずいぶん前に父親が遠くに行っていたことがあった。メアリーは連れて行ってほしかったとしばらく膨れていた。
「そんなところで何をしているんだね」
ドアの隙間からアリスの影が見えていたようだ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
浮帽子
坂水
ホラー
保育園で起きた独女と幼女の幽霊奇談。
子どもが苦手な保育園の事務の「私」は、子どもの幽霊「ゆう」の存在に気付く。
四季を通して、徐々に距離を縮める二人。けれどそれぞれに抱える秘密があって――
中篇。ラストはホラーかハッピーか。どうぞ、確かめてやってください。全12回
オカルト嫌いJKと言霊使いの先輩書店員
眼鏡猫
ホラー
書店でアルバイトをする女子高生、如月弥生(きさらぎやよい)は大のオカルト嫌い。そんな彼女と同じ職場で働く大学生、琴乃葉紬玖(ことのはつぐむ)は自称霊感体質だそうで、弥生が発する言霊により悪いモノに覆われていると言う。一笑に付す弥生だったが、実は彼女には誰にも言えないトラウマを抱えていた。
2回目の人生は異世界で
黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる