解かり合えない二人

karon

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図書室

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 フレデリックは授業を受ける以外の時間は図書室にひっそりと過ごすのが常だ。
 学園はこの国の将来を担う頭脳を育成する機関であり、その図書室は国家大図書館に次ぐ蔵書量を誇っていた。
 図書室の日の当たらない場所がフレデリックのいる場所だ。
 本が傷むのを恐れてのことだろう。
  マリーアンヌはそんな様子を観察していた。
 確かここでイベントがあったはず。
「すまないが、第十経済革命の本は君の後ろにあるんだ、どいてくれないか」
 唐突にフレデリックがマリーアンヌに声をかけた。
 これはイベントか、マリーアンヌは脳みそを振り絞った。
「第十ですか、あら、借りられてしまったようですわ」
 実際本棚には借りだされた証拠に本と同じ厚みの板が収まっている。本が傾いて痛まないようにとの処置だろう。
「それは、困ったな、それに次ぐ資料は」
 フレデリックが眼鏡を抑えながら呟く。
 不意にマリーアンヌに天啓が降りてきた。
「そうですわ、伝記ならありますわ、あちらの革命の申し子と呼ばれたバイエルの伝記ならある程度の資料になるのではないでしょうか」
「なるほど」
 フレデリックは伝記を取り出し途中ページを何度かめくってみた。
「どうやらこれでレポートが間に合いそうだ」
「あら、そんなにギリギリでしたの?」
 フレデリックは常に学問にはげんでいる。そんな彼がレポートの提出がギリギリになるとは意外だ。
「ああ、取っている講義が多いからな、どうしても後回しになるものは出るさ」
 そう言って苦笑する。
「しかし君も随分と勉強熱心なんだな、こんな起点はこの時代に相当詳しくないと出てこないと思うが」
 マリーアンヌはあいまいに笑う。確か攻略本の知識が出ただけだ。しかしこの時代の書物をこの後たっぷりと読み込まないと後でぼろが出そうだ。
 しかし予習は大事よね、やっぱり攻略本を読み込んでおいて良かったわ。
 マリーアンヌは胸の内で呟きつついろいろと学問的なことを口走り続けるフレデリックに相槌を打っていた。
 半分も理解できていないがそれらしい顔で相槌を打っていれば向こうは勝手に誤解してくれるものらしい。
 しかしこれでフレデリックの好感度は大分上がったはずだ。
 マリーアンヌはほくそ笑んだ。
「また、来るか」
 マリーアンヌはにっこりと笑って頷く。

 マリーアンヌはこれから学問のことをどうごまかすか考えていた。
 そこにちょうどいいものが現れた。
 お助けキャラのイブリンだ。クラスにイブリンがいたと気付いたときには嬉しかった。
 栗色の髪をおさげにして目が見えないほどの分厚い眼鏡の彼女はとても頭がいい。
 お助けキャラだもの。勉強押し付けても平気よね。
 マリーアンヌは能天気にそう考えた。

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