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演習場
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ポイントは押さえた。
マリーアンヌはほくそ笑む。マリーアンヌの眼下にはすり鉢状にくぼんだ軍事演習場があった。将来国の軍事を任される騎士科専用に作られた場所だった。
そこで行われるのは騎士団に将来所属する生徒を集めた実習。
騎士志望の少年たちが二手に分かれて模擬戦を行う日だった。
一年生が下級兵士、そして上級生がそれぞれ司令官をはじめとして、小隊長や補給部隊長、情報将校などの役職について実際の戦争をシュミレートする。
片や紅組、片や白組。それぞれの所属を表す鉢巻を結んだ少年たちが睨み合う。
エドワードは白組の鉢巻をして司令官の役をやっていた。
数日前から作戦会議やそれに沿った訓練に励みついに当日というわけで双方士気は高い。
マリーアンヌの知識によればこの試合はエドワードの所属する白組が勝つことになっていた。
そして、エドワードの勝利を寿ぐその場こそマリーアンヌの主戦場。エドワードの婚約者である悪役令嬢をかいくぐりエドワードを攻略するのだ。
マリーアンヌは演習場のそばで応援する女生徒の中に紛れて模擬戦を見ていた。
刃を潰しているが槍や大剣を構えた少年たちは文官科の生徒たちより全員一回り大きい。
背後には矢じりの代わりにコルクを丸くしたものを取り付けた弓矢を手にしている者達もいる。
コルクにはインクがしみ込ませてあり、当たったものは死亡とみなされることになっていた。
マリーアンヌは周囲は手に汗握って応援しているが、マリーアンヌにとっては勝負が決まっている退屈な演習をしばらく眺めていた。
エドワードは中心で指揮を執っていたが、一人槍を持って中央突破を試みた相手がいた。
槍と剣という武器の差に一時不利かと思ったが危なげなくエドワードは相手を捌いた。そしてそのあと槍を持った相手は弓矢で仕留められた。
来たあああ。
マリーアンヌはそっと手を握りしめた。一時的にエドワードが危機に陥るこここそがポイント。この場でエドワードと会話のチャンスを作る。
マリーアンヌの唇は微かに吊り上がった。
そして、マリーアンヌの立つ反対側に栗色の髪の少女が立っていた。マリーアンヌの立っているところからははっきりと見えないがその顔は把握している。栗色の髪にやや垂れた愛嬌のある藍色の瞳をした少女。
エドワードの婚約者、悪役令嬢ビアトリスだ。
エドワードと親しくしようとするマリーアンヌに妨害してくる相手だ。
ビアトリスも先ほどのエドワード危機一髪に胸を押さえて打ち震えている。
そうしていられるのも今のうちだ。
マリーアンヌは紅色の光沢をもつ金髪を打ち払った。
「せいぜい婚約者という立場を今のうちに楽しんでおくがいい」
ビアトリスは最初の敵だが。敵としては最弱、マリーアンヌに巻けるつもりは毛頭ない。
そんなことに全く気付かず、エドワードは演習を頑張っていた。
エドワード率いる白組が紅組司令官を打ち取って演習は終わった。
エドワードの純粋なファンや白組に賭けていた一部の不良生徒の歓声が響き渡る。マリーアンヌもそれに合わせてその両手を胸の前に組んで笑みを浮かべる。
演習場から上がってくる白組陣営。その中心のエドワードに向かってマリーアンヌは動いた。
婚約者ビアトリスより早く動かなければ。
婚約者ビアトリスが近づいた後では遅すぎる。
マリーアンヌは滑るように動いた。
「大丈夫ですか」
マリーアンヌはハンカチを取り出した。
「血が」
先ほど槍がかすめた場所をそっと示した。
マリーアンヌはほくそ笑む。マリーアンヌの眼下にはすり鉢状にくぼんだ軍事演習場があった。将来国の軍事を任される騎士科専用に作られた場所だった。
そこで行われるのは騎士団に将来所属する生徒を集めた実習。
騎士志望の少年たちが二手に分かれて模擬戦を行う日だった。
一年生が下級兵士、そして上級生がそれぞれ司令官をはじめとして、小隊長や補給部隊長、情報将校などの役職について実際の戦争をシュミレートする。
片や紅組、片や白組。それぞれの所属を表す鉢巻を結んだ少年たちが睨み合う。
エドワードは白組の鉢巻をして司令官の役をやっていた。
数日前から作戦会議やそれに沿った訓練に励みついに当日というわけで双方士気は高い。
マリーアンヌの知識によればこの試合はエドワードの所属する白組が勝つことになっていた。
そして、エドワードの勝利を寿ぐその場こそマリーアンヌの主戦場。エドワードの婚約者である悪役令嬢をかいくぐりエドワードを攻略するのだ。
マリーアンヌは演習場のそばで応援する女生徒の中に紛れて模擬戦を見ていた。
刃を潰しているが槍や大剣を構えた少年たちは文官科の生徒たちより全員一回り大きい。
背後には矢じりの代わりにコルクを丸くしたものを取り付けた弓矢を手にしている者達もいる。
コルクにはインクがしみ込ませてあり、当たったものは死亡とみなされることになっていた。
マリーアンヌは周囲は手に汗握って応援しているが、マリーアンヌにとっては勝負が決まっている退屈な演習をしばらく眺めていた。
エドワードは中心で指揮を執っていたが、一人槍を持って中央突破を試みた相手がいた。
槍と剣という武器の差に一時不利かと思ったが危なげなくエドワードは相手を捌いた。そしてそのあと槍を持った相手は弓矢で仕留められた。
来たあああ。
マリーアンヌはそっと手を握りしめた。一時的にエドワードが危機に陥るこここそがポイント。この場でエドワードと会話のチャンスを作る。
マリーアンヌの唇は微かに吊り上がった。
そして、マリーアンヌの立つ反対側に栗色の髪の少女が立っていた。マリーアンヌの立っているところからははっきりと見えないがその顔は把握している。栗色の髪にやや垂れた愛嬌のある藍色の瞳をした少女。
エドワードの婚約者、悪役令嬢ビアトリスだ。
エドワードと親しくしようとするマリーアンヌに妨害してくる相手だ。
ビアトリスも先ほどのエドワード危機一髪に胸を押さえて打ち震えている。
そうしていられるのも今のうちだ。
マリーアンヌは紅色の光沢をもつ金髪を打ち払った。
「せいぜい婚約者という立場を今のうちに楽しんでおくがいい」
ビアトリスは最初の敵だが。敵としては最弱、マリーアンヌに巻けるつもりは毛頭ない。
そんなことに全く気付かず、エドワードは演習を頑張っていた。
エドワード率いる白組が紅組司令官を打ち取って演習は終わった。
エドワードの純粋なファンや白組に賭けていた一部の不良生徒の歓声が響き渡る。マリーアンヌもそれに合わせてその両手を胸の前に組んで笑みを浮かべる。
演習場から上がってくる白組陣営。その中心のエドワードに向かってマリーアンヌは動いた。
婚約者ビアトリスより早く動かなければ。
婚約者ビアトリスが近づいた後では遅すぎる。
マリーアンヌは滑るように動いた。
「大丈夫ですか」
マリーアンヌはハンカチを取り出した。
「血が」
先ほど槍がかすめた場所をそっと示した。
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