140 / 154
釣りの話
しおりを挟む
菫は後宮に出入りする人間を監視するのが仕事だ。
新入りの女官をいろいろと試すことにした。
菫は居間の王が後宮を開いた時からいる古顔だが、後宮の人員の入れ替わりが激しいので、それを知るものは少ない。
今いる妃達。口を開けば、自分たちの下賜先や王に唯一寵愛されている芍薬殿に対する恨み言ばかりだ。
つまり、芍薬殿を恨んでいるのは妃達の通常営業といいうことだ。そのあたりを利用すれば、おそらく相手は釣れる。
王の望みは、言い訳の利かない状態に相手を追い込むこと。それならばそこをうまくつけばいい。
美味しい餌には警戒心も薄れるものだ。
そんなことを思いながら、菫は、自室に呼び出した女官を観察していた。
菫の部屋には隠し通路と、その他もろもろの仕掛け、そして各しぶきが用意してあったりする。
いずれ、年齢的に無理になる日も来るだろう。後宮に新たに来るのは、嫁入り適齢期の娘ばかりなので。
菫の部屋は居間の菫が無理になったとき後任の菫に渡されることになっている。
菫は王の犬の名。王の望みのために存在する。
芍薬殿の弟が釣りだした相手、そつなく仕事をこなしているようだが、自分に比べればまだまだ甘い。
菫の仕事をさっさと終わらせることにした。
芍薬殿の噂、それだけであっさりと相手は釣れた。
まずは決定的なことをしてもらわなければ、話は進まない。
かといって、本物を囮にするわけにはいかない。かつてと今は違うのだ。
まあちょうどいいものがあるし。最低限のことはできるだろう。
菫はにんまりと笑った。
ぶるっと悪寒を感じて真影は震えた。
何かとてつもなく嫌な予感がした。ああ、いったい自分は何をやらされるんだろう。
こういう時の予感はなぜかとても当たるのだ。
「何をしている?」
こういう時忌々しいのは自分の父親だ。実の父親が、自分の娘を陥れようとしているのに、何もわからずひょうひょうとしている。
まあ、せいぜい事実を知った後で青ざめるがいい。
残念ながら、仮にも長期の父親という肩書があるので、表向き何の制裁もできないのだ。
寵姫本人が、どういう目に合わせてもいいと断言しているのに、まったくもって融通が利かない。
それでも、最低限のことをしてくれるつもりらしい。
あれに馬鹿をやられたら、困るのは向こうも同じなのだから。
「大体お前は、誰のおかげで拝家に迎えてもらえたと思っているのか」
それは、上級管理試験に合格した自分の実力です。と心中だけ答えておいた。
あと、不正を徹底的につぶした王のおかげ。
「誰のおかげで、拝家に戻れたと思っているんですか」
にっこり笑って真影はそう訊き返すだけにとどめた。
新入りの女官をいろいろと試すことにした。
菫は居間の王が後宮を開いた時からいる古顔だが、後宮の人員の入れ替わりが激しいので、それを知るものは少ない。
今いる妃達。口を開けば、自分たちの下賜先や王に唯一寵愛されている芍薬殿に対する恨み言ばかりだ。
つまり、芍薬殿を恨んでいるのは妃達の通常営業といいうことだ。そのあたりを利用すれば、おそらく相手は釣れる。
王の望みは、言い訳の利かない状態に相手を追い込むこと。それならばそこをうまくつけばいい。
美味しい餌には警戒心も薄れるものだ。
そんなことを思いながら、菫は、自室に呼び出した女官を観察していた。
菫の部屋には隠し通路と、その他もろもろの仕掛け、そして各しぶきが用意してあったりする。
いずれ、年齢的に無理になる日も来るだろう。後宮に新たに来るのは、嫁入り適齢期の娘ばかりなので。
菫の部屋は居間の菫が無理になったとき後任の菫に渡されることになっている。
菫は王の犬の名。王の望みのために存在する。
芍薬殿の弟が釣りだした相手、そつなく仕事をこなしているようだが、自分に比べればまだまだ甘い。
菫の仕事をさっさと終わらせることにした。
芍薬殿の噂、それだけであっさりと相手は釣れた。
まずは決定的なことをしてもらわなければ、話は進まない。
かといって、本物を囮にするわけにはいかない。かつてと今は違うのだ。
まあちょうどいいものがあるし。最低限のことはできるだろう。
菫はにんまりと笑った。
ぶるっと悪寒を感じて真影は震えた。
何かとてつもなく嫌な予感がした。ああ、いったい自分は何をやらされるんだろう。
こういう時の予感はなぜかとても当たるのだ。
「何をしている?」
こういう時忌々しいのは自分の父親だ。実の父親が、自分の娘を陥れようとしているのに、何もわからずひょうひょうとしている。
まあ、せいぜい事実を知った後で青ざめるがいい。
残念ながら、仮にも長期の父親という肩書があるので、表向き何の制裁もできないのだ。
寵姫本人が、どういう目に合わせてもいいと断言しているのに、まったくもって融通が利かない。
それでも、最低限のことをしてくれるつもりらしい。
あれに馬鹿をやられたら、困るのは向こうも同じなのだから。
「大体お前は、誰のおかげで拝家に迎えてもらえたと思っているのか」
それは、上級管理試験に合格した自分の実力です。と心中だけ答えておいた。
あと、不正を徹底的につぶした王のおかげ。
「誰のおかげで、拝家に戻れたと思っているんですか」
にっこり笑って真影はそう訊き返すだけにとどめた。
0
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説
私が公爵の本当の娘ではないことを知った婚約者は、騙されたと激怒し婚約破棄を告げました。
Mayoi
恋愛
ウェスリーは婚約者のオリビアの出自を調べ、公爵の実の娘ではないことを知った。
そのようなことは婚約前に伝えられておらず、騙されたと激怒しオリビアに婚約破棄を告げた。
二人の婚約は大公が認めたものであり、一方的に非難し婚約破棄したウェスリーが無事でいられるはずがない。
自分の正しさを信じて疑わないウェスリーは自滅の道を歩む。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。
言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。
喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。
12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。
====
●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。
前作では、二人との出会い~同居を描いています。
順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。
※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。
貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
お馬鹿な聖女に「だから?」と言ってみた
リオール
恋愛
だから?
それは最強の言葉
~~~~~~~~~
※全6話。短いです
※ダークです!ダークな終わりしてます!
筆者がたまに書きたくなるダークなお話なんです。
スカッと爽快ハッピーエンドをお求めの方はごめんなさい。
※勢いで書いたので支離滅裂です。生ぬるい目でスルーして下さい(^-^;
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
【完結】結婚してから三年…私は使用人扱いされました。
仰木 あん
恋愛
子爵令嬢のジュリエッタ。
彼女には兄弟がおらず、伯爵家の次男、アルフレッドと結婚して幸せに暮らしていた。
しかし、結婚から二年して、ジュリエッタの父、オリビエが亡くなると、アルフレッドは段々と本性を表して、浮気を繰り返すようになる……
そんなところから始まるお話。
フィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる