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危険
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適当に床に入り、女が寝入ったころを見計らって、王は寝床を抜け出した。
薬物に身体は慣らしてある。この程度の薬物で意識を飛ばすことはない。
隠し扉のある壁をたたけば外に待機していた部下が扉を開けた。
「陛下、どちらに?」
聞かずともわかることを聞く。
壁の向こうにいた部下は二人、一人は残り、一人は王についてくる。
王は基本的に一人にされることがほとんどない、一人でいても、壁の向こうで誰かが様子をうかがっている。
壁に隠された扉を開ける。
同じようなつくりのはずなのだが、それでも住人を迎えてしばらく経っているのでその部屋には住人の個性のようなものができていた。
手芸品や、手芸道具が各所に点在している。
灯りは少し薄暗いので、組紐を作っていた。順序に合わせて糸を組んでいくので最低限の灯りがあればなんとかなるらしい。
勿忘草は慌てて手を止めて一礼する。
「報告することは?」
「そうですね、葵殿に刺繍を教えてほしいと依頼されました」
葵の妃が注文をしなかったのは自分もできるからだったらしい。
「明日以降刺繍をしながら雑談で何事か探ってみるつもりですが」
顔を袖で覆い隠したまま、勿忘草はそう答える。
「それはいい、それと、女官長にいろいろ言われていないか?」
「まあ、ですが聞き流しております。もう少し丁寧に聞いてみましょうか?」
けろりとした顔でそう答えた。
「何も堪えてないな」
「あの程度でですか」
可愛らしい顔に似合わずふてぶてしい返答に王は苦笑した。
「それと、提出用の写しですが、こちらに」
仕事は丁寧だ。注文を受けてすぐに提出用の写しも作っているのだろう。
「あまり、代り映えはしていないな」
「そうですね、百合殿が最近睡蓮殿と仲たがいしたようですが、後もので釣った女官からの情報ですが、最近あの二人の癇癪が激しく、小物を壊すようなことも起きているようです」
野心満々の女がその野心を満たされなくてかんしゃくを起こすのも想定内だ。
「こうなると、鶏頭殿の身が危ないような気もします」
物にあたっている人間が生き物に対象を移すのは、そのうっぷんが解消される見込みがない場合時間の問題だ。
「それはそうかもしれないが、やるとしたらどういう手があると思う?」
一番ありそうなのは高いところから落とすというのだが、ここは平屋建てだ。階段が存在していない。
「やっぱり一番お手軽な方法を取らせまいと、恐ろしいところだ」
上から何かを落とすというのも使えそうにない、高いところが存在しないから。
「そうだな、何か仕掛けやすいようにしてみようか」
「仕掛けですか?」
「園遊会でも開くことにしよう」
「あの、鶏頭殿の安全は?」
勿忘草が引きつった顔で訊ねる、
「泳がせるためには多少の危険はありだろう」
危険は全面的に鶏頭が負うだろうと突っ込みたかったが勿忘草は言えななかった。
薬物に身体は慣らしてある。この程度の薬物で意識を飛ばすことはない。
隠し扉のある壁をたたけば外に待機していた部下が扉を開けた。
「陛下、どちらに?」
聞かずともわかることを聞く。
壁の向こうにいた部下は二人、一人は残り、一人は王についてくる。
王は基本的に一人にされることがほとんどない、一人でいても、壁の向こうで誰かが様子をうかがっている。
壁に隠された扉を開ける。
同じようなつくりのはずなのだが、それでも住人を迎えてしばらく経っているのでその部屋には住人の個性のようなものができていた。
手芸品や、手芸道具が各所に点在している。
灯りは少し薄暗いので、組紐を作っていた。順序に合わせて糸を組んでいくので最低限の灯りがあればなんとかなるらしい。
勿忘草は慌てて手を止めて一礼する。
「報告することは?」
「そうですね、葵殿に刺繍を教えてほしいと依頼されました」
葵の妃が注文をしなかったのは自分もできるからだったらしい。
「明日以降刺繍をしながら雑談で何事か探ってみるつもりですが」
顔を袖で覆い隠したまま、勿忘草はそう答える。
「それはいい、それと、女官長にいろいろ言われていないか?」
「まあ、ですが聞き流しております。もう少し丁寧に聞いてみましょうか?」
けろりとした顔でそう答えた。
「何も堪えてないな」
「あの程度でですか」
可愛らしい顔に似合わずふてぶてしい返答に王は苦笑した。
「それと、提出用の写しですが、こちらに」
仕事は丁寧だ。注文を受けてすぐに提出用の写しも作っているのだろう。
「あまり、代り映えはしていないな」
「そうですね、百合殿が最近睡蓮殿と仲たがいしたようですが、後もので釣った女官からの情報ですが、最近あの二人の癇癪が激しく、小物を壊すようなことも起きているようです」
野心満々の女がその野心を満たされなくてかんしゃくを起こすのも想定内だ。
「こうなると、鶏頭殿の身が危ないような気もします」
物にあたっている人間が生き物に対象を移すのは、そのうっぷんが解消される見込みがない場合時間の問題だ。
「それはそうかもしれないが、やるとしたらどういう手があると思う?」
一番ありそうなのは高いところから落とすというのだが、ここは平屋建てだ。階段が存在していない。
「やっぱり一番お手軽な方法を取らせまいと、恐ろしいところだ」
上から何かを落とすというのも使えそうにない、高いところが存在しないから。
「そうだな、何か仕掛けやすいようにしてみようか」
「仕掛けですか?」
「園遊会でも開くことにしよう」
「あの、鶏頭殿の安全は?」
勿忘草が引きつった顔で訊ねる、
「泳がせるためには多少の危険はありだろう」
危険は全面的に鶏頭が負うだろうと突っ込みたかったが勿忘草は言えななかった。
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