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世間話に寄せて
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「しかし王も大胆なことをやりましたね」
真影の横で柴源も洗濯をやりながら世間話を始めた。
「貴族や有力者の息子さん軒並み落ちましたしねえ」
そういえば、結果発表の場で四つん這いで打ちひしがれていた先輩も中堅どころの貴族の息子だった。
学問所では、基本的に学問だけ、家のことは関係ないを貫いていたが、学問所を出ればそうした根回しは横行していた。
「受かったのはごく少数、今回はほとんど一般市民階級ばかりですね」
「でも、僕と一緒の漢途と金武は貴族ですけど」
ついでに圭樹は豪商の息子だ。
「だからほとんどといったんですよ、お試し受験の少数の貴族や有力者の息子、それと少数の、自分を落とすような命知らず羽織るまいと考えた最有力貴族の息子の半分くらいが合格しています」
貴族の中間層はほぼ全滅ということか。
「結構恨みを買うんじゃないでしょうか」
不正入試はもちろん悪いことだが、賄賂を払わなければ合格が危ないという思い込みがある状況がであったことも事実だ。
それを考えれば恨みは買うだろう。
「とはいえ、今まで日の目を見れなかった、民間の秀才はどっと合格しましたし、不正で落とされた人たちも、来年は受けられないことを考えれば、貴族層の新人は当分薄くなりますね」
「それが狙いかなあ」
「もっと若いころにこんなことがあっていたら、私の人生も変わっていたんでしょうねえ」
淡々とした口調だったが、その言葉には妙な重みがあった。
「その、商人をしていたことを回り道だと思っておられますか?」
「いろんなことがありました、そのほとんどがろくな事じゃなかった」
前王と王弟達とその妃達そしてその妃の後ろにいる姻戚が寄ってたかってこの国をめちゃめちゃにするところだった。
真影の幼いころにもとても悲惨な事件があった。国が荒れてまもってくれるものもなにもなく。
王が即位したときには王都すら荒れ果てて廃墟と化した地区すらあった。
そのため、王は極力貴族たちの勢力を削ごうとするきらいがある。
真影は学問所以外の場所で貴族と会うこともなかったため特に貴族を嫌ってはいない。
「それに、付け目である妃も、特定の貴族とかかわりのある女性ではないですからねえ」
「そうなんですか?」
王に妃がいるのは当たり前だが、その妃の存在はあまり知られていない。
後宮にひっそりと暮らしているらしく、あまり表に出てくることもないのだという。
「一番身分が高いのは牡丹殿なんですが、今は芍薬殿一人ですね」
この国では花の名前で妃の身分があらわされる。
正妃待遇の牡丹、ついで芍薬、芙蓉、藤、蓮、菊は白黄紫の三色の順に上級妃しかし、今後宮にいるのは芍薬の身分を持つ妃のみだ。
他に妃が三人いるが、それぞれ吾亦紅、菫、雛罌粟の身分を与えられている下級妃であり、またもう一人梅の身分の妃がいたが、褒章として臣下に与えられたという。
その妃達に王が通うという話も聞かず、いざという時下げ渡すために買われているのだと言われている。
それを当人たちがどう思っているかは知らないが、とにかく今、芍薬の妃以外に王の妻と呼ばれる存在はいない。
「そういえば、もうすぐ、隣国の使節を招いての会合があるのを知ってますよね」
それはここに来る前から評判になっていた。
「どうやらもてなしに、芍薬殿も協力を要請されたらしいですよ」
今までひっそりと後宮に隠れていた妃が表舞台に現れる。
とはいえそれは真影にとっては遠い話だ。
話しているうち、洗濯物は随分とはかどってもうすぐ終わるところに来ていた。
「あの、僕には姉がいました。姉は本来なら行かせられない学問所に行かせるために身を粉にして働いてくれました、そのことで僕が詫びると姉は言ったんです」
真影は大きく息を吐いた。
「金を稼ぐってことも学ぶことはいっぱいある、私が損ばかりしているわけじゃない」
姉は誇らかに笑った。
「いいお姉さんですね」
柴源は薄く笑った。
真影の横で柴源も洗濯をやりながら世間話を始めた。
「貴族や有力者の息子さん軒並み落ちましたしねえ」
そういえば、結果発表の場で四つん這いで打ちひしがれていた先輩も中堅どころの貴族の息子だった。
学問所では、基本的に学問だけ、家のことは関係ないを貫いていたが、学問所を出ればそうした根回しは横行していた。
「受かったのはごく少数、今回はほとんど一般市民階級ばかりですね」
「でも、僕と一緒の漢途と金武は貴族ですけど」
ついでに圭樹は豪商の息子だ。
「だからほとんどといったんですよ、お試し受験の少数の貴族や有力者の息子、それと少数の、自分を落とすような命知らず羽織るまいと考えた最有力貴族の息子の半分くらいが合格しています」
貴族の中間層はほぼ全滅ということか。
「結構恨みを買うんじゃないでしょうか」
不正入試はもちろん悪いことだが、賄賂を払わなければ合格が危ないという思い込みがある状況がであったことも事実だ。
それを考えれば恨みは買うだろう。
「とはいえ、今まで日の目を見れなかった、民間の秀才はどっと合格しましたし、不正で落とされた人たちも、来年は受けられないことを考えれば、貴族層の新人は当分薄くなりますね」
「それが狙いかなあ」
「もっと若いころにこんなことがあっていたら、私の人生も変わっていたんでしょうねえ」
淡々とした口調だったが、その言葉には妙な重みがあった。
「その、商人をしていたことを回り道だと思っておられますか?」
「いろんなことがありました、そのほとんどがろくな事じゃなかった」
前王と王弟達とその妃達そしてその妃の後ろにいる姻戚が寄ってたかってこの国をめちゃめちゃにするところだった。
真影の幼いころにもとても悲惨な事件があった。国が荒れてまもってくれるものもなにもなく。
王が即位したときには王都すら荒れ果てて廃墟と化した地区すらあった。
そのため、王は極力貴族たちの勢力を削ごうとするきらいがある。
真影は学問所以外の場所で貴族と会うこともなかったため特に貴族を嫌ってはいない。
「それに、付け目である妃も、特定の貴族とかかわりのある女性ではないですからねえ」
「そうなんですか?」
王に妃がいるのは当たり前だが、その妃の存在はあまり知られていない。
後宮にひっそりと暮らしているらしく、あまり表に出てくることもないのだという。
「一番身分が高いのは牡丹殿なんですが、今は芍薬殿一人ですね」
この国では花の名前で妃の身分があらわされる。
正妃待遇の牡丹、ついで芍薬、芙蓉、藤、蓮、菊は白黄紫の三色の順に上級妃しかし、今後宮にいるのは芍薬の身分を持つ妃のみだ。
他に妃が三人いるが、それぞれ吾亦紅、菫、雛罌粟の身分を与えられている下級妃であり、またもう一人梅の身分の妃がいたが、褒章として臣下に与えられたという。
その妃達に王が通うという話も聞かず、いざという時下げ渡すために買われているのだと言われている。
それを当人たちがどう思っているかは知らないが、とにかく今、芍薬の妃以外に王の妻と呼ばれる存在はいない。
「そういえば、もうすぐ、隣国の使節を招いての会合があるのを知ってますよね」
それはここに来る前から評判になっていた。
「どうやらもてなしに、芍薬殿も協力を要請されたらしいですよ」
今までひっそりと後宮に隠れていた妃が表舞台に現れる。
とはいえそれは真影にとっては遠い話だ。
話しているうち、洗濯物は随分とはかどってもうすぐ終わるところに来ていた。
「あの、僕には姉がいました。姉は本来なら行かせられない学問所に行かせるために身を粉にして働いてくれました、そのことで僕が詫びると姉は言ったんです」
真影は大きく息を吐いた。
「金を稼ぐってことも学ぶことはいっぱいある、私が損ばかりしているわけじゃない」
姉は誇らかに笑った。
「いいお姉さんですね」
柴源は薄く笑った。
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