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かわいそうなお話

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 軽く地形を変えた後、再び私は城に戻った。
 城下町が何だかざわざわしてたけど何があったんだろう。
 なんだか天変地異でもあったみたいだよ。
 傾いた家とかもあって、いったい何があったんだろうなあ。
 そんなことを思いながら、白のあてがわれた部屋に戻る。しかし地味な部屋だな、仮にも国を救えと命じた相手にあてがう部屋とは思えない。
 殺風景な部屋を出て、調理室に入る。
 なんかなじんでしまった料理人とアレンドロで夕食を食べることにした。
 私が魔法を使えないからという理由で料理人の皆さんはいろんな道具を持ち込んでくださいました。
 ありがたや。
 さすがに包丁は元々あったけれど、本当に設備が少ない。
 どうもほかの料理人の皆さんも私のためという大義名分で便利な道具を持ち込んだらしい。
 王族は高貴だから魔法を大量に使ったものしか使えないという話だが、私は小回りの利かない魔法で作った食事より、自分で道具を使って作ったほうがいい。
 というかかなり便利なんだけど。
 人間の創意工夫の積み重ねというものは侮れないなあ。
 蒸し焼きに適した素敵な鍋で野菜と肉の蒸し物を作る。
 焚火でやっている、火加減は火ばさみで枝を出したり入れたりすればいい。
 最初に魔法で火をつけて、それで煮炊きとかできないのかと訊ねたけど、それはできない最初っから最後まで魔法でやらなきゃならいないらしい。
 正直はあって感じだ。
 それでも料理長の人はなんだか研究熱心なんだか食い意地なんだか私のレパートリーを興味深そうに観察している。
 料理長はガンドム、なんだか微妙な名前ではある。
 今の私ならあれを倒せそうだけど。
 恰幅のいい、ちょっと古いポスターに出てくる農家の小父さんみたいな顔をしている。
「デザートはパンプディングです」
 パンに卵とミルクを混ぜてフルーツと一緒に蒸し焼きにしたもの。
 少ししっとりしたものが食べたかったんだ。
 ふと強烈な視線を感じた。
 多分王族だ、あのだぶついた体に合っていない服をローマ化ギリシャ風に着こなしている小さな子供。
 その子供は私の持っているパンプディングを食い入るように見ていた。
 まあるい目を極限まで開き、鬼気迫る形相で見ている。
 どうしよう、あんな目で見られたらとても食べることができない。
「あの、あれは一体」
「姫様ですが、食べさせてはいけませんよ、王宮の決まりで、一定の魔力を使っていない料理を王族が食べることは許されないのです」
 来ている物で性別判断できなかったけど女の子で確定。しかしあれだな、王族としての権威をつけるために明らかに生きていくのに不都合な衣服を着ていたり日常生活を送るのが困難になるほど髪を伸ばしていたりを思い出す話だ。
 かわいそうに、一度もおいしいものを食べたことがないんだな。
 少し分けてあげたいと思ったけれど、規則は規則と言われて、できるだけ見ないようにして食事を始めた。
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