闘えホワイト君

karon

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理解力

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 学校ではなんともうすぐこの街に王宮から軍勢が押し寄せてくるという噂でもちきりだった。
 だが悲壮感はなかった。
 ドウとキュンに至っては楽しそうにしている。
 そして、王宮から軍勢が攻めてきた状況に合わせて二人で組み手をしていた。
 というか。このまま国の軍隊が攻めて来たらどうなるんだろう。
 今まで来た敵は一部を除いてあんまり人の姿をしていないし、害獣駆除のノリでやっていけた気がする。
 しかし僕はこれから正真正銘の人間を相手にすることになるわけで。
「何を悩んでいるの?」
 マリアが僕の顔をのぞき込んできた。
「国王軍が来たらどうするんだろうって」
「そんなの戦う一択でしょう?」
 マリアは怪訝そうな顔をした。
「だってそうでしょう、私たちの戦いは世界を守るための物よ、でも軍隊は違う、たった一つの国を守るために存在する、私たちと背負っているものが違いすぎるの」
 マリアはまるで当たり前のような顔をしてそう言い切った。
「武装を譲ることはできるのか」
 そう呟いたが誰もが無言で首を振った。
 ブレスレットを撫でた。これを外すことはできないのはみんな分かっているようだ。
「それにこれを譲っても何をするつもりなんだろう」
 僕の隣の席の眼鏡をかけた栗色の髪をした同級生は不思議そうに聞いた。
 まあ、普通は自分の国の軍隊を強くしようとしてるんだろうけど。
 僕はとつとつとそんな話をした。
「この国の軍隊を強くしてこの国は強いと威張って、もしかしたら隣の国にでも攻め込むつもりなんじゃないかな」
「でもこの国を強くしても世界が滅んではどうしようもないだろう」
 栗色の髪の彼、ジョンはそう聞かれたが僕は答えることができなかった。
 世界なんて単位で状況を理解できる人間がこの国の王宮にいないんだろう。
 ジョンはブレスレットを撫でた。ミランダさんと同じ赤だ。
 砲手か。
「領主様はどうするつもりなんだろうな」
 政治段階で解決が付くならそれに越したことはない。面倒なことは御免だ。しかし実際に軍がこの街を攻めて来たら。
「負けることはないよ、この街に危険を及ぼすものが現れたときは武装が発動する。それが何であっても」
「負けることはないか」
「負けるはずはないだろう、僕たちが守っているのは世界だ。国一つの軍隊など余裕で蹴散らせることができる」
 その事実こそが恐ろしいのだとこの街で生まれ育った彼らに納得してもらうことは難しいのだろうな。
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