闘えホワイト君

karon

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港の異変

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 僕はいつも通り買い物に出かけた。本日の夕食は魚がいいと思って港のほうを目指す。
 港で買えば産地直送なので新鮮で安い。
 食べているものは考えない、ちゃんとはらわたも抜くし、きちんと加熱すれば大丈夫だ。たぶん、きっと。
 僕は港で小魚を何匹か買う。
 大きな魚は食べきれないし、捌く技術もない。内臓を抜いて頭を切り落として焼くぐらいなら僕でもできる。
 帰りに野菜を買って帰ろうと僕は買い物かごを抱えなおした。
 普段通りの港の風景だ。
 魚を捕る漁船と中規模ほどの交易船。そして荷運びをする人たちが行き会う喧騒を聞きながら僕は商店街へと足を進めていた。
 不意に喧騒が途絶えた。誰もがぽかんとした顔で海を見ている。
 僕も海のほうに振り返り自体を理解した。
 そこに見慣れない船が入ってくるところだった、だがその船は周囲にある漁船や交易船とは一線を画していた。
 なんだか無駄に豪華で巨大。
 その船は周囲のほかの一番大きい船の二倍の大きさがあった。
船のへさきには精緻な女神像が飾られている。船の縁には何やら細かく装飾されておりさらに金属かそれとも宝飾品でもはめ込まれているのかやたらきらきらと輝いていた。
 船体も赤と青の幾何学模様で塗られており素朴な木の質感を生かした漁船や、防水用の塗料で黒く染められた商船の中でその姿は異様に浮きまくっている。
 僕の以前住んでいた場所はそれほど海に近くなかったので船を見たことはさほどなかったがこの船が普通じゃないのはなんとなくわかった。
 しばらくの沈黙の後、何かをはばかるようにひそひそと隣の顔見知りと話をし始めた。小さな声だったので僕には聞き取れなかった。ただ不穏な気配は感じられた。
 船がゆるゆると港に停泊し錨が下ろされ船の縁から縄梯子が下ろされた。
 ほかの船は橋を渡せば乗り降りができるがさすがにその船は大きすぎた。
 縄梯子で降りてきた人たちは水夫なんだろうけれど船の縁からそれを見下す人たちは妙にゴージャスな格好をしていた。
 縄梯子で降りてきた人は上から降ろされるものを受け取るようだった。
 船の帆を張る横棒を活写の代わりにして降りてきたのはちょっと急な階段だった。
 階段の根元を船をもやっておくでっぱりに固定する。
 そして、階段を使ってやたら豪華な服装の人たちが下りてくる。
 外套は紺色だが照りがやたらある生地で作られている。そして外套の下に着ている服にはきわめて精緻に編まれたレース飾りが飛び出している。
 その人たちは全員そのそろいの格好をしている。
 顔立ちはちょっといかついが普通の顔立ちのおじさんたちだ。
 そんなおじさんたちがドレスについているのがふさわしいレースたっぷりのシャツを着て並んでいる。
 襲撃のほうがよっぽど現実感があると僕は思った。
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