闘えホワイト君

karon

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将来の展望

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 重厚なそれはそれは高そうな飴色に磨かれたライティングデスクの向こうに座る人を前に僕は黙って立っていた。座れとは言われない。これはなんだか使用人の位置だと思う。
 なんだかんだ言ってもこの人も貴族なんだなあと思う。
 なんとなく僕はそこに立って背後の窓を見ていた。窓からは庭が見える。低い木の植込みのあちらこちらに咲いている花はわざわざ植えてあるんだろうか。
「さて、君は将来を考えているかね」
 唐突にそう聞かれた。一応それなりの将来の展望は立てていた。この街に来るまでは。
 この街に来て、いろいろな目標が吹っ飛んでしまっていたがやはり将来は就職はしなければならないだろう。おじさんの財産も無限ではない、それにほかの人たちもまあ働いている。
 就職先はどうしようかそう思いつつ学業を終えてから考えようと思っていた。
「今は考えられないところです」
 僕は正直に言った。だって今の状況に適応しようと努力するだけで精いっぱい。それ以上のことを考える余裕なんかない。
 そのあたりを察したのだろう。領主様はうんうんとうなずいた。
「それならばだ、うちに就職しないかね?」
 つまりこの家の使用人になれということだろうか。
 例えば僕を連れてきた人みたいな仕事をすればいいのかあまり詳細がわからないが。
 僕が首をかしげながらそう尋ねると領主様は違う違うと首を横に振った。
「私の仕事は何だね」
「この街の運営ですか」
 僕は一言で言い切った。
 この土地を収める領主なんだからそれが普通だと思う。別任務がものすごいけれど。
「その通り、この家の使用人は単に私のために家政を任されているだけだ。そして領地を運営するための人材は別にいる」
 彼はきっぱりと言い切った。
 何やら雲行きが不穏になってきた。
「あのもしかしてこの街の政治に関われと言っているわけじゃないですよね」
 恐る恐るそう聞いた。
「そう聞こえないかね」
 あっさりとそう返されクラっと立ち眩みを起こしそうになる。
「いやいやいや、いくらなんでも冗談ですよね、僕みたいな学生に領主様自らそんな冗談をおっしゃるなんて人が聞いたら笑っちゃいますよ」
 僕は必死にそれを冗談で流そうとした。
「領主たるものがわざわざ人を呼びつけて冗談を言うわけがないだろう」
 僕のはかない希望をあっさり叩き潰して彼は続ける。
「これはこちらの希望だがまあ、君もこの街に住むならこちらの言い分に逆らえないことはわかっているね」
「はい」
 僕は力なく答えた。
「でもどうしてこんな話を僕に?」
「君はもともと文官志望の学部を受けているようだし、外の世界をある程度知っている人材はこちらとしても欲しかったところだ」
 確かに外からこの街に移住する人間は少なそうだ。そして食いっぱぐれがなさそうだと役人を志望した過去の僕をぶん殴りたくなった。
 もはや決定事項として将来の就職先が決まってしまった。
「それではこちらで卒業した後のことは整えておこう、帰ってよろしい」
 僕は帰りは馬車で送ってもらえずとぼとぼと徒歩で帰った。
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