闘えホワイト君

karon

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アンソニーさんはかく語り

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「どうしたんだい、ラリー君」
 アンソニーさんは柔和な笑みを浮かべて僕たちを迎えてくれた。
 背後の少年はアンソニーさんのご子息だろうか。
「おじさん、この人誰?」
 少年が、多分トミー君が僕を怪訝そうに見た。
「ああ、仕事の関係でね」
 アンソニーさんが苦笑しつつ扉を開いた。磨きこまれて奇麗な木目が目立つ廊下が見えた。
「仕事? でも若すぎない、どう見ても学生だよ」
 実際その通りなんだがどうしてこの子は僕を見て不思議そうな顔をしているんだろう。
「親戚の子供でね、最近引き取ったんだ。まあまだ最初のあれは見ていない」
 同士がいた。というかなんでよりによってこの街にいる親戚に引き取られたかな、他にいなかったんだろうか。
「妻には先立たれてね、子供もいなかったし丁度いいかと」
 どういうふうに丁度いいんですか、マジでそれが疑問なんですが。
 新たな同志に僕は憐憫のまなざしを注ぎつつここに来た用件を思い出した。
「あの、ご報告というか相談というか」
 僕は何とか言葉を絞り出す。
「じゃあ、ちょっと私の部屋に来てくれるかな、話をするのはラリー君だけでいいのか?」
 アンソニーさんがマリアを見た。
「ラリーの経験ですので、私はトミー君と遊んでいましょうか」
 マリアがそう言うとアンソニーさんは頷く。
 そして僕はアンソニーさんの家に通された。
 同じ規模の家だけど僕の家の殺風景さに比べるとアンソニーさんの家は随分と違って見えた。
 生活の気配が濃いというか。
 漆喰を塗っただけの真っ白な壁と、アンソニーさんちの色鮮やかであるが落ち着いた色合いの模様の壁紙とか小窓に飾られた花などを見ながら思う。
 アンソニーさんの部屋は窓のある正面意外は本棚に覆われていた。
 窓のある側に机とベッドが置かれており、それ以外は本棚が圧迫している。
 カーテンが閉じられて薄暗い、書物が日の光で焦るのを防ぐため年がら年中カーテンが締まっているのだという。
「あの、つい先日のことなんですが」
 僕は先日の雨の日にあったことをかいつまんで話した。ミランダさんとのやり取りも隠すことなく。
「それでその、経験のある方にもう一度話したほうがいいとマリアに言われて」
 ミランダさんは後衛中の後衛なのであまりあてにならないのではないかと言われたことは何となく濁す。
「雨の日に佇んでいた灰色の男ね」
 アンソニーさんは狩る首を振った。
「そうした話は聞いたことがないな、しかし敵は手を変え品を変えやってくる。新しい手口を考えた可能性はないわけではない。私の方でも領主さまあたりに報告しておこう」
 アンソニーさんがそう言うと僕は気になっていたことを聞いた。
「トミー君はどうなるんですか?」
 アンソニーさんはやれやれといったふうに僕の顔を覗き込んだ。
「別に、最初の襲撃があった後に聞けばいい、将来この街を世界を守る戦士たるかと、そうじゃないなら十五歳で戦士になる、そうじゃないなら十五になる前にこの街を離れるだけだ」
「それって僕の場合は」
「君はこの街に来た時点で十五を過ぎていただろう」
 僕はうなだれた。
「そうですよね」
 力なくそう呻く。


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