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快晴の下
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僕は前日の雨が嘘のように晴れ渡った空を見ながら登校した。
坂道を上った先にある校舎に向かう。
急勾配ではないが上り坂を楽し気に駆けて登校する連中もいる。けたけたと笑いながら僕を追い越していくその姿を見送りながら僕はそれなりに足を速めた。
「ああ、何しけた顔してんだよ」
不意に僕に影が差した。変だな今日はこんなに晴天で僕のそばに遮蔽物なんかないはずなのに。
僕を見下ろしていたのは初日に僕にお小遣いをせびった二人組だった。
「今日は持ち合わせが」
僕は顔から一気に血の気が引いていく。
「ああ、顔色悪いって言ってんだよ」
「なんかおかしくねえかっての」
以外にも二人組は僕を気遣う言葉を次々に投げかける。
「あのな、仲間から金をとるわけないだろ、大体おれたちのおかげでのうのうと生きてる癖に金も払わない街の外の奴らが悪いんだよ」
「そうした理屈を言ってもそもそもそんなこと街の外の人は知らないんだよ」
実際僕も知らなかったし。
僕は二人をそう言ってなだめた。
それにこの街は商都でもある、あまりガラの悪いのがいたらちょっとまずいのではないだろうか。
「あ、俺がドウね」
赤毛の方がそう言った。
「俺がキュン」
黒髪の方がそう言う。僕は頭一つとは言わないがかなり大柄な二人に挟まれて登校することになった。
実に気まずい空間に僕はそのまま歩き続けた。
「あれ、ラリー君」
マリアが僕に向かって手を振った。
これは平和な時の普通の日常なのだ、まあ一瞬で壊れる平穏にすぎないのだけれど。
「ああ、ラリー君、この二人は私の幼馴染なの、馬鹿だけどまあ使えるわよ」
「おい、このアマ」
かなりとんでもない発言に二人の顔がこわばる。
「それと、ラリー君この二人が馬鹿をやったらちゃんと先生か私に言ってね、きちんと初動をやらないと状況が悪化するばっかりなんだから」
マリアがにっこりと笑って毒を吐く。
ドウとキュンのこめかみに青筋が浮いている。
「あの、そのくらいで」
ここで喧嘩が始まったら遅刻してしまう。
僕は三人を促して学校に向かう。
見上げた空は雲一つない真っ青な空だった。
昨日の異常事態などまるで夢だったかのような気がした。
「そういやあなんでそんなしけた顔してたんだ?」
先ほどの問いをキュンが繰り返した。僕はそんなに不審な顔をしていただろうか。
「昨日、変なものを見たんだ。それだけならさ気のせいかなって思ったんだけど」
そう言って僕はこのまま続けたものかと悩む。ミランダさんは腕輪が戦闘以外で何らかの反応を示すことは無いと言っていた。
「おい、さっさと言えよ」
胴が僕の肩を叩いた。
「わからないんだ。腕輪が急に熱くなって」
火傷するほどじゃないけれど熱いお湯につけておいたみたいに熱かった。
三人はそれぞれ顔を見合わせている。
坂道を上った先にある校舎に向かう。
急勾配ではないが上り坂を楽し気に駆けて登校する連中もいる。けたけたと笑いながら僕を追い越していくその姿を見送りながら僕はそれなりに足を速めた。
「ああ、何しけた顔してんだよ」
不意に僕に影が差した。変だな今日はこんなに晴天で僕のそばに遮蔽物なんかないはずなのに。
僕を見下ろしていたのは初日に僕にお小遣いをせびった二人組だった。
「今日は持ち合わせが」
僕は顔から一気に血の気が引いていく。
「ああ、顔色悪いって言ってんだよ」
「なんかおかしくねえかっての」
以外にも二人組は僕を気遣う言葉を次々に投げかける。
「あのな、仲間から金をとるわけないだろ、大体おれたちのおかげでのうのうと生きてる癖に金も払わない街の外の奴らが悪いんだよ」
「そうした理屈を言ってもそもそもそんなこと街の外の人は知らないんだよ」
実際僕も知らなかったし。
僕は二人をそう言ってなだめた。
それにこの街は商都でもある、あまりガラの悪いのがいたらちょっとまずいのではないだろうか。
「あ、俺がドウね」
赤毛の方がそう言った。
「俺がキュン」
黒髪の方がそう言う。僕は頭一つとは言わないがかなり大柄な二人に挟まれて登校することになった。
実に気まずい空間に僕はそのまま歩き続けた。
「あれ、ラリー君」
マリアが僕に向かって手を振った。
これは平和な時の普通の日常なのだ、まあ一瞬で壊れる平穏にすぎないのだけれど。
「ああ、ラリー君、この二人は私の幼馴染なの、馬鹿だけどまあ使えるわよ」
「おい、このアマ」
かなりとんでもない発言に二人の顔がこわばる。
「それと、ラリー君この二人が馬鹿をやったらちゃんと先生か私に言ってね、きちんと初動をやらないと状況が悪化するばっかりなんだから」
マリアがにっこりと笑って毒を吐く。
ドウとキュンのこめかみに青筋が浮いている。
「あの、そのくらいで」
ここで喧嘩が始まったら遅刻してしまう。
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そう言って僕はこのまま続けたものかと悩む。ミランダさんは腕輪が戦闘以外で何らかの反応を示すことは無いと言っていた。
「おい、さっさと言えよ」
胴が僕の肩を叩いた。
「わからないんだ。腕輪が急に熱くなって」
火傷するほどじゃないけれど熱いお湯につけておいたみたいに熱かった。
三人はそれぞれ顔を見合わせている。
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