闘えホワイト君

karon

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美味しい食事

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 ジュウジュウと膨れた皮に薄茶の焦げ目のある焼き魚が歌っていた。
 先ほど焜炉の上の焼き網からおろしたてほやほやだ。
 この店では焼き魚を焼く際に焼き網に香草を仕込むのでいぶされてほんのり風味が付くそして下味にまぶされたあら塩が魚体をきらめかせていた。
 腹のあたりをフォークでつつくとほくりとほぐれる。一口頬ばれ強い塩気とそれに隠れるような甘みを感じる。
「これ美味しい」
 思わず呟くと焼き網を手にしたおっちゃんが豪快に笑う。
「このあたりの魚は美味いからな」
 初陣を終えた僕は一応お祝いということで空てい部隊の隊長さんアンソニーさんが知り合いのお店でおごってくれると言って僕を誘ってくれた。
 アンソニーさんは小ぶりな魚を山と積まれた大皿を前に白ワインで一杯やっている。僕は学生の身なのでお酒はいらないと言った。
「なかなか有望な少年なんだよ」
 アンソニーさんがそういうが半分はお世辞だろう。
 アンソニーさんは細身の柔和な顔立ちの想念の男性だ。その御友人である店主はつるつるの毛髪が見当たらない頭を輝かせ日に焼けた筋骨隆々とした体躯の対照的な方だ。
 よく海に出て自分で採った魚をこの店で出しているらしい。
 魚も買えるそうなので味見のできる魚屋と言えるかもしれない。
 付け合わせの焼き野菜とパンをかじりながら僕はつらつらとそんなことを考えた。
「このあたりの魚は餌がいいからな」
「餌ですか」
 店主は丈夫そうな歯をむき出しにして笑う。
「そうそう、この間君も巻いてくれただろう」
 はて、どういうことだろう。
 暫く考えていたがゆるゆると僕の頭に心当たりというものが降りてきた。
 先日僕が落としたあれは結構海に落ちていたのではないだろうか。
 僕は目の前にある食べかけの魚をしばらく見ていた。
 まさかあれを食べていた。いや確かに海に落ちたのもあったけどいやまさか。
「海に残骸が落ちるとなぱあっと魚が寄って行くんだ。結構壮観だぞ」
 どうやら店主は海兵隊らしい。そんなこと教えてくれなくてもいいのに。
「食べて大丈夫なんですか?」
 僕は額に脂汗が浮かんでいることを自覚していた。
「大丈夫じゃねえの、これで腹を壊したってやつは知らねえし」
 だがその時点で僕の食欲は大分落ちていた。しかしせっかく奢ってくれるとおっしゃったアンソニーさんがいらっしゃる手前僕にその魚を残すという選択肢はなかった。
 僕は涙目でその魚を食べきった。そして口直しと言ってパンをかじる。
 ちょっと固い雑穀パンだだが粗末というのではなくその雑穀が風味になっている。
「山の方なら野菜の肥料になるがな」
 その言葉に吹きそうになるが必死にこらえた。
「大丈夫だ、腹を壊した奴はいない」
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