8 / 26
美味しい食事
しおりを挟む
ジュウジュウと膨れた皮に薄茶の焦げ目のある焼き魚が歌っていた。
先ほど焜炉の上の焼き網からおろしたてほやほやだ。
この店では焼き魚を焼く際に焼き網に香草を仕込むのでいぶされてほんのり風味が付くそして下味にまぶされたあら塩が魚体をきらめかせていた。
腹のあたりをフォークでつつくとほくりとほぐれる。一口頬ばれ強い塩気とそれに隠れるような甘みを感じる。
「これ美味しい」
思わず呟くと焼き網を手にしたおっちゃんが豪快に笑う。
「このあたりの魚は美味いからな」
初陣を終えた僕は一応お祝いということで空てい部隊の隊長さんアンソニーさんが知り合いのお店でおごってくれると言って僕を誘ってくれた。
アンソニーさんは小ぶりな魚を山と積まれた大皿を前に白ワインで一杯やっている。僕は学生の身なのでお酒はいらないと言った。
「なかなか有望な少年なんだよ」
アンソニーさんがそういうが半分はお世辞だろう。
アンソニーさんは細身の柔和な顔立ちの想念の男性だ。その御友人である店主はつるつるの毛髪が見当たらない頭を輝かせ日に焼けた筋骨隆々とした体躯の対照的な方だ。
よく海に出て自分で採った魚をこの店で出しているらしい。
魚も買えるそうなので味見のできる魚屋と言えるかもしれない。
付け合わせの焼き野菜とパンをかじりながら僕はつらつらとそんなことを考えた。
「このあたりの魚は餌がいいからな」
「餌ですか」
店主は丈夫そうな歯をむき出しにして笑う。
「そうそう、この間君も巻いてくれただろう」
はて、どういうことだろう。
暫く考えていたがゆるゆると僕の頭に心当たりというものが降りてきた。
先日僕が落としたあれは結構海に落ちていたのではないだろうか。
僕は目の前にある食べかけの魚をしばらく見ていた。
まさかあれを食べていた。いや確かに海に落ちたのもあったけどいやまさか。
「海に残骸が落ちるとなぱあっと魚が寄って行くんだ。結構壮観だぞ」
どうやら店主は海兵隊らしい。そんなこと教えてくれなくてもいいのに。
「食べて大丈夫なんですか?」
僕は額に脂汗が浮かんでいることを自覚していた。
「大丈夫じゃねえの、これで腹を壊したってやつは知らねえし」
だがその時点で僕の食欲は大分落ちていた。しかしせっかく奢ってくれるとおっしゃったアンソニーさんがいらっしゃる手前僕にその魚を残すという選択肢はなかった。
僕は涙目でその魚を食べきった。そして口直しと言ってパンをかじる。
ちょっと固い雑穀パンだだが粗末というのではなくその雑穀が風味になっている。
「山の方なら野菜の肥料になるがな」
その言葉に吹きそうになるが必死にこらえた。
「大丈夫だ、腹を壊した奴はいない」
先ほど焜炉の上の焼き網からおろしたてほやほやだ。
この店では焼き魚を焼く際に焼き網に香草を仕込むのでいぶされてほんのり風味が付くそして下味にまぶされたあら塩が魚体をきらめかせていた。
腹のあたりをフォークでつつくとほくりとほぐれる。一口頬ばれ強い塩気とそれに隠れるような甘みを感じる。
「これ美味しい」
思わず呟くと焼き網を手にしたおっちゃんが豪快に笑う。
「このあたりの魚は美味いからな」
初陣を終えた僕は一応お祝いということで空てい部隊の隊長さんアンソニーさんが知り合いのお店でおごってくれると言って僕を誘ってくれた。
アンソニーさんは小ぶりな魚を山と積まれた大皿を前に白ワインで一杯やっている。僕は学生の身なのでお酒はいらないと言った。
「なかなか有望な少年なんだよ」
アンソニーさんがそういうが半分はお世辞だろう。
アンソニーさんは細身の柔和な顔立ちの想念の男性だ。その御友人である店主はつるつるの毛髪が見当たらない頭を輝かせ日に焼けた筋骨隆々とした体躯の対照的な方だ。
よく海に出て自分で採った魚をこの店で出しているらしい。
魚も買えるそうなので味見のできる魚屋と言えるかもしれない。
付け合わせの焼き野菜とパンをかじりながら僕はつらつらとそんなことを考えた。
「このあたりの魚は餌がいいからな」
「餌ですか」
店主は丈夫そうな歯をむき出しにして笑う。
「そうそう、この間君も巻いてくれただろう」
はて、どういうことだろう。
暫く考えていたがゆるゆると僕の頭に心当たりというものが降りてきた。
先日僕が落としたあれは結構海に落ちていたのではないだろうか。
僕は目の前にある食べかけの魚をしばらく見ていた。
まさかあれを食べていた。いや確かに海に落ちたのもあったけどいやまさか。
「海に残骸が落ちるとなぱあっと魚が寄って行くんだ。結構壮観だぞ」
どうやら店主は海兵隊らしい。そんなこと教えてくれなくてもいいのに。
「食べて大丈夫なんですか?」
僕は額に脂汗が浮かんでいることを自覚していた。
「大丈夫じゃねえの、これで腹を壊したってやつは知らねえし」
だがその時点で僕の食欲は大分落ちていた。しかしせっかく奢ってくれるとおっしゃったアンソニーさんがいらっしゃる手前僕にその魚を残すという選択肢はなかった。
僕は涙目でその魚を食べきった。そして口直しと言ってパンをかじる。
ちょっと固い雑穀パンだだが粗末というのではなくその雑穀が風味になっている。
「山の方なら野菜の肥料になるがな」
その言葉に吹きそうになるが必死にこらえた。
「大丈夫だ、腹を壊した奴はいない」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
皇帝はダメホストだった?!物の怪を巡る世界救済劇
ならる
ライト文芸
〇帝都最大の歓楽街に出没する、新皇帝そっくりの男――問い詰めると、その正体はかつて売上最低のダメホストだった。
山奥の里で育った羽漣。彼女の里は女しかおらず、羽漣が13歳になったある日、物の怪が湧き出る鬼門、そして世界の真実を聞かされることになる。一方、雷を操る異能の一族、雷光神社に生まれながらも、ある事件から家を飛び出した昴也。だが、新皇帝の背後に潜む陰謀と、それを追う少年との出会いが、彼を国家を揺るがす戦いへと引き込む――。
中世までは歴史が同じだったけれど、それ以降は武士と異能使いが共存する世界となって歴史がずれてしまい、物の怪がはびこるようになった日本、倭国での冒険譚。
◯本小説は、部分的にOpen AI社によるツールであるChat GPTを使用して作成されています。
本小説は、OpenAI社による利用規約に遵守して作成されており、当該規約への違反行為はありません。
https://openai.com/ja-JP/policies/terms-of-use/
◯本小説はカクヨムにも掲載予定ですが、主戦場はアルファポリスです。皆さんの応援が励みになります!
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる