闘えホワイト君

karon

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奥様のお話

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 人間の耐久力というのは侮れない。もう耐えられないと思っていた過酷な体育の授業と言ってもいいのかという代物にいつの間にか僕は慣れた。
 初日は酷使しすぎた筋肉が悲鳴を上げ歩くこともままならなくなった僕をあの路上強盗二人組が担いで運んでくれた。
 一応人としての礼儀で礼を言った。
 確かに最初にあった時は路上強盗だったが最終的に助けてもらったわけだし。
 お隣の奥様が何だか微笑ましいものを見たという顔で笑ってくれた。
 奥様は小さな子供を連れている。恥ずかしそうに奥様のスカートの影から僕を覗き込んでいた。
 奥様によく似たウエーブヘアをツインテールにした可愛らしい女の子だ。
「お兄ちゃん、ダイジョブ?」
 たどたどしい声で俺に尋ねるこの子はいたいけで思わず胸が痛くなる。
 将来この子は同じように戦うことになるんだ。
「ミランダさんはどうしてこの街にいるんですか?」
 俺は思わずそう言ってしまった。失言に気づいてももう遅い。
 しかし奥様はにっこりと笑う。
「そうね、この街は危険だと分かっているわ。だけどこの世界が危機に瀕しているのも分かっているからよ」
 奥様は静かな表情でそう言った。
「もしここから逃げたとしても、この街が滅びたら連鎖的に逃げた先も滅びるのよそうなったら同じことでしょう、そして私は臆病なの、いつか滅びるかもしれないと思いながら遠くの街で生きるよりこの街で滅びを食い止めるほうが怖くないの」
「そりゃ、砲手なら死ぬ心配もないですから」
 思わずそう言ってしまう。
「あら、そんなことないわよ、お隣のお爺様が先月吹っ飛ばされた時もあったし。暴発もないわけじゃないものね、まあ、苦しむ間もないのが救いかしらね」
 奥様はころころと笑った。
 いやそういうの笑い事じゃないから。
 しかし奥様は笑いを収めない。そして俺の肩をつかんだ。
「君は耐えられるのかしらね、もしかしたら昨日この街が破れたかもしれないもしかしたら明日死ぬかもしれない、そう思い続けるのよ、どんなに怖いかしら」
 俺は何も答えられない。
 知ってしまったことは忘れられない。この街が負ければどのみち死ぬ。それくらいなら闘って死ぬ。それもまた人の生きざまなのかもしれない。
 だけど僕はそこまで達観できない。
 僕はよろけながら家に入りそのまま着替える余裕もなく寝た。
 そんなことを思い出しながら僕は学校に向かう。
 なんだか僕の最近少し筋肉がついた身体を撫でた。
 すでに顔見知りになった生徒たちが僕に声をかける。

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