平凡な魔法使いが平凡な望みをかなえようとした結果なぜか最強の彼女ができた話

なんで？

　剣は床の中に埋め込まれていた。ずっと探していた剣がこんな場所に埋め込まれていたなんて。
　すぐ足元にあったなんて。
「触るな、触ったものは全員死んでいる」
　触らないでどうやればいいんだよ。まさかこうやって封印する際に何人か死んでいるわけか。
　もしかして状況悪化している？　これただの危険物であってこれを使っても何にもならないんじゃないか？
　サイカニアは意を決したようにそれを掴んだ。ガクリとサイカニアが膝をつく。
　止める間もなかった。どうしようサイカニアが死んでしまう。
　俺の女神、サイカニアを失ったらどうすればいいんだ。
　サイカニアはよろけながらも剣を手にして立ちあがった。
「嘘だ、手に触れただけで死んだはずだ」
　サイカニアは重そうに剣を引きずりながら玄関に向かって歩き始めた。
「じゃ、やってみますか」
　サイカニアは玄関に立つとすっと剣を前に掲げた。
　えええ、どうして平気なんだ。
「嘘だ、生きているはずがない」
　ディロング氏は呻くが、おい、サイカニアを勝手に殺すなよ。
　そう思ったが、死んでるはずなのに、何故か生きているのは変わりない。
「行きまーす」
　サイカニアの気の抜ける掛け声とともに白い閃光が走った。
　轟音がしたはずだが聞こえなかった。許容範囲を過ぎると人の感覚は反応しなくなるという。
　すべてが焼き払われたその場所で。サイカニアはすっくりと立っていた。
「やっぱり無理、これ重すぎ」
　サイカニアは剣を取り落とした。
「大丈夫か？」
　俺はサイカニアに駆け寄った。サイカニアの前方は風景が激変していた。
　すべてが焼き払われている。これがティランの宝剣の力なのか。
「こんな恐ろしい兵器があるなんて」
　俺は腰を抜かしそうになった。これは封印するしかないかもしれない。
「もしかしたらもう逃げたかしら」
　ああ、ふつう逃げるだろうな。
　サイカニアは剣を床に落とした。
「これどうしよう」
　触ったら死んでしまうので、これを移動させるわけにはいかない。
「触ると魔力をすわれますよ」
　魔力を？
「魔力を吸い上げて力を発揮するんです。ただ一回使うたびに座れる魔力が大きいので、場合によっては命に係わるようですね」
　サイカニアがそう説明してくれた。
　なるほど魔力の吸い上げが死因なのか。いや、じゃあ平気なサイカニアはどれだけ魔力を持っているんだ。
「あの、サイカニア？」
　思わず俺はサイカニアの顔を覗き込む。
「どうかしました？」
　サイカニアはにっこりと笑った。