平凡な魔法使いが平凡な望みをかなえようとした結果なぜか最強の彼女ができた話

karon

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予言者

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 ぽうっと柔らかな光が、あるものを中心に広がった。
 それはハルキゲニア。
 身体を丸めて胎児のポーズでハルキゲニアは宙に浮いていた。
 そして、周囲を包む金色の光。
「これはいったい?」
 思わずつぶやくが、誰も俺の疑問に答えてはくれない。
 マルレラとオピバニアも目を丸くしてそのそばでへたり込んでいた。
 オピバニアは空中をゆったりと漂いだした。
 ふいにオピバニアは身体を伸ばした。相変わらずつま先は床についていないがまっすぐに立っている。
 その姿勢のままハルキゲニアは眠っているように見えた。
 うっすらと開いていた唇が明らかに意思を持って動き出した。
「触れてはならない、ティランの聖剣は触れただけでひとの命を奪う。触れることができるのは選ばれしもののみ。選ばれしもの以外はそれに触れることは死を意味する」
 滔々と語られるその言葉、俺は茫然としてハルキゲニアを見ていた。
「いったい何が起きているんだ」
 唐突に光は消えて、ハルキゲニアは崩れ落ち、そのそばでへたり込んでいたマルレラとおぴ場にあの上に落ちた。
 押しつぶされて悲痛な悲鳴を上げる二人だが、それを全く我関せずとハルキゲニアは眠り続けていた。
「これは驚いた、彼女は魔法使いじゃない」
 そう言ったのはラガニア氏だった。
 まるでめったにない珍品を見つめるコレクターのような少々行ってしまっている視線を眠り続けるハルキゲニアに向ける。
「何なんですか、いったい」
「これはめったにいないんだ、彼女は預言者だ」
「あの詐欺とかで捕まるやつですか?」
 以前新聞で読んだ話を俺はしてみた。
「それは預言者を装った詐欺師のことだろう、私が行っているのは本物の預言者のことだ」
 眠っているハルキゲニアの髪にそっと手を触れる。
 下敷きになっているマルレラたちのことは最初から目に入っていない。
 俺は近くのソファからクッションをとってきて、ハルキゲニアを起こし、下敷きになっていた二人を解放した。そして、クッションを枕にして改めてハルキゲニアを寝かせた。
「彼女は魔法使いの学校に入るべきじゃなかったんだ、魔法使いとして下級なのも当たり前だ。本来預言者と魔法使いはその能力のベクトルが真逆なんだから」
「つまり、ハルキゲニアは学校を退学することになるわけだ」
 うっとうしい人間がいなくなるのは俺としても大歓迎だ。それに稀少な能力者として世に出られるならハルキゲニアの両親も喜ぶだろう。
 そして最初の問題に戻る。
 生きて帰れたら。
「預言者というならもうちょっと具体的な話をしてくれればいいのに」
「聖剣に触れたら危険だということを教えてくれたじゃないか」
 自分は選ばれしものであるという自信などこれっぽっちもない俺は、おそらく聖剣に触れたら死ぬタイプだろう。もし見つかればだが。
「見つかるめどがあるときに聞きたい予言だったな」
「もしかしたら、敵の人が聖剣を見つけて触って死んじゃってくれるといううれしい予言だったのかも」
 マルレラがようやくダメージから回復してそんなことを口走った。
 本当にそうだったらどんなに嬉しいだろうか。

 
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