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疑惑の種

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 つまり俺達は詰んだ。外から助けは来ないし、こちらから助けを呼ぶこともできない。
 俺は頭を抱えた。
 基本的に俺は頭脳労働者でありインドアなのだ。魔力はそこそこあるが基本的に技術者、戦闘には向かない。
 そして俺の周囲にいるのは敵か味方かわからないディロング氏、そして足手まとい必須の三人娘、そしてか弱いサイカニア。
「こうなると籠城するしかないのですが、一定期間連絡がなければ誰かがおかしいと思うはずです」
 その通りだが、それが俺たちの死後でないことを祈るしかない。
 俺達はそれでも生き延びる算段をまとめることにした。
 まず俺にできることを考えてみた。
 俺は技術者である。となると技術で勝負だ。
 懐には常に魔道具を作る道具を複数持ち歩いているのだ。
 基本的にアイデアが湧いた時何かしらいじれるようにというのが趣旨だ。
 それを点検してみる。
 宝石数点。ただし質は悪い。
 呪力をしみこませた絵具。これは魔方陣を描くためのもの。普通の筆記具より高性能なものを作りことができる。
 そして、媒体となる遺物。
 奇獣の骨とか、神木の枝の乾いたものなど。これもそれほど数があるわけではない。
 これらを組み合わせて作れるものといったらなんだろう。
 俺は知識を総動員した。
 それと戦略的に籠城を選ぶなら、必要とされるのはブービートラップだということも推測できる程度の戦略的知識はある。
 そしてそれをしまっていた入れ物、小さなきんちゃく袋ぐらいだが、トランク一戸分くらいは入る魔法が欠けてある。
 俺の最初の作品だし、講師に割合評価されたという自負がある。
 場合によってはこれも使えるかもしれない。
 俺は己のとるべき道を探っていた。
 その間どこか虚ろな目でハルキゲニアが居間をふらついていた。
 ハルキゲニアに関しては俺には何も言えない。
 もともとおかしかったが今のこの女は明らかに常軌を逸している。
 最初から戦力外認定だったが、これが吉と出るか凶と出るかは謎だ。
「これは何事かね」
 不意に俺たち以外の声を聴いて俺は飛び上がった。
 そういえばこの人もいたのだ。
 色ガラスの眼鏡をかけた見知らぬ商社マンのような人。
「ラガニア氏これは」
 ディロング氏が慌てて彼のもとに駆け付けた。そういえば泊まれる場所はここしかないのだから最終的にここにたどり着くに決まっている。
「単なる学生のオリエンテーリングにしては物騒な魔力が飛び交っていたようだが」
 そう言ってたぶん俺を見ている。
「実は結界に通信を阻まれているようで」
 素直にディロング氏はラガニア氏に話してしまう。
 そして俺は気が付く、どうしてこの人ここにいるんだ。
 明らかにこの人がここにいるのは不自然なのに。
 俺は不意に浮かんできたラガニア氏への不信感をぬぐえなかった。


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