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第二幕 会議
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「マンドリンって、そんなに目立つ子じゃないよ」
メアリアンの率直な意見だった。
魔法の使える子は珍しいので少し浮くが、仕事として、魔法の使える人間の中にいれば埋没してしまう程度の実力だという。
「そりゃトップレベルの実力があって、ナンバー1争いにまで発展すれば殺すのなんのという騒ぎになるだろうけど、中の上なんて一番トラブルになりにくい位置だよねえ」
メアリアンの歯に衣着せぬ意見に、マンドリンもうなずいている。
職場にトラブルはなしか。
「そういえば、今何してるの?」
私の様にノートと辞書さえあればどこででもできる仕事と違ってこの二人は出勤しなければならないはずだ。
「あたしは今日は休み、仕事はしてるよ、マンドリンは有給消化中」
なんでも噂がひどすぎて、精神的に参っているだろうと上司の恩情でそうなっているのだとか。
「その上司は、メアリアンの言うアリバイを信じているの?」
「アリバイって何?」
「その人がその場所にいましたっていう証言や証拠のこと、この場合、貴女の言葉ね」
「ああ、それなら信じているんだけど、なんか浮世離れした人で、マンドリンがいまどれだけきつい状況にいるのかまるでわかってないと思う」
メアリアンは悔しそうに言う。
「後、他の女の子からは、私、可哀そうな子だと思われているの」
マンドリンは世にも複雑そうな顔をして言う。
「私、魔法が使えるから就職しなきゃならないでしょ、それが可哀そうだって」
確かに妻や娘を働かさないことが男のステイタスみたいな社会常識がまかり通っている世界なら、そういう発想も出るだろう。
「マグダレンはどうなの」
「私は大っぴらに働いてないもの、私の仕事は部屋で机に向かっていれば事足りるから、趣味の延長と思われているんじゃないかな、一応契約とか締め切りとかあるんだけどなあ」
「そう、でも私はそれほど自分のことを可哀そうとは思っていないの、いろいろと他ではできない経験や会えない人に会えたりするから、普通に家で花嫁修業してるよりよっぽど面白いと思うの」
「だよね、それにお金がもらえるし、稼ぎの半分家族に渡してもあんなに余る」
メアリアンはやはりそれほど裕福な家庭の育ちではないようだ、魔法が使えるので、無料で教育が受けられたらしいが、それ以外はあまり厳格にしつけられていない感じだ。
半分といっても上級家庭は支出も多いので、それほど大金をもらっている感じはしない。
服一着でも予算のかけ方がまるで違うのだ。
「まあ、私もちょっと旅行に行こうと思えばすぐに行けるお金が常に傍らにあるというのは不幸だと思わないけれどね」
「だよね」
上流階級の人間はあまりお金について話すことはしない。だからこんなことを話したのは初めてだが、かなり掛け値なしの本音だと思う。
「それで、マンドリン、周りの人間から、陥れられるほど恨まれている可能背は低いというので間違いないのね」
マンドリンは刻々と頷く。
世の中信じられないような逆恨みなんかあるのだが、それを言ってもどうしようもあるまい。
「じゃあ、怨恨はなし、あとは、誰かがそのとっても人に言えない不謹慎なことをして、それを自分がやったと思われたくないと思って、それならほかの人に転嫁しようとした」
怨恨がないなら、これしかないと思われる。しかし、この街に、マンドリンとその家族しか知り合いのいない私にはそれ以上のことはわからない。
「なんでマンドリンなのかな」
メアリアンは首をかしげる。
「髪色が珍しくて、魔法が使えるというので目立つ存在だったんじゃ」
なるほど、とメアリアンは手を打つが、マンドリンは世にも複雑そうな顔をしていた。
メアリアンの率直な意見だった。
魔法の使える子は珍しいので少し浮くが、仕事として、魔法の使える人間の中にいれば埋没してしまう程度の実力だという。
「そりゃトップレベルの実力があって、ナンバー1争いにまで発展すれば殺すのなんのという騒ぎになるだろうけど、中の上なんて一番トラブルになりにくい位置だよねえ」
メアリアンの歯に衣着せぬ意見に、マンドリンもうなずいている。
職場にトラブルはなしか。
「そういえば、今何してるの?」
私の様にノートと辞書さえあればどこででもできる仕事と違ってこの二人は出勤しなければならないはずだ。
「あたしは今日は休み、仕事はしてるよ、マンドリンは有給消化中」
なんでも噂がひどすぎて、精神的に参っているだろうと上司の恩情でそうなっているのだとか。
「その上司は、メアリアンの言うアリバイを信じているの?」
「アリバイって何?」
「その人がその場所にいましたっていう証言や証拠のこと、この場合、貴女の言葉ね」
「ああ、それなら信じているんだけど、なんか浮世離れした人で、マンドリンがいまどれだけきつい状況にいるのかまるでわかってないと思う」
メアリアンは悔しそうに言う。
「後、他の女の子からは、私、可哀そうな子だと思われているの」
マンドリンは世にも複雑そうな顔をして言う。
「私、魔法が使えるから就職しなきゃならないでしょ、それが可哀そうだって」
確かに妻や娘を働かさないことが男のステイタスみたいな社会常識がまかり通っている世界なら、そういう発想も出るだろう。
「マグダレンはどうなの」
「私は大っぴらに働いてないもの、私の仕事は部屋で机に向かっていれば事足りるから、趣味の延長と思われているんじゃないかな、一応契約とか締め切りとかあるんだけどなあ」
「そう、でも私はそれほど自分のことを可哀そうとは思っていないの、いろいろと他ではできない経験や会えない人に会えたりするから、普通に家で花嫁修業してるよりよっぽど面白いと思うの」
「だよね、それにお金がもらえるし、稼ぎの半分家族に渡してもあんなに余る」
メアリアンはやはりそれほど裕福な家庭の育ちではないようだ、魔法が使えるので、無料で教育が受けられたらしいが、それ以外はあまり厳格にしつけられていない感じだ。
半分といっても上級家庭は支出も多いので、それほど大金をもらっている感じはしない。
服一着でも予算のかけ方がまるで違うのだ。
「まあ、私もちょっと旅行に行こうと思えばすぐに行けるお金が常に傍らにあるというのは不幸だと思わないけれどね」
「だよね」
上流階級の人間はあまりお金について話すことはしない。だからこんなことを話したのは初めてだが、かなり掛け値なしの本音だと思う。
「それで、マンドリン、周りの人間から、陥れられるほど恨まれている可能背は低いというので間違いないのね」
マンドリンは刻々と頷く。
世の中信じられないような逆恨みなんかあるのだが、それを言ってもどうしようもあるまい。
「じゃあ、怨恨はなし、あとは、誰かがそのとっても人に言えない不謹慎なことをして、それを自分がやったと思われたくないと思って、それならほかの人に転嫁しようとした」
怨恨がないなら、これしかないと思われる。しかし、この街に、マンドリンとその家族しか知り合いのいない私にはそれ以上のことはわからない。
「なんでマンドリンなのかな」
メアリアンは首をかしげる。
「髪色が珍しくて、魔法が使えるというので目立つ存在だったんじゃ」
なるほど、とメアリアンは手を打つが、マンドリンは世にも複雑そうな顔をしていた。
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