17 / 22
かけっこ
しおりを挟む
子供たちが野原を駆けていく。野原と言っても森の中にぽっかりと開けた場所で、広さはせいぜい集会所くらい。
この辺りは畑と街になっている場所以外はほとんど森になっている。
国土が山岳地帯で開けた場所がほとんどないサン・シモンより平らな場所は少ないらしい。
だから普通に走れる野原として、これは結構広い方だ。
「この辺りは林業が盛んなんですか?」
「そうね、でも森の奥の木は切ってはいけないとされているの、よくわからないけれど古くからの言い伝えなんですって」
「そうですか、うちの実家の方でもある場所の木は切ってはいけないと言われている場所がありますからそんなもんなんでしょうね」
アリサの実家でそう言われているのはその場所の木々を伐採した後、土砂崩れが起きたからだが。木の根で土砂を抑えているのだからできるだけ根を長く伸ばす木を植えておかなければいけないと学校で習う。
正しい知識はきちんと受け継がれて行くようにとのことだ。おそらく同じような理屈で切ってはいけないという言い伝えがなされたのだが、最初の理屈が失われてしまい。ただ切ってはいけないという慣習だけが残ったのだろう。
まあ、それなら切らない方がいいとアリサは思った。
そんな言い伝えがあること自体、切ると悪いことが起きたのだろうから。
アリサはそれ以上考えるのをやめた。
「お坊ちゃま、お嬢様、そろそろ帰りますよ」
空を見れば日がだいぶ高いところに登っている。そろそろおやつの時間だ。
アリサはサクサク子供たちを捕獲し、二人を両方のわきに破産で馬車まで連れてきた。
「足が速いのね」
シンシアは驚いたように目を見開いている。
それにむしろアリサの方が驚いた。アリサは自分が足が速いという自覚はなかった。周りにアリサよりすばしこい人間はずっと多かったからだ。
「そうですか?むしろ坊ちゃんは運動不足では、うちの近所の連中に比べれば格段に足が遅いですよ」
シンシアは眼を見開く。
「まあ、どうしましょう、旦那様に相談してみるべきかしら」
そしてアリサからマティアスの身体を受け取って不安そうな顔をする。
「私に似てしまったのかしら、私は子供の頃よくとろいと言われてきたのよ」
「とろいってほどではないですけど、旦那様にお願いして体を鍛えたほうがいいかもしれませんね」
シンシアがマティアスを、そしてアリサがマティルダを抱えたまま馬車に乗り込んだ。
「いや、ちょっとこの子基準がおかしいと思うわ」
ネリーがため息をつく。
「安心なさってください、奥様、マティアス坊ちゃんは普通です。おそらくアリサの近所の子供はとんでもない俊足に違いありません」
「そうなのかしら」
ネリーが行ってもシンシアは不安そうだった。
「前の候補者は、坊ちゃんたちに全く追いつけなかったんだけど」
ネリーはむしろアリサのずれている感覚こそ問題だという。
「そうなんですかね」
アリサは何となく納得できなかったが表面上は頷くことにした。
この辺りは畑と街になっている場所以外はほとんど森になっている。
国土が山岳地帯で開けた場所がほとんどないサン・シモンより平らな場所は少ないらしい。
だから普通に走れる野原として、これは結構広い方だ。
「この辺りは林業が盛んなんですか?」
「そうね、でも森の奥の木は切ってはいけないとされているの、よくわからないけれど古くからの言い伝えなんですって」
「そうですか、うちの実家の方でもある場所の木は切ってはいけないと言われている場所がありますからそんなもんなんでしょうね」
アリサの実家でそう言われているのはその場所の木々を伐採した後、土砂崩れが起きたからだが。木の根で土砂を抑えているのだからできるだけ根を長く伸ばす木を植えておかなければいけないと学校で習う。
正しい知識はきちんと受け継がれて行くようにとのことだ。おそらく同じような理屈で切ってはいけないという言い伝えがなされたのだが、最初の理屈が失われてしまい。ただ切ってはいけないという慣習だけが残ったのだろう。
まあ、それなら切らない方がいいとアリサは思った。
そんな言い伝えがあること自体、切ると悪いことが起きたのだろうから。
アリサはそれ以上考えるのをやめた。
「お坊ちゃま、お嬢様、そろそろ帰りますよ」
空を見れば日がだいぶ高いところに登っている。そろそろおやつの時間だ。
アリサはサクサク子供たちを捕獲し、二人を両方のわきに破産で馬車まで連れてきた。
「足が速いのね」
シンシアは驚いたように目を見開いている。
それにむしろアリサの方が驚いた。アリサは自分が足が速いという自覚はなかった。周りにアリサよりすばしこい人間はずっと多かったからだ。
「そうですか?むしろ坊ちゃんは運動不足では、うちの近所の連中に比べれば格段に足が遅いですよ」
シンシアは眼を見開く。
「まあ、どうしましょう、旦那様に相談してみるべきかしら」
そしてアリサからマティアスの身体を受け取って不安そうな顔をする。
「私に似てしまったのかしら、私は子供の頃よくとろいと言われてきたのよ」
「とろいってほどではないですけど、旦那様にお願いして体を鍛えたほうがいいかもしれませんね」
シンシアがマティアスを、そしてアリサがマティルダを抱えたまま馬車に乗り込んだ。
「いや、ちょっとこの子基準がおかしいと思うわ」
ネリーがため息をつく。
「安心なさってください、奥様、マティアス坊ちゃんは普通です。おそらくアリサの近所の子供はとんでもない俊足に違いありません」
「そうなのかしら」
ネリーが行ってもシンシアは不安そうだった。
「前の候補者は、坊ちゃんたちに全く追いつけなかったんだけど」
ネリーはむしろアリサのずれている感覚こそ問題だという。
「そうなんですかね」
アリサは何となく納得できなかったが表面上は頷くことにした。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
傭兵アルバの放浪記
有馬円
ファンタジー
変わり者の傭兵アルバ、誰も詳しくはこの人間のことを知りません。
アルバはずーっと傭兵で生きてきました。
あんまり考えたこともありません。
でも何をしても何をされても生き残ることが人生の目標です。
ただそれだけですがアルバはそれなりに必死に生きています。
そんな人生の一幕
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ボッチの少女は、精霊の加護をもらいました
星名 七緒
ファンタジー
身寄りのない少女が、異世界に飛ばされてしまいます。異世界でいろいろな人と出会い、料理を通して交流していくお話です。異世界で幸せを探して、がんばって生きていきます。
神の種《レイズアレイク》 〜 剣聖と5人の超人 〜
南祥太郎
ファンタジー
生まれながらに2つの特性を備え、幼少の頃に出会った「神さま」から2つの能力を授かり、努力に努力を重ねて、剣と魔法の超絶技能『修羅剣技』を習得し、『剣聖』の称号を得た、ちょっと女好きな青年マッツ・オーウェン。
ランディア王国の守備隊長である彼は、片田舎のラシカ地区で起きた『モンスター発生』という小さな事件に取り組んでいた。
やがてその事件をきっかけに、彼を密かに慕う高位魔術師リディア・ベルネット、彼を公に慕う大弓使いアデリナ・ズーハーなどの仲間達と共に数多の国を旅する事になる。
ランディア国王直々の任務を遂行するため、個人、家族、集団、時には国家レベルの問題を解決し、更に心身共に強く成長していく。
何故か老化が止まった美女や美少年、東方の凄腕暗殺者達、未知のモンスター、伝説の魔神、そして全ての次元を超越する『超人』達と出会い、助け合い、戦い、笑い、そして、鼻の下を伸ばしながら ―――
※「小説家になろう」で掲載したものを全話加筆、修正、時々《おまけ》話を追加していきます。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる