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なんだか最近身体が重い、まるで関節が固まったように手足を伸ばすのが億劫だ。
一度など、手が強張ってそのままけいれんを起こした。
「佐藤さん。ちょっと大丈夫?」
社長が、素肌の頭頂部の汗を拭きながら尋ねてきた。
「あ、私のことか、じゃない私のことですか」
パートには佐藤さんがほかに三人いるので、呼ばれても把握に時間がかかる。誰でもいいときは手近にいた佐藤さんが行くことになっている。
「なんだか手が震えていたみたいだけど」
「アルコールはここしばらくご無沙汰ですけど、月に一度飲むかどうかですので中毒とか禁断症状とは関係ないかと」
「いや、それは知ってるけど、以前中毒になった人がいたから、その人は常にアルコール臭がしていたから違うのはわかっている」
思わずとんでもない疑いをもたれたかと焦ったがそれは社長は否定してくれた。
「一度病院に行ったほうがいいよ、脳梗塞は若くてもたまに起きるらしいし」
それってまさか。
社長は年齢からかそれとも健康オタクなのか、その手の病気がらみの教養番組をよく見ているらしい。時々調子の悪そうな人を見つけてはいろいろと啓蒙して病院を勧めてくれる。
しかし脳梗塞、一番若い私にその病名はヘビーすぎる。
いや、最近夢見が悪くて、覚えていないけれど、とても悪い夢を見ている気がする。
目が覚めると覚えていない、ただとても怖くて寂しい夢を見ていた。
「どうしたのお」
なんだかキラキラした目で斎藤さんが私を見ている。
いや、夢見が悪い以外何もありませんて、斎藤さんが期待するような修羅場など一つもないって。
人が調子悪そうにしたくらいで、何かあると期待している。
この調子で縦断爆撃で話のネタを拾うのか。
ああ、周りの先輩たちも目がキラキラしている。
とにかく根性でその日最後まで仕事をした。
今日は、どうしよう、ちょっと料理が重労働な気がする。
いや、気がするじゃないな、今ちょっと体力が足りない。
ポトフにでもしようか、煮込む時間だけはある。
そういうわけで安いすね肉をゲット。ジャガイモも人参もめちゃくちゃ大胆に半分くらいにカットして、焦がした玉ねぎぐらいの手間はかけることにしよう。
ポトフのいいところは煮込み料理なので、胃腸の調子が悪いときにも安心だ。
ポトフにフランスパンとサラダというちょっと手抜きの食事も旦那は無言で食べている。
普段はもうちょっと食卓に会話があるんだけれど。
ポトフはちょっと余ったが、幸い明日はパートは休み、軽くアレンジでもして食べよう。
残ったポトフを深皿に移し、寸胴鍋を洗っていると、普段なら聞こえるテレビの音が聞こえない。
「どうしたの?」
泡だらけのスポンジを置いてちょっとリビングを除いた。
旦那は本を読んでいた。
「何、それ」
いや、旦那は読書家で、休日はゆっくり読書を楽しむのが普通だけど、なんだか変だなと思った。
何かが普段と違う。
「なんでもないよ」
ふと見えたタイトルは「未来のイブ」
あらすじだけ聞いてなんか嫌な話だなって思ったんだよね。
一度など、手が強張ってそのままけいれんを起こした。
「佐藤さん。ちょっと大丈夫?」
社長が、素肌の頭頂部の汗を拭きながら尋ねてきた。
「あ、私のことか、じゃない私のことですか」
パートには佐藤さんがほかに三人いるので、呼ばれても把握に時間がかかる。誰でもいいときは手近にいた佐藤さんが行くことになっている。
「なんだか手が震えていたみたいだけど」
「アルコールはここしばらくご無沙汰ですけど、月に一度飲むかどうかですので中毒とか禁断症状とは関係ないかと」
「いや、それは知ってるけど、以前中毒になった人がいたから、その人は常にアルコール臭がしていたから違うのはわかっている」
思わずとんでもない疑いをもたれたかと焦ったがそれは社長は否定してくれた。
「一度病院に行ったほうがいいよ、脳梗塞は若くてもたまに起きるらしいし」
それってまさか。
社長は年齢からかそれとも健康オタクなのか、その手の病気がらみの教養番組をよく見ているらしい。時々調子の悪そうな人を見つけてはいろいろと啓蒙して病院を勧めてくれる。
しかし脳梗塞、一番若い私にその病名はヘビーすぎる。
いや、最近夢見が悪くて、覚えていないけれど、とても悪い夢を見ている気がする。
目が覚めると覚えていない、ただとても怖くて寂しい夢を見ていた。
「どうしたのお」
なんだかキラキラした目で斎藤さんが私を見ている。
いや、夢見が悪い以外何もありませんて、斎藤さんが期待するような修羅場など一つもないって。
人が調子悪そうにしたくらいで、何かあると期待している。
この調子で縦断爆撃で話のネタを拾うのか。
ああ、周りの先輩たちも目がキラキラしている。
とにかく根性でその日最後まで仕事をした。
今日は、どうしよう、ちょっと料理が重労働な気がする。
いや、気がするじゃないな、今ちょっと体力が足りない。
ポトフにでもしようか、煮込む時間だけはある。
そういうわけで安いすね肉をゲット。ジャガイモも人参もめちゃくちゃ大胆に半分くらいにカットして、焦がした玉ねぎぐらいの手間はかけることにしよう。
ポトフのいいところは煮込み料理なので、胃腸の調子が悪いときにも安心だ。
ポトフにフランスパンとサラダというちょっと手抜きの食事も旦那は無言で食べている。
普段はもうちょっと食卓に会話があるんだけれど。
ポトフはちょっと余ったが、幸い明日はパートは休み、軽くアレンジでもして食べよう。
残ったポトフを深皿に移し、寸胴鍋を洗っていると、普段なら聞こえるテレビの音が聞こえない。
「どうしたの?」
泡だらけのスポンジを置いてちょっとリビングを除いた。
旦那は本を読んでいた。
「何、それ」
いや、旦那は読書家で、休日はゆっくり読書を楽しむのが普通だけど、なんだか変だなと思った。
何かが普段と違う。
「なんでもないよ」
ふと見えたタイトルは「未来のイブ」
あらすじだけ聞いてなんか嫌な話だなって思ったんだよね。
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