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呉羽という女
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気分が悪い、胃のあたりに慢性的な不快感を感じる。
少々発熱したようだ、掌がいつもより赤い。
こめかみのあたりがずきずきと痛む。鼓動のリズムで痛みの強弱がある。そしてその鼓動もいつもより早い。
この程度の体調不良など無視できるが、辛くないわけではない。
手の甲で軽く汗ばんだ額をぬぐう。
ホームセンターで買ってきたものは取り上げられてしまった。
まったくこうも早く拘束される予定ではなかったのに。
佐藤は少しだけ呉羽を恨めしく思った。
不確定要素が一つはいるたびに計算は狂う。
それで言えば呉羽は不確定要素の塊だ。呉羽の素性はすでに調べている。休職中の事務員に過ぎない。
「とはいえ、民間人は早めに救出しないとねえ」
厄介ごとは増えていく。最初に思ったがこの仕事今回は特にひどい。
ゆかりは再び電話を手にした。
「山田君。どうしたの、ええお母さんがいない?」
高校生にもなってと思うが、先に病院に運び込まれたはずの母親が付いていないといわれて半泣きになっている。
もちろん山田さんは帰っていないし、呉羽も佐藤も戻ってこない。
「どうしよう、もしかしてこれ警察案件?」
そう思ったが、どう説明していいのかというところで思考が交錯する。
呉羽が山田さんを誘拐した、それはあり得ない。宿帳を見た限りでも普通の会社員がパートの中年女性をどうして誘拐するのだ。
そして様子を見に行った公務員がどうかかわっているのだろう。
そこまで考えて、宿帳の勤め先卵を指でなぞる。
「こうなったら確認してみるしかない」
声に出して呟いてからおもむろに勤め先のナンバーにかけてみた。
『はいyk総合総社でございます』
電子音による音楽と録音と思われる音声が流れた。
その声に導かれるままに問い合わせのナンバーを押した。
そしてだいぶ待たされた後にようやく人間の肉声と思われる声で応答がもらえた。
「あの、N町ホテルのフロント、磯野と申します、そちらに大貫呉羽という方はいらっしゃいますか?」
「あの、大貫は今休職中で」
「はい存じております。実は大貫様が外出された後、所定の時間まで戻らなくて、その」
それ以上の説明は上手く頭の中でまとまらない、しかし電話の向こうでひとが息をのんだのが分かった。
「行方が分からないんですか、それならすぐに警察に連絡してください」
随分と勢い込んだ様子だ。
「あの?」
「そちらに海や崖がありますか?」
言われて近所の地理を思い出す。
「はいございます」
この町は海岸沿いにあり。海沿いにちょっと高い山があり、海を臨める公園になっている。
「うわあ、やっぱり」
向こうもいろいろ混乱しているようだ。
「あの子、婚約者に捨てられてショックで休業してるのよ、だから早めに警察に行って」
「はいわかりました」
ゆかりにそれ以外何が言えよう。
少々発熱したようだ、掌がいつもより赤い。
こめかみのあたりがずきずきと痛む。鼓動のリズムで痛みの強弱がある。そしてその鼓動もいつもより早い。
この程度の体調不良など無視できるが、辛くないわけではない。
手の甲で軽く汗ばんだ額をぬぐう。
ホームセンターで買ってきたものは取り上げられてしまった。
まったくこうも早く拘束される予定ではなかったのに。
佐藤は少しだけ呉羽を恨めしく思った。
不確定要素が一つはいるたびに計算は狂う。
それで言えば呉羽は不確定要素の塊だ。呉羽の素性はすでに調べている。休職中の事務員に過ぎない。
「とはいえ、民間人は早めに救出しないとねえ」
厄介ごとは増えていく。最初に思ったがこの仕事今回は特にひどい。
ゆかりは再び電話を手にした。
「山田君。どうしたの、ええお母さんがいない?」
高校生にもなってと思うが、先に病院に運び込まれたはずの母親が付いていないといわれて半泣きになっている。
もちろん山田さんは帰っていないし、呉羽も佐藤も戻ってこない。
「どうしよう、もしかしてこれ警察案件?」
そう思ったが、どう説明していいのかというところで思考が交錯する。
呉羽が山田さんを誘拐した、それはあり得ない。宿帳を見た限りでも普通の会社員がパートの中年女性をどうして誘拐するのだ。
そして様子を見に行った公務員がどうかかわっているのだろう。
そこまで考えて、宿帳の勤め先卵を指でなぞる。
「こうなったら確認してみるしかない」
声に出して呟いてからおもむろに勤め先のナンバーにかけてみた。
『はいyk総合総社でございます』
電子音による音楽と録音と思われる音声が流れた。
その声に導かれるままに問い合わせのナンバーを押した。
そしてだいぶ待たされた後にようやく人間の肉声と思われる声で応答がもらえた。
「あの、N町ホテルのフロント、磯野と申します、そちらに大貫呉羽という方はいらっしゃいますか?」
「あの、大貫は今休職中で」
「はい存じております。実は大貫様が外出された後、所定の時間まで戻らなくて、その」
それ以上の説明は上手く頭の中でまとまらない、しかし電話の向こうでひとが息をのんだのが分かった。
「行方が分からないんですか、それならすぐに警察に連絡してください」
随分と勢い込んだ様子だ。
「あの?」
「そちらに海や崖がありますか?」
言われて近所の地理を思い出す。
「はいございます」
この町は海岸沿いにあり。海沿いにちょっと高い山があり、海を臨める公園になっている。
「うわあ、やっぱり」
向こうもいろいろ混乱しているようだ。
「あの子、婚約者に捨てられてショックで休業してるのよ、だから早めに警察に行って」
「はいわかりました」
ゆかりにそれ以外何が言えよう。
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