貴方は誰ですか

karon

文字の大きさ
上 下
12 / 21

学園祭二日目 2

しおりを挟む
 発表のない時間は適当に暇をつぶすことになっていた。最近はやりの飲食店が庭園に出店に入るようになってからそうした暇つぶしにお茶とお菓子を楽しむことが習慣となっている。
 私たちはお茶とスコーンを手におしゃべりを楽しんでいた。
 もちろんその飲食店の店主の娘が偉そうにあたりを睥睨していたが。
 アリス・ベーカリーさんのお父様はいわゆるたたき上げ、街のパン屋から規模を大きくし貴族御用達の料理店をいくつも立てた立志伝中のお方だ。その晩年の結婚でできたアリスはかなりブルジョワの中で鼻っ柱が強い。
「でも美味しいのよね」
 メディアは赤いタルトを食べて呟く。
 実際美味しい。新鮮なチーズのケーキは感動モノのおいしさだ。最近ちょっとした贈り物にアリスさんちのお菓子が使われている。実際このお菓子は愛娘の名をとってアリスシリーズと呼ばれているのだ。
「あら、ジャネットさんじゃない」
 アリスさんはちょっとまあ、見た目はちょっと、残念だ。
 人の悪口を言うのはあまり好きではないが。
 しかし、食をつかさどるブルジョワ、人は食べることなく生きることはできないため態度は結構大きい。
「ジャネットさん、最近頑張っているみたいね」
「発表のことですか?」
 ジャネットはそれに関しては頑張っていた。
「違うわよ、男、ガキみたいな顔してやるわね」
 意味が分からない。
「別に男関係は今までと変わらないですよ」
 将来の婿候補である従兄弟やまた従姉妹たちとはそれなりの交流を持っているがそれ以外の男関係など全く記憶にない。
 しかし、昨日のあの男を思い出す。
 もしかしなくてもあの男高位貴族なんじゃないだろうか。向こうから告白されたら貴族ですらないブルジョワの娘に選択の自由などないとか思っているとか。
 その場合すでに自分の女呼ばわりしてあっちこっちに言いふらしているとか。
 私の血は上がったり下がったりで大忙しだ。こみあげてくる怒りと不安で頭がくらくらしてくる。
「大丈夫?」
 さすがに私の顔色がひどくなったのに心配になったのかマリアンヌは私は何とか立ち上がった。
「戦うつもりだ」
 私はきっちりとあの男に言うことにした。
「お前なんて大嫌いだ」
 は? とマリアンヌが顔を引きつらせた。
「あの男、たとえ高位貴族でもぶんなぐってやる」
「ああ、例の男?」
 私は次に来たときは、ぶんなぐる。素手だけでありがたいと思え。
「あの男がいらんことを言いふらしたせいで私はいろんな目にあってきたわけだわ」
「多分そうでしょうね」
「なになにそれ」
 アリスさんは喜々として私に詳しい話を話すように言った。
 そして私はすべてを話したわけだ。アリスさんがこの話を面白おかしく言いふらしてくれることを期待して。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悲しいことがあった。そんなときに3年間続いていた彼女を寝取られた。僕はもう何を信じたらいいのか分からなくなってしまいそうだ。

ねんごろ
恋愛
大学生の主人公の両親と兄弟が交通事故で亡くなった。電話で死を知らされても、主人公には実感がわかない。3日が過ぎ、やっと現実を受け入れ始める。家族の追悼や手続きに追われる中で、日常生活にも少しずつ戻っていく。大切な家族を失った主人公は、今までの大学生活を後悔し、人生の有限性と無常性を自覚するようになる。そんな折、久しぶりに連絡をとった恋人の部屋を心配して訪ねてみると、そこには予期せぬ光景が待っていた。家族の死に直面し、人生の意味を問い直す青年の姿が描かれる。

わがまま妹、自爆する

四季
恋愛
資産を有する家に長女として生まれたニナは、五つ年下の妹レーナが生まれてからというもの、ずっと明らかな差別を受けてきた。父親はレーナにばかり手をかけ可愛がり、ニナにはほとんど見向きもしない。それでも、いつかは元に戻るかもしれないと信じて、ニナは慎ましく生き続けてきた。 そんなある日のこと、レーナに婚約の話が舞い込んできたのだが……?

父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました

四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。 だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!

失礼な人のことはさすがに許せません

四季
恋愛
「パッとしないなぁ、ははは」 それが、初めて会った時に婚約者が発した言葉。 ただ、婚約者アルタイルの失礼な発言はそれだけでは終わらず、まだまだ続いていって……。

義母の秘密、ばらしてしまいます!

四季
恋愛
私の母は、私がまだ小さい頃に、病気によって亡くなってしまった。 それによって落ち込んでいた父の前に現れた一人の女性は、父を励まし、いつしか親しくなっていて。気づけば彼女は、私の義母になっていた。 けれど、彼女には、秘密があって……?

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

彼女の浮気相手からNTRビデオレターが送られてきたから全力で反撃しますが、今さら許してくれと言われてももう遅い

うぱー
恋愛
彼女の浮気相手からハメ撮りを送られてきたことにより、浮気されていた事実を知る。 浮気相手はサークルの女性にモテまくりの先輩だった。 裏切られていた悲しみと憎しみを糧に社会的制裁を徹底的に加えて復讐することを誓う。 ■一行あらすじ 浮気相手と彼女を地獄に落とすために頑張る話です(●´艸`)ィヒヒ

処理中です...