35 / 41
チャールズ・フォックステリア視点
しおりを挟む
「お前はいったい何を考えているんだ」
何度そう言ってもこいつはへらへらと笑っている。
自分が何をしたのかわかっているんだろうか。こいつは自分の家を潰したんだ。
貴族は家のために存在するといっても過言ではない。そして家の繁栄こそ自分の栄誉だと信じている。家のために家族を犠牲にすることはあっても家族のために家を損ねるなどありえない。
こいつはその家を、自分の家族をその両方を平気で潰した。
「なんでそんなに怒ってるの?」
きょとんとした顔でそいつは答えた。
「だってそっちの思った通りになったんじゃないの」
こいつは何もかもわかっていた。自分の出した手紙、その情報があればこちらがグレイハウンド本家に介入し、のっとる理由になると。わからないのはなぜむざむざと乗っ取らせるような真似をしたのかだ。
「ほしかったものが手に入ったんでしょう、なんで怒るの?」
「お前はグレイハウンドの家をどう思っていたんだ?」
「犯罪の温床となった腐った家」
その言葉は棒読みだ。
「何とかしようと思わなかったのか?」
「したよ、温床とした張本人を始末すればいい、でもそれは未成年の俺の手に余るからね、大人を頼っただけだよ」
のっぺりとした、整った顔。まるで不出来な人形のようだ。今までは愚鈍のあかしだと思っていたが今はこいつが本当に不気味でしょうがない。
「それに、俺だって自分の身が大切だしね」
気づかれてないと思った?
声に出さないささやきを俺は確かに聞いた。
いずれ俺がこいつを始末することを夢見ていたことをこいつは気が付いていたというのか。
「俺が何も持っていなくなったら、そっちも俺に手出しする理由がなくなるでしょ」
愚鈍で、だからこそ理解しがたい、一応従兄弟の間柄のこいつを見ていると無性に殴りたくなった。
「お前、これからどうするつもりだ」
無能で役立たずなお前が家から放り出されてどうしようもないだろう。
「まあ、最低限学園は卒業できるでしょ、さすがにあれを表ざたにできないし、当主は病のためとか言って交代させて、そのあと俺を放り出すかな、その場合働くための資格とか今一生懸命採ってるから、そのあたりは自分でやるよ」
「お前、いつからこの計画を温めていた?」
きょとんとした顔で、あいつは呟く。
「え、思いついたら即実行したけど」
じゃあなんで家を放り出された後の生活方法なんて考えているんだ。
「俺が考えていたのは家出だったから、でも、あの母親が、兄憎さに兄の恋人と結婚させようとしたからね、そんな真っ暗な人生ごめんだし」
それは俺も分かるが。もともとそうしたことを考えていたとしか思えない。
「家も家族もなんだと思っていたんだ」
「決まっているでしょう、大嫌いなものだよ、ずっとなくなればいいと思っていたからね」
そいつは年齢よりはるかに老いた顔でそう言った。
「家は貴族にとって」
「何を犠牲にしてもいいものだよね、自分以外。家なんてね犠牲にされた方にしてみれば呪いの塊なんだよ」
あいつはそう言って外を見た。
さっきあいつの母親が連れて行かれた方向だった。
何度そう言ってもこいつはへらへらと笑っている。
自分が何をしたのかわかっているんだろうか。こいつは自分の家を潰したんだ。
貴族は家のために存在するといっても過言ではない。そして家の繁栄こそ自分の栄誉だと信じている。家のために家族を犠牲にすることはあっても家族のために家を損ねるなどありえない。
こいつはその家を、自分の家族をその両方を平気で潰した。
「なんでそんなに怒ってるの?」
きょとんとした顔でそいつは答えた。
「だってそっちの思った通りになったんじゃないの」
こいつは何もかもわかっていた。自分の出した手紙、その情報があればこちらがグレイハウンド本家に介入し、のっとる理由になると。わからないのはなぜむざむざと乗っ取らせるような真似をしたのかだ。
「ほしかったものが手に入ったんでしょう、なんで怒るの?」
「お前はグレイハウンドの家をどう思っていたんだ?」
「犯罪の温床となった腐った家」
その言葉は棒読みだ。
「何とかしようと思わなかったのか?」
「したよ、温床とした張本人を始末すればいい、でもそれは未成年の俺の手に余るからね、大人を頼っただけだよ」
のっぺりとした、整った顔。まるで不出来な人形のようだ。今までは愚鈍のあかしだと思っていたが今はこいつが本当に不気味でしょうがない。
「それに、俺だって自分の身が大切だしね」
気づかれてないと思った?
声に出さないささやきを俺は確かに聞いた。
いずれ俺がこいつを始末することを夢見ていたことをこいつは気が付いていたというのか。
「俺が何も持っていなくなったら、そっちも俺に手出しする理由がなくなるでしょ」
愚鈍で、だからこそ理解しがたい、一応従兄弟の間柄のこいつを見ていると無性に殴りたくなった。
「お前、これからどうするつもりだ」
無能で役立たずなお前が家から放り出されてどうしようもないだろう。
「まあ、最低限学園は卒業できるでしょ、さすがにあれを表ざたにできないし、当主は病のためとか言って交代させて、そのあと俺を放り出すかな、その場合働くための資格とか今一生懸命採ってるから、そのあたりは自分でやるよ」
「お前、いつからこの計画を温めていた?」
きょとんとした顔で、あいつは呟く。
「え、思いついたら即実行したけど」
じゃあなんで家を放り出された後の生活方法なんて考えているんだ。
「俺が考えていたのは家出だったから、でも、あの母親が、兄憎さに兄の恋人と結婚させようとしたからね、そんな真っ暗な人生ごめんだし」
それは俺も分かるが。もともとそうしたことを考えていたとしか思えない。
「家も家族もなんだと思っていたんだ」
「決まっているでしょう、大嫌いなものだよ、ずっとなくなればいいと思っていたからね」
そいつは年齢よりはるかに老いた顔でそう言った。
「家は貴族にとって」
「何を犠牲にしてもいいものだよね、自分以外。家なんてね犠牲にされた方にしてみれば呪いの塊なんだよ」
あいつはそう言って外を見た。
さっきあいつの母親が連れて行かれた方向だった。
37
お気に入りに追加
338
あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞

異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト)
前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した
生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ
魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する
ということで努力していくことにしました

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる