お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon

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不快の花畑

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 うちの母親はいったい何を言っているのだろう。
 俺の脳みそは母親の言葉を思わず素通りさせてしまったようだ。
「シュナウザー家に結婚を申し込んだのよ」
 それを聞いたときはやらかしてくれたと思わず頭痛を覚えたが、次の言葉を聞いて思考は真っ白に漂白されてしまった。
「長女のディアナ嬢をね」
 ディアナ嬢って、あの兄の恋人のはずですよね。
「なんでディアナ嬢?」
 俺の声はひっくり返ってまともに発音できていない。
「貴方が親しくしていたのは末のルナ嬢でしょう。でもやっぱり末っ子って、ちょっと格式が低いじゃない」
 もっと格式の低い令嬢に縁談を断られたことを俺は知っている。
「お母様、そういう問題じゃありませんが」
 俺は母親のいかにも無邪気な顔を見た。
 どんなに美しくても中年女性のここまで幼児じみた顔は薄気味悪い。
「私がディアナ嬢を押したのはね、マキシミリアンがディアナ嬢に求婚しているって話を聞いたからよ」
 おい、知っててか?
「これでマキシミリアンが結婚できなかったらそれはとてもうれしいことよ、私、あの子が一人ぼっちで朽ち果ててくれたらとっても幸せな気分になるわ」
 腐ったことを口走る不本意ながら母親を俺はじっとりと見た。
 母親は前妻さんのことを憎んでいる。それこそ親でも殺されたのかと思うばかりに。残念ながら、母方の祖父母は前妻さんの死から数年後亡くなっている。
 この性根の腐りはてた娘をどう思っていたのか俺は知らない。
 俺には母方の祖父母の記憶はほとんどない。多分没交渉だったのだろう。
 ついでに父方の祖父母は俺の生まれる大分前に亡くなっている。もし生きていたらあのあほな父親の愚行を止めてくれただろうか。
 ああ聞きたくねえ、もともと母親のほうが父親と付き合っていたのに身分の高い正妻として後から入ってきたとか。
 そういうのは文句は父親に言えよ。結婚を決めたのは父親なんだから。
 そういうの二股っていうんだぞ。
「だからね、デイビッドもディアナ嬢と結婚してね、ルナ嬢と姉妹なんだからどっちも同じようなものでしょう」
 それ、あんたがされたということと全く同じことをルナ嬢にしているってわかってる?まあルナ嬢は俺の恋人じゃねえけど。
 とにかく俺はシュナウザー侯爵の良識に期待することにした。
 いくらなんでもすでに付き合っている恋人のいる娘と仲を引き裂いてまで俺みたいな出来損ないに娘を預けようなんて気を起こさないだろうと。
 たぶん学園に戻ったらルナの方から接触があるだろう。とにかく善後策を話し合わないと。
「ああデイビッド、あなただってマキシミリアンが不幸になったら幸せでしょう、だってお前はお母様の子なんだから」
 本当に不本意ながらね。
 俺は内心で盛大に舌打ちした。

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