お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

兄よ

　セントバーナード先輩はあの家には娘しかいないと言っていたが、調べてみると三人姉妹。つまり一人残してあとは嫁に出す予定というわけだ。
　ならばまだ希望はある。
　跡取りになるのは普通長女だが、現当主の年齢によっては末っ子という可能性もある。
　とにかく兄が親しくしているという令嬢の顔を確かめないと。
　そういうわけで兄の周りを探らなければ。
　皮肉なことに、これにははぐれ物情報網がとっても役に立った。
　いわゆる裏の情報が目白押し。
　あんまり人には言えない事情なんかの噂は俺たちはぐれ物の中を縦横無尽に通りまくっていたりする。
　そんなわけで、兄が今どういう交友関係を築いていいるか、今まで無関心だったが調べないでいるわけにはいかなかったのだが。
　兄よ、ちょっと華々しすぎないか？
　兄、王族の側近になっていた。
　で、その王族、王の三男坊のジェスター殿下と王の甥、つまり王子様の従妹に当たるアンリ様、その御学友になっていやがった。
　俺のはぐれ者の集まりとはえらい違いだな。
　もちろん側近は兄だけでなく公爵家や侯爵家の御曹司の皆様がひしめいている。
　そんな中で知り合ったのがくだんの兄の想い人というわけだ。
　　シュナウザー侯爵家の長女ディアナ嬢。
　　小柄で華奢な見るからに守ってあげたいという気持ちがこみあげてくる大きな垂れ気味の紺色の瞳。まるでベールのように清らかなけぶるような銀髪。
　お人形のように可愛いを体現したようなお嬢様。
　年齢は兄より下の十六歳。
　すぐ下に双子の妹セレス嬢がいるそうだ。
　そして末のルナ嬢は俺と同い年だが、男女別のクラスなので俺との接点はない。
　情報収集のため何とか接点をつけられないだろうか。
　そうメアリアンに相談したらメアリアンと同じクラスだそうだ。
　俺とレオナルド、ルーファスは同じクラスだが、メアリアンは別のクラス。女子なので当たり前だが。
　そんなわけで、ルナ嬢の詳しい話はメアリアンに頼むことにした。
　しかし、双子というのがネックだよな。どっちが婿をとってもありという話だ。
　セレス嬢に恋人がいて、そいつが次男以下だととてもうれしいんだが。
　学園では自由恋愛はあまり奨励されていない。いやしくも貴族たるもの政略結婚が主流だからだ。
　実際あの母親も俺の相手をいろいろ吟味しているらしい。最も俺の立場の不安定さから話が決まらないだけで。
　ついでに兄の分は妨害しまくっている。
　だから兄は自力で見つけたんだろうか。
　可憐な美少女と逢引する兄を物陰からのぞいているとつくづく自分が惨めになってきた。