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エア不良2
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レオナルドの奏でるバイオリンを聞きながら、俺は皿洗いをやっていた。
貧しい男爵家の子弟は休みの日はこうして小遣い稼ぎに励んでいるのだという。
ルーファスの伝手を頼って、俺はこうして職を得ることができた。
と言っても学園に通う子弟は休日しか働けない。そしてクラスごとに休日外れる。そういうわけでローテーションを組んで順番に働くことになっていた。
俺はまあ下っ端の最初の仕事を覚えるようにというわけで皿洗いをやっている。
俺以外の皿洗いは明らかに俺より年下の子供だった。
やせてがりがりで手足は傷だらけだ。おそらく貧しい下町の子供なのだろう。
自分の食い扶持を稼ぐために働いているのだろう。
俺以外のアルバイトは給仕をやっている。
俺はあと数回皿洗いをした後給仕の仕事を任されることになるらしい。
レオナルドは音楽専攻なので楽器の演奏を学んでいる。
酒場の彩りだろうか。
冷たい水に手をずっと突っ込んでいると指先が軽く痛み出した。
今はかなり寒い季節だ。皿洗いは簡単な仕事と思っていたが結構な苦行だ。
俺は詰みあがる皿を横目に休憩時間を待った。
そして、俺はやっとのことで深夜に仕事を終わらせた。
酒場なので、揮発したアルコールが身体に染みついている。
だが逆に都合がいい。これなら俺は十四にして酒場で酒におぼれている不良少年に見えるはずだ。
実は母親付きの一番新米の小間使いに小銭をつかませてある。
この金額で俺の今日の稼ぎの半分は消える。実に空しい。
だが、もともとの俺のたくらみは家を継げない不良少年として親に見限られることなので、そのうちあの小間使いにはうっかり口を滑らせてもらいたいものだ。
そして俺は大きく伸びをした。ずっと同じ姿勢でいたので、身体が凝り固まってしまった。
レオナルドは俺の前で指をもんでいる。
「やっぱりあんなに長時間弾き続けたのは練習でもなかったな」
指が攣ってしまったようだ。
「金を稼ぐって大変だね」
生まれて初めての労働と、生まれて初めて見た俺の今まで知らなかった世界。いつもならもう寝ている時間だけれど今日はちょっと寝付かれそうにない。
身体は疲れ切っているのになんだか頭の中は熱くなっている。
「こういう仕事を知っているということはルーファスも働いているのかな」
「たまに変わってくれって言われるくらいで、専業で働いていないみたいだぞ」
「そうなんだ」
俺は頭を上げて星を見た。
すっかりのぼせ上っている。
家につくとあらかじめ言い含めておいた小間使いが俺を待っていた。
「あの坊ちゃま?」
「何だよ」
俺の服に染みついた酒の匂いに気が付いたのか顔をしかめている。念のため袖口にも少し酒を垂らしておいた。
「なんだあよ」
俺は酒でろれつが回らないふりをしてあえておかしいイントネーションで話して見せた。
「じゃあ、明日も頼むなあ、金をもらっといて文句言うなよぉ」
あえて語尾を伸ばす。
そして銅貨を数枚相手に押し付けた。
「おまけだ」
そして小間使いがあらかじめ開けておいた勝手口から部屋に戻り、明日の仕事がある夕方までひたすら寝ることにした。
貧しい男爵家の子弟は休みの日はこうして小遣い稼ぎに励んでいるのだという。
ルーファスの伝手を頼って、俺はこうして職を得ることができた。
と言っても学園に通う子弟は休日しか働けない。そしてクラスごとに休日外れる。そういうわけでローテーションを組んで順番に働くことになっていた。
俺はまあ下っ端の最初の仕事を覚えるようにというわけで皿洗いをやっている。
俺以外の皿洗いは明らかに俺より年下の子供だった。
やせてがりがりで手足は傷だらけだ。おそらく貧しい下町の子供なのだろう。
自分の食い扶持を稼ぐために働いているのだろう。
俺以外のアルバイトは給仕をやっている。
俺はあと数回皿洗いをした後給仕の仕事を任されることになるらしい。
レオナルドは音楽専攻なので楽器の演奏を学んでいる。
酒場の彩りだろうか。
冷たい水に手をずっと突っ込んでいると指先が軽く痛み出した。
今はかなり寒い季節だ。皿洗いは簡単な仕事と思っていたが結構な苦行だ。
俺は詰みあがる皿を横目に休憩時間を待った。
そして、俺はやっとのことで深夜に仕事を終わらせた。
酒場なので、揮発したアルコールが身体に染みついている。
だが逆に都合がいい。これなら俺は十四にして酒場で酒におぼれている不良少年に見えるはずだ。
実は母親付きの一番新米の小間使いに小銭をつかませてある。
この金額で俺の今日の稼ぎの半分は消える。実に空しい。
だが、もともとの俺のたくらみは家を継げない不良少年として親に見限られることなので、そのうちあの小間使いにはうっかり口を滑らせてもらいたいものだ。
そして俺は大きく伸びをした。ずっと同じ姿勢でいたので、身体が凝り固まってしまった。
レオナルドは俺の前で指をもんでいる。
「やっぱりあんなに長時間弾き続けたのは練習でもなかったな」
指が攣ってしまったようだ。
「金を稼ぐって大変だね」
生まれて初めての労働と、生まれて初めて見た俺の今まで知らなかった世界。いつもならもう寝ている時間だけれど今日はちょっと寝付かれそうにない。
身体は疲れ切っているのになんだか頭の中は熱くなっている。
「こういう仕事を知っているということはルーファスも働いているのかな」
「たまに変わってくれって言われるくらいで、専業で働いていないみたいだぞ」
「そうなんだ」
俺は頭を上げて星を見た。
すっかりのぼせ上っている。
家につくとあらかじめ言い含めておいた小間使いが俺を待っていた。
「あの坊ちゃま?」
「何だよ」
俺の服に染みついた酒の匂いに気が付いたのか顔をしかめている。念のため袖口にも少し酒を垂らしておいた。
「なんだあよ」
俺は酒でろれつが回らないふりをしてあえておかしいイントネーションで話して見せた。
「じゃあ、明日も頼むなあ、金をもらっといて文句言うなよぉ」
あえて語尾を伸ばす。
そして銅貨を数枚相手に押し付けた。
「おまけだ」
そして小間使いがあらかじめ開けておいた勝手口から部屋に戻り、明日の仕事がある夕方までひたすら寝ることにした。
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