鳥籠王子

karon

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家族の利用価値

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 男が言う通り御婆様とお母様が交代で俺に面会するようになっていた。
 御婆様は今はこの国の一番大きな教会で司祭をやっているそうだ。
 俺は祈ったことは無い。別に周りの人間も俺に強要しようとはしなかった。そう言えば御婆様は俺に宗教的な講義をするようになってきた。
 神様とは何か、人の祈りとか聞いていてもチンプンカンプンでよくわからない。
「祈りとはわかるものではありません、心にしみわたらせるものなのです。何度も聞いて心に祈りの言葉をしみこませなさい」
 そう言って神をあがめる言葉を緩やかな抑揚で何度も繰り返すので俺は危うく寝そうになること再三だった。
 腕に爪を立てて襲い来る睡魔と戦い続ける。
 それでも御婆様が帰った後、神様の名前や教義なんかを紙にメモしておいた。
 そしてお母様はこの国で外交関連の仕事をする夫と暮らしているようだ。
 俺にはお母さまの産んだ弟が一人、妹が二人いるらしい。
 しばらくすれば俺のところに連れてくると言われた。弟と妹たちはまだ王宮に上がれる年齢ではないそうなのでその年頃になるまで連れてくることは許されないそうだ。
 俺はさほど興味はなかった。だが、お母様の夫に当たる人間は外交の仕事をしているという。そのあたりは情報としてほしい。
「お母様のお父様は何をしているんですか」
 お母様のお父様はやはりこの国の貴族であり、領主だ。それも国境沿いの。それも情報として確保しておくべきなのではないだろうか。
 情報は力であり、今は情報が足りないと男は言っていた。だとすればお母様からそのお父様そしてその兄弟と夫につながる伝手を求めることはそれほどまずいことではないだろう。
「お母様、俺はその人たちに会いたいです。弟や妹たちに会えないならその人たちに合わせてもらえないでしょうか」
 その言葉に涙を流さんばかりにお母さまは手を上げて喜んだ。
「ありがとう、私を家族だと思ってくれるのね」
 そして俺に抱き着いてしばらく泣き続けた。
「もう俺にはお母さましかいないんです」
 俺はそう言った。性格似た外部につながる伝手だがそこまでは言わないことにした。
 男は俺の成果に喜んでくれた。
「だが宗教界っていうのも馬鹿にしたもんじゃない」
「そうなの?」
「宗教っていうのはもう一つの権力の形だからな、それに国一つで終わらないこともある」
 俺は具体的な形が見えない。
「宗教っていうのは魂を枷にはめるようなもんだ。その力は端なり現世利益より強いこともある」
 言っている意味が本当にわからない。
「まあ、魂が本当にあるのか半信半疑だった俺も祭壇に無礼を働く気にはなれない程度には強制力はあるな」
「わからないの」
「お前がわからないのは宗教教育を全く受けていないからだな、普通三歳くらいからすり込んでいくもんだ。お前の婆さんが言っていたようにしみこます感じで」
 俺は本当に何を言っているのかわからないが、俺以外の人間にはとても重大なんだなとだけ思った。
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