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天空の地下牢
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アンナとゴロウアキマサは二人別々に監禁された。
多分地下牢何だろうと思割れる石造りの壁に作りつけられたベンチ兼寝台。くるまって寝るための毛布も用意されている。湿っぽくて黴の臭いがするのはやはりここが地下牢だからだろう。
そして、蓋が付いた穴。
穴としか言いようがないが、どうもそこで用足しをしろということだろう。遥か高みから落ちていく排泄物。想像したら何とも言えない気分になった。
壁に一つだけ小さな穴が空いていて、そこはゴロウアキマサの監禁場所に通じていた。
話を聞いた限りではゴロウアキマサの待遇も似たり寄ったりだという。
鉄道ができれば、竜騎士の価値が落ちるというのが向こうの言い分らしい。
それは分かるような気がした。アンナの国の軍隊も、銃という便利なものができたら県は必要最低限しか使わなくなった。
便利なものができれば先に使われていたものが使われなくなるのはよくあることだ。
とはいえ、すでに計画のかなり深いところに入り込んでいるのではないだろうかとアンナは思っている。
今更無関係を装えるはずもな
「これからどうなるのかしら」
「俺たちは人質だ、今は殺されないだろう。今頃はエドワードに脅迫状が届いているはずだ」
「そうなの」
エドワードが何とかしてくれるのを待つしかないようだ。
ゴロウアキマサは計画に必要な人間だから何とか助けてもらえるだろう、だけどアンナもそうなのだろうか。
「計画がとん挫したら、かかった費用はエドワードが被ることになるな」
ゴロウアキマサはそう言って、いろいろとアンナが知らなかったことを教えてくれた。
鉄道計画はエドワードが国に話を持ち掛け始動したこと、その予算はエドワードの実家からも出ているが、国もだいぶ出資していること。
鉄道計画がとん挫したらかかわった全員が莫大な借金を背負うことになること。
その内訳にアンナもすでに入っていること。
それを聞いてアンナは冷たい床に頽れた。「
「返す当てなんかないよ」
「俺だってない、地道に働く一般市民が返せる額じゃない」
絶望的な気持ちになりアンナはしくしくと泣き始めた。
「でも、どうして鉄道が嫌なの、鉄道があると便利になるって言ってたのに、近所に鉄道ができないものかって、みんな言ってたのに」
鉄道というすごいものができたという噂はかつてのアンナの周囲にも聞こえてきた。それにあこがれる若者たちもたくさんいたのだ。
「まあ、俺もオカジョウキができたときはすごいもんだと見物に行ったけどなあ」
ゴロウアキマサは何とも言えない顔になる。
そのオカジョウキをもてはやす者もたくさんいたがくさす者もたくさんいたのだ。
新しいものができれば歓迎するものもいれば反発する者もいる。最近はそうしたものに会わなかったから忘れていたが。
「オカミに直接つながってる組織だからなあ」
「オカミって何よ」
「国の偉い人ってやつ」
「ああ、それはまあ」
アンナもゴロウアキマサも国に直結した武装集団の質の悪さは身に染みている。
「その通りだ、我々は貴様らの詐術を暴きその罪を償わせる」
壁に仕込まれている管から、声が聞こえた。
送声管というものだ、もともとエドワードの仲間が教えたものだが、それを使っていながら別のものは詐欺だとか、あまりに都合のいい物言いだ。
多分地下牢何だろうと思割れる石造りの壁に作りつけられたベンチ兼寝台。くるまって寝るための毛布も用意されている。湿っぽくて黴の臭いがするのはやはりここが地下牢だからだろう。
そして、蓋が付いた穴。
穴としか言いようがないが、どうもそこで用足しをしろということだろう。遥か高みから落ちていく排泄物。想像したら何とも言えない気分になった。
壁に一つだけ小さな穴が空いていて、そこはゴロウアキマサの監禁場所に通じていた。
話を聞いた限りではゴロウアキマサの待遇も似たり寄ったりだという。
鉄道ができれば、竜騎士の価値が落ちるというのが向こうの言い分らしい。
それは分かるような気がした。アンナの国の軍隊も、銃という便利なものができたら県は必要最低限しか使わなくなった。
便利なものができれば先に使われていたものが使われなくなるのはよくあることだ。
とはいえ、すでに計画のかなり深いところに入り込んでいるのではないだろうかとアンナは思っている。
今更無関係を装えるはずもな
「これからどうなるのかしら」
「俺たちは人質だ、今は殺されないだろう。今頃はエドワードに脅迫状が届いているはずだ」
「そうなの」
エドワードが何とかしてくれるのを待つしかないようだ。
ゴロウアキマサは計画に必要な人間だから何とか助けてもらえるだろう、だけどアンナもそうなのだろうか。
「計画がとん挫したら、かかった費用はエドワードが被ることになるな」
ゴロウアキマサはそう言って、いろいろとアンナが知らなかったことを教えてくれた。
鉄道計画はエドワードが国に話を持ち掛け始動したこと、その予算はエドワードの実家からも出ているが、国もだいぶ出資していること。
鉄道計画がとん挫したらかかわった全員が莫大な借金を背負うことになること。
その内訳にアンナもすでに入っていること。
それを聞いてアンナは冷たい床に頽れた。「
「返す当てなんかないよ」
「俺だってない、地道に働く一般市民が返せる額じゃない」
絶望的な気持ちになりアンナはしくしくと泣き始めた。
「でも、どうして鉄道が嫌なの、鉄道があると便利になるって言ってたのに、近所に鉄道ができないものかって、みんな言ってたのに」
鉄道というすごいものができたという噂はかつてのアンナの周囲にも聞こえてきた。それにあこがれる若者たちもたくさんいたのだ。
「まあ、俺もオカジョウキができたときはすごいもんだと見物に行ったけどなあ」
ゴロウアキマサは何とも言えない顔になる。
そのオカジョウキをもてはやす者もたくさんいたがくさす者もたくさんいたのだ。
新しいものができれば歓迎するものもいれば反発する者もいる。最近はそうしたものに会わなかったから忘れていたが。
「オカミに直接つながってる組織だからなあ」
「オカミって何よ」
「国の偉い人ってやつ」
「ああ、それはまあ」
アンナもゴロウアキマサも国に直結した武装集団の質の悪さは身に染みている。
「その通りだ、我々は貴様らの詐術を暴きその罪を償わせる」
壁に仕込まれている管から、声が聞こえた。
送声管というものだ、もともとエドワードの仲間が教えたものだが、それを使っていながら別のものは詐欺だとか、あまりに都合のいい物言いだ。
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