異世界に鉄道を引こう

karon

文字の大きさ
上 下
20 / 29

天空の地下牢

しおりを挟む
 アンナとゴロウアキマサは二人別々に監禁された。
 多分地下牢何だろうと思割れる石造りの壁に作りつけられたベンチ兼寝台。くるまって寝るための毛布も用意されている。湿っぽくて黴の臭いがするのはやはりここが地下牢だからだろう。
 そして、蓋が付いた穴。
 穴としか言いようがないが、どうもそこで用足しをしろということだろう。遥か高みから落ちていく排泄物。想像したら何とも言えない気分になった。
 壁に一つだけ小さな穴が空いていて、そこはゴロウアキマサの監禁場所に通じていた。
 話を聞いた限りではゴロウアキマサの待遇も似たり寄ったりだという。
 鉄道ができれば、竜騎士の価値が落ちるというのが向こうの言い分らしい。
 それは分かるような気がした。アンナの国の軍隊も、銃という便利なものができたら県は必要最低限しか使わなくなった。
 便利なものができれば先に使われていたものが使われなくなるのはよくあることだ。
 とはいえ、すでに計画のかなり深いところに入り込んでいるのではないだろうかとアンナは思っている。
 今更無関係を装えるはずもな
「これからどうなるのかしら」
「俺たちは人質だ、今は殺されないだろう。今頃はエドワードに脅迫状が届いているはずだ」
「そうなの」
 エドワードが何とかしてくれるのを待つしかないようだ。
 ゴロウアキマサは計画に必要な人間だから何とか助けてもらえるだろう、だけどアンナもそうなのだろうか。
「計画がとん挫したら、かかった費用はエドワードが被ることになるな」
 ゴロウアキマサはそう言って、いろいろとアンナが知らなかったことを教えてくれた。
 鉄道計画はエドワードが国に話を持ち掛け始動したこと、その予算はエドワードの実家からも出ているが、国もだいぶ出資していること。
 鉄道計画がとん挫したらかかわった全員が莫大な借金を背負うことになること。
 その内訳にアンナもすでに入っていること。
 それを聞いてアンナは冷たい床に頽れた。「
「返す当てなんかないよ」
「俺だってない、地道に働く一般市民が返せる額じゃない」
 絶望的な気持ちになりアンナはしくしくと泣き始めた。
「でも、どうして鉄道が嫌なの、鉄道があると便利になるって言ってたのに、近所に鉄道ができないものかって、みんな言ってたのに」
 鉄道というすごいものができたという噂はかつてのアンナの周囲にも聞こえてきた。それにあこがれる若者たちもたくさんいたのだ。
「まあ、俺もオカジョウキができたときはすごいもんだと見物に行ったけどなあ」
 ゴロウアキマサは何とも言えない顔になる。
 そのオカジョウキをもてはやす者もたくさんいたがくさす者もたくさんいたのだ。
 新しいものができれば歓迎するものもいれば反発する者もいる。最近はそうしたものに会わなかったから忘れていたが。
「オカミに直接つながってる組織だからなあ」
「オカミって何よ」
「国の偉い人ってやつ」
「ああ、それはまあ」
 アンナもゴロウアキマサも国に直結した武装集団の質の悪さは身に染みている。
「その通りだ、我々は貴様らの詐術を暴きその罪を償わせる」
 壁に仕込まれている管から、声が聞こえた。
 送声管というものだ、もともとエドワードの仲間が教えたものだが、それを使っていながら別のものは詐欺だとか、あまりに都合のいい物言いだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【草】限定の錬金術師は辺境の地で【薬屋】をしながらスローライフを楽しみたい!

黒猫
ファンタジー
旅行会社に勤める会社の山神 慎太郎。32歳。 登山に出かけて事故で死んでしまう。 転生した先でユニークな草を見つける。 手にした錬金術で生成できた物は……!? 夢の【草】ファンタジーが今、始まる!!

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

異世界に来ちゃったよ!?

いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。 しかし、現在森の中。 「とにきゃく、こころこぉ?」 から始まる異世界ストーリー 。 主人公は可愛いです! もふもふだってあります!! 語彙力は………………無いかもしれない…。 とにかく、異世界ファンタジー開幕です! ※不定期投稿です…本当に。 ※誤字・脱字があればお知らせ下さい (※印は鬱表現ありです)

【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I
ファンタジー
レティシア=モーリスは転生者である。 しかし、前世の鉄道オタク(乗り鉄)の記憶を持っているのに、この世界には鉄道が無いと絶望していた。 …無いんだったら私が作る! そう決意する彼女は如何にして異世界に鉄道を普及させるのか、その半生を綴る。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...