異世界に鉄道を引こう

karon

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雪遊び

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 エドワードは目星をつけた魔石にそっと触れた。形はデコボコしていびつな丸。大きさは直径一メートル半というところか。人力で運べなくもないが、軽くもないというところだ。
 魔石は内部がまるで水でも入っているように光が揺らいでいる。そして、色彩は虹色、オパールのように多色で光るわけではなく様々色が不規則に鮮やかに現れる。
 なぜこのような揺らぎを見せるのか変色を見せるのかエドワードは知らない。ただ、この魔石が有用だということだけを知っていればいい。
 魔石は割って加工することができない。そのままの形で利用するしかない。割れればあっという間にその力を失いただの石ころに代わってしまう。
 そのため巨大な魔石を利用することはできなかった。大きければ大きいほどその形を損なうことなく運搬することが難しいからだ。
 この難題をどう解くのかそのあたりを知っているのはエドワードだけだ。
「もうそろそろアンナはソーセージやベーコンを作ってくれた頃ですかねえ」
 ベーコンはイギリスの朝の定番料理だ。こちらで作る豚の加工品は何となくエドワードの口に合わない。それなりに裕福な家に生まれたので食べるものが粗末というわけではないのだが。
「塩漬けはちょっといただけませんね、残念ながら料理の知識は私にはない」
 もともとあまりおいしいと言えないイギリス料理、食事に文句をつけようとは思わないが、それでもほんの少しでも郷愁を味わえる料理が食べたくなってもそれは仕方がない。
 毛皮の裏打ち付きのコートの襟を寄せて寒さをしのぐ。
「いいですねえ、ベーコン」
 仲間も軽くよだれを垂らしている。
 魔石はほんのわずかのかけすら許されない。
「要は緩衝材があればいいのですよ」
 エドワードはそう言って、周囲に雪を集めさせた。
「ここは本当にちょうどいい、緩衝材になるものがこんなにたくさんある」
 そう言って周囲を大きく腕で指し示す。それは一面の銀世界。
「まさか、スノーマンを作る要領で?」
「その通りですよ、雪で回りを固め転がして運べばいい」
 エドワードは自信満々な顔でそう言った。
 しばらくはシャベルで雪をかき集めるザクザクという音が続く。
 そして雪を魔石の周囲に厚く張り付けていく。
 凍えそうな寒さの中汗ばむような重労働をどれほどの時間続けたものかようやく周囲に雪を張り付け終えた。
 そして転がしてみる。
 転がしながらそれでも雪を新しい場所に張り付けていく。
 いつしか雪の壁に遮られ、魔石の光も見えなくなっていた。
「これで運べますかね」
 ころころと巨大な雪玉を転がしていく。
「いけます、これなら十分です」
 また一つ、鉄道を作るためのピースがはまった。エドワードは軽く額の汗をぬぐい、巨大な雪玉を撫でた。
「どうしてこんな簡単なことを思いつかなかったんでしょうね」
「平地には雪が降りませんからね、あっちにはスノーマンを作る習慣がないからでしょう」
 雪の降る地域では子供は雪で遊ぶ、そんな経験がこんな形で役に立つとは。そんなことを思いつつ雪玉を転がしていく。
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