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魔石
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竜に乗って、エドワードははるかな山々を見下ろしていた。
高い標高のその場所は少し息苦しい。まともに上ってきたらどれほど時間がかかっただろう。標高が高ければ気温は下がる。この世界もかつての世界もこの法則は同じだった。
雪交じりの風に髪をなぶらせながらエドワードは少しずつ山に近づいていく。
この光景はエドワードの知識ではアルプス山脈に酷似している。
徐々に高度を下げ目的地に進む。そして淡い光を放つその場所を目指した。
そしてそれはまるで氷河のような光景を見た。
しかしそれは氷河ではない。半透明な巨大な岩が延々と並ぶその光景はとても氷河に酷似していたけれど、氷が連なっているわけではないのだ。
これは魔石というものだ。
この世界では機械に代わって様々な動力を提供してくれるもの。
かつて、エドワードはこの世界で石炭を探した。しかしどこにも見つからなかった。石炭だけでなく石油のような化石燃料はどこにもない。
この世界の成り立ちが分からないし、この世界では考古学や古生物学という学問もないので推測すらできないが、何故かこの世界には化石燃料ができなかったのだ。
ないものはどうしようもない。そのためエドワードは代替品を探さざるを得なかった。
そして、目を付けたのが魔石だった。
魔石はそのままの形でしか使用できない。加工しようと少しでも削ってしまえば一気に魔力が抜けてしまうのだ。
そのためある程度手ごろな大きさの石のみが利用される。
一抱えもある巨大な岩としか言いようのない大きさのものは使いようがないのだ。
だが、それにエドワードは眼をつけた。
これほど巨大であれば機関車を引く動力として十分なエネルギーを持っているに違いないという。
巨大な魔石は使いようがない、ということはいくらでもこれから使い放題なのだ。
エドワードはいとおしむように冷たい岩肌を撫でた。
これはもしかしたら石炭より使い勝手がいいかもしれない。
「後は、この大岩をここから運び出すための道路を建設するだけだな」
そばで聞いていた仲間がうんざりとした声を出す。
「それのどこがだけ、だよ」
はっきり言って険しい山奥で、竜に乗らなければたどり着けないほどの距離、そして、ちょっとでも削れたら使い物にならない岩。
こんな重い岩を運び出せないから利用できないということが分かっていない。
「大丈夫、いつだって手はあるよ」
エドワードはこともなげに言った。
すでにルートは押さえてある。
この山には結構大きな川があるのだ。この川を運河として使えば。
船を作ることは簡単ではないが、この巨大魔石を利用できるようになるという話はおえら方には結構好評だったのだ。
「まあ、あと数年はかかるかもしれないけれど、それだけの事業なんだ仕方がないよ」
エドワードは冷たい風に軽く身を震わせた。
毛皮の内張をしたコートを着ていてもこの山頂は寒い。
巨大なドラゴンはその巨大さから寒さには強いが、それも限度がある。
「まったく、こんなところまで連れてこられるとは思ってもみなかったですが」
ぼやく相手をいなしながら、測量の道具を用意する。
エドワードは魔石を供給するためのルートを確定しなければならないのだ。
「地図を作るのは専門だったろう」
「俺が作っていたのは市街地の地図です」
のを超え山超えた場所の測量はあまりやったことがないのだと吠えた。
高い標高のその場所は少し息苦しい。まともに上ってきたらどれほど時間がかかっただろう。標高が高ければ気温は下がる。この世界もかつての世界もこの法則は同じだった。
雪交じりの風に髪をなぶらせながらエドワードは少しずつ山に近づいていく。
この光景はエドワードの知識ではアルプス山脈に酷似している。
徐々に高度を下げ目的地に進む。そして淡い光を放つその場所を目指した。
そしてそれはまるで氷河のような光景を見た。
しかしそれは氷河ではない。半透明な巨大な岩が延々と並ぶその光景はとても氷河に酷似していたけれど、氷が連なっているわけではないのだ。
これは魔石というものだ。
この世界では機械に代わって様々な動力を提供してくれるもの。
かつて、エドワードはこの世界で石炭を探した。しかしどこにも見つからなかった。石炭だけでなく石油のような化石燃料はどこにもない。
この世界の成り立ちが分からないし、この世界では考古学や古生物学という学問もないので推測すらできないが、何故かこの世界には化石燃料ができなかったのだ。
ないものはどうしようもない。そのためエドワードは代替品を探さざるを得なかった。
そして、目を付けたのが魔石だった。
魔石はそのままの形でしか使用できない。加工しようと少しでも削ってしまえば一気に魔力が抜けてしまうのだ。
そのためある程度手ごろな大きさの石のみが利用される。
一抱えもある巨大な岩としか言いようのない大きさのものは使いようがないのだ。
だが、それにエドワードは眼をつけた。
これほど巨大であれば機関車を引く動力として十分なエネルギーを持っているに違いないという。
巨大な魔石は使いようがない、ということはいくらでもこれから使い放題なのだ。
エドワードはいとおしむように冷たい岩肌を撫でた。
これはもしかしたら石炭より使い勝手がいいかもしれない。
「後は、この大岩をここから運び出すための道路を建設するだけだな」
そばで聞いていた仲間がうんざりとした声を出す。
「それのどこがだけ、だよ」
はっきり言って険しい山奥で、竜に乗らなければたどり着けないほどの距離、そして、ちょっとでも削れたら使い物にならない岩。
こんな重い岩を運び出せないから利用できないということが分かっていない。
「大丈夫、いつだって手はあるよ」
エドワードはこともなげに言った。
すでにルートは押さえてある。
この山には結構大きな川があるのだ。この川を運河として使えば。
船を作ることは簡単ではないが、この巨大魔石を利用できるようになるという話はおえら方には結構好評だったのだ。
「まあ、あと数年はかかるかもしれないけれど、それだけの事業なんだ仕方がないよ」
エドワードは冷たい風に軽く身を震わせた。
毛皮の内張をしたコートを着ていてもこの山頂は寒い。
巨大なドラゴンはその巨大さから寒さには強いが、それも限度がある。
「まったく、こんなところまで連れてこられるとは思ってもみなかったですが」
ぼやく相手をいなしながら、測量の道具を用意する。
エドワードは魔石を供給するためのルートを確定しなければならないのだ。
「地図を作るのは専門だったろう」
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のを超え山超えた場所の測量はあまりやったことがないのだと吠えた。
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