異世界に鉄道を引こう

karon

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線路はつながらない

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 ぶすぶすと燻されているのを二人並んでみていた。
 木の種類も試行錯誤を重ねてこれはという種類の木しか持ってこさせなかった。
 こちらにはアンナの知っている種類の木がまったく見つからなかったのだ、そのため木の種類によっては燻製の味が大きく悪くなり家族が誰も食べずあんな一人で始末する羽目になったこともある。
 ここでも食べ物は粗末にしてはいけないのだ。
「この近くに線路ができているが見に行くか?」
 ゴロウアキマサが地面に直接座り込んであんなに訊ねてきた。
「線路?」
 それが何かは知っていたがアンナは見るのも初めてだ。
「お仲間がほかにもいるし、顔合わせにちょうどいいんじゃないか」
 いぶす作業は今日一日かかるが、塩漬けにした肉はしばらく熟成が必要だ。それなら明日ちょっと見てみるくらいならいいかもしれない。
 アンナはそう思って頷く。
「線路ってどうなっているんだろう」
「線路も見たことがないのか?」
「ない」

 翌日、アンナは作業用の服から普通のちょっとかわいい感じの服を探してきてみた。
 もともと洒落っ気はないので、髪の結い方を変えるくらいしかできないが、とにかく余所行きのような恰好を作った。
 ゴロウアキマサは普段通りの簡素なシャツとズボンという格好でアンナより年下の顔をしているため姉と弟に見えたかもしれない。
 少し開けた場所があり、そこに何頭か馬がそろっている。
「よう」
 まだ若いアンナより少しだけ年かさに見える茶色い髪の男が軽く手を挙げた。
 顔一面にそばかすが浮いていて、少し細い垂れた目がどこかお人よしような雰囲気を醸し出している。
「こいつはチャールズだ」
 エドワードと同じくイギリスから来たのだろう。チャールズはアンナに握手を求めた。
 肉体労働で鍛えられたいかにもがっしりとした幅広な体格をしている。
「こっちはアンナ」
 ゴロウアキマサが互いに紹介する。

 料理人と言われてアンナは戸惑う。もともと実家は農業と酪農をしていたし、アンナは家庭内で調理を担当していただけだ。
「あの、線路はどこにあるんですか?」
 アンナが尋ねるとチャールズは先に立って歩き始めた。
「あれが線路だ」
 小石を敷き詰めた場所に薄い木の板が等間隔に並び、その上に金属の棒が板に直角に並べられている。アンナが見たのはそれだけだ。
 その長さはアンナの立っている場所からは橋が見えないくらいだ。
「機関車はまだ完成していないがね、これは馬車を引いたものだよ」
 横は普通に舗装された道、そして、その横に線路、同じ大きさの馬車を線路と普通の道で並べて競争させたのだという。
「線路を使ったほうが小さな力で荷物を引ける、それを立証するためだけに作られたものだからね、いずれ機関車が完成したら、機関車を走らせる予定もあるが」
 それはまだまだ先なのだとチャールズは言った。
 線路は町から街へつなぐ必要がある、それにはとてつもなく長い時間がかかると。
「まだまだ事業は軌道に乗っていない」
 それでも手ごたえはあるのだとチャールズは言った。

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