8 / 29
燻製づくり
しおりを挟む
アンナはまず人の姿を探した。
森の近くで豚の糞を掃除している初老くらいの男たちの姿が見えた。
どうやら近隣の村人が金で雇われて豚の世話をしているらしい。
牛は乳牛と耕作用だという。
定期的に豚の糞を集めて畑にまいているという。
そして、定期的に豚を街まで連れて行くのだとか。
「屠殺はここでは行わないの?」
「そんなことをしていたら豚が腐ってしまう」
どうやらここでも燻製は行われていないようだ。
アンナが、元居た村で試行錯誤を凝らしてようやくスペック(ベーコン)を作れるようになったのは少し前だ。
そうする前は一匹の豚を屠畜してその一匹を村全部で少しずつ分けて食べていた。そのため豚を食べられるのは一月か二月に一食のみだった。
アンナが豚を燻製にすることで、村の人間は豚を食べる頻度が上がった。
そして、長時間保存できる豚肉として、ほかの村に売り歩きそれなりに収入を上げていた。
その技術は村だけの秘密になっていたが、村から売り飛ばされたアンナがそれを守る必要はないだろうと判断する。もともとアンナが教えたものなのだし。
「長時間豚を腐らせない技術があるのよ」
その言葉に男たちは眼をむいた。
生肉は腐りやすい、せいぜい塩漬けにする程度だがそれでも限度がある。長時間大量の塩に漬けておけば塩辛くて食べられたものではない。
「それで、頼みたいことがあるんだけど」
アンナはまた繰り返すかと少しだけうんざりした。
アンナが燻製を作ろうとした時も家族からさんざん妨害されたのだ。曰く食料を無駄にするなと、むしろきちんと保存処理しないあっちのほうが食料を無駄にしているとアンナは思っていたのだが。
戦いの末、スペックを完成させた後は割と好きにさせてくれた。
燻製を作るためには肉を覆うための箱が必要になる。それも下に熱源を置くのでそれなりに高さのある箱が。
アンナのいたドイツでは小屋一つが燻製用に使われていたが、そんな贅沢は望めまい。できるだけ大きな箱を用意してもらうにとどめる。
そして熱源用の小型の焜炉、この仕組みでは熱燻しかできないが。温燻や冷燻は後日の課題として取っておくことにしよう。
アンナの依頼はすぐにかなえられた。あとは血を受けるための容器などもいると言えばあっさりと用意する。
「あの、随分と物分かりがいいようだけど」
「上からのお達しで、お嬢さんの言うことには決して逆らうなと言われているんだ」
あっさりとそう言われてアンナは困惑した。
思ったより重大なことを任されているんじゃないだろうか。
そうは思ったけれど、まず道具をそろえなければ。
翌日ゴロウアキマサが来た。
ゴロウアキマサの背丈はアンナより少し高いぐらいだが、顔に似合わず腕などは筋骨隆々としている。
長袖の服を着ていると目立たないが、今日は腕まくりをしている。
「刃物は試したか? 俺が鍛えたのだが」
わくわくとした顔であの大量の包丁の使い心地を訪ねてくる。たった一日であの大量の包丁を試せるわけがないのだが。
「後、足りないのは口金ね、小型のあれみたいなやつなんだけど」
アンナは漏斗を指さす。大きさはこれくらい?
そう言って地面に小枝で書き記して見せた。
次郎アキマサはしばらく考え込んでいたが任せろと行ってしまった。
これからいよいよ豚を捌く。
森の近くで豚の糞を掃除している初老くらいの男たちの姿が見えた。
どうやら近隣の村人が金で雇われて豚の世話をしているらしい。
牛は乳牛と耕作用だという。
定期的に豚の糞を集めて畑にまいているという。
そして、定期的に豚を街まで連れて行くのだとか。
「屠殺はここでは行わないの?」
「そんなことをしていたら豚が腐ってしまう」
どうやらここでも燻製は行われていないようだ。
アンナが、元居た村で試行錯誤を凝らしてようやくスペック(ベーコン)を作れるようになったのは少し前だ。
そうする前は一匹の豚を屠畜してその一匹を村全部で少しずつ分けて食べていた。そのため豚を食べられるのは一月か二月に一食のみだった。
アンナが豚を燻製にすることで、村の人間は豚を食べる頻度が上がった。
そして、長時間保存できる豚肉として、ほかの村に売り歩きそれなりに収入を上げていた。
その技術は村だけの秘密になっていたが、村から売り飛ばされたアンナがそれを守る必要はないだろうと判断する。もともとアンナが教えたものなのだし。
「長時間豚を腐らせない技術があるのよ」
その言葉に男たちは眼をむいた。
生肉は腐りやすい、せいぜい塩漬けにする程度だがそれでも限度がある。長時間大量の塩に漬けておけば塩辛くて食べられたものではない。
「それで、頼みたいことがあるんだけど」
アンナはまた繰り返すかと少しだけうんざりした。
アンナが燻製を作ろうとした時も家族からさんざん妨害されたのだ。曰く食料を無駄にするなと、むしろきちんと保存処理しないあっちのほうが食料を無駄にしているとアンナは思っていたのだが。
戦いの末、スペックを完成させた後は割と好きにさせてくれた。
燻製を作るためには肉を覆うための箱が必要になる。それも下に熱源を置くのでそれなりに高さのある箱が。
アンナのいたドイツでは小屋一つが燻製用に使われていたが、そんな贅沢は望めまい。できるだけ大きな箱を用意してもらうにとどめる。
そして熱源用の小型の焜炉、この仕組みでは熱燻しかできないが。温燻や冷燻は後日の課題として取っておくことにしよう。
アンナの依頼はすぐにかなえられた。あとは血を受けるための容器などもいると言えばあっさりと用意する。
「あの、随分と物分かりがいいようだけど」
「上からのお達しで、お嬢さんの言うことには決して逆らうなと言われているんだ」
あっさりとそう言われてアンナは困惑した。
思ったより重大なことを任されているんじゃないだろうか。
そうは思ったけれど、まず道具をそろえなければ。
翌日ゴロウアキマサが来た。
ゴロウアキマサの背丈はアンナより少し高いぐらいだが、顔に似合わず腕などは筋骨隆々としている。
長袖の服を着ていると目立たないが、今日は腕まくりをしている。
「刃物は試したか? 俺が鍛えたのだが」
わくわくとした顔であの大量の包丁の使い心地を訪ねてくる。たった一日であの大量の包丁を試せるわけがないのだが。
「後、足りないのは口金ね、小型のあれみたいなやつなんだけど」
アンナは漏斗を指さす。大きさはこれくらい?
そう言って地面に小枝で書き記して見せた。
次郎アキマサはしばらく考え込んでいたが任せろと行ってしまった。
これからいよいよ豚を捌く。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――
金斬 児狐
ファンタジー
ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。
しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。
しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。
◆ ◆ ◆
今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。
あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。
不定期更新、更新遅進です。
話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。
※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。
【草】限定の錬金術師は辺境の地で【薬屋】をしながらスローライフを楽しみたい!
黒猫
ファンタジー
旅行会社に勤める会社の山神 慎太郎。32歳。
登山に出かけて事故で死んでしまう。
転生した先でユニークな草を見つける。
手にした錬金術で生成できた物は……!?
夢の【草】ファンタジーが今、始まる!!
お気楽少女の異世界転移――チートな仲間と旅をする――
敬二 盤
ファンタジー
※なろう版との同時連載をしております
※表紙の実穂はpicrewのはなまめ様作ユル女子メーカーで作成した物です
最近投稿ペース死んだけど3日に一度は投稿したい!
第三章 完!!
クラスの中のボス的な存在の市町の娘とその取り巻き数人にいじめられ続けた高校生「進和実穂」。
ある日異世界に召喚されてしまった。
そして召喚された城を追い出されるは指名手配されるはでとっても大変!
でも突如であった仲間達と一緒に居れば怖くない!?
チートな仲間達との愉快な冒険が今始まる!…寄り道しすぎだけどね。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ
さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる