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どうして俺が
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背後確認用鏡の中で自動二輪車が曲がって行くのを見ていたサンダース大佐はハンドルを握る手を外し軽くこぶしを自分の顎に当てる。
「気のせいか?」
そう気がついてみればいつの間にかずいぶんと周囲が変わっていた。変わってしまった周囲に眼をやれば今まで眼にとどめもしなかったものが映る。
さっきは気のせいだったが、あるいは気付かれたことに気づいて避けたのか。とにかくいつの間にか自分を監視している眼ができた。
それもずいぶん前に。
忌々しいが、記憶を総ざらいして新聞に載った写真を元に思い出してみた。
すべて、ミュゲと結婚してからだ。しかしミュゲとの結婚は公にしていない。となればこの写真を撮ったのは軍関係者か、魔道庁関係者である可能性が高い。
そうするとナルシッサはどう動いたのか。
完全にサンダース大佐は主犯をナルシッサと断定していた。
「しかし、さすがにミュゲを出さないわけがない」
レイシック卿とダンダルジャン卿、そしてサンダース大佐とミュゲ、四人で話し合いの席が設けられているのだ。
本来ならば、二人の婚礼の打ち合わせであるはずのその場所が二人の離婚調停の場になることになる。
さすがにこれにミュゲ不在というわけにはいかない。
ミュゲが出てくれば丸めこむ自信はいくらでもある。
そしてミュゲの顔を思い出そうとして、うっすらとしか思い出せないことに気づく。
整った顔は妙に印象が薄く、円い菫色の瞳しか思い出せない。
本当に印象の薄い女だ。だからこそ放っておく気にもなれた。
レイシック卿は新聞紙を何度も切り刻んでいた。
「どういうことだ、ミュゲと結婚しておいて、どうして」
「それはレイシック卿のなさったことを考えれば、どのような理不尽も妙忍んで当然であり、浮気ご時で文句を言う資格はないという論理だそうですよ」
秘書官は破り棄てられる前の新聞を片手のそう論じて新聞を渡す。
「許せんぞ、この私の娘を」
「だから、誰のせいです?」
どれほど秘書官が突っ込もうと何一つ聞いていない。
「軍人としては優秀だけど、魔道士としては並みの上レベル。レイシック卿が本気になれば勝てる相手よね」
残骸だけでも、残ればいいけど。
レイシック卿を常識が通じて耐えしのぶと考えた愚か者に、秘書官は幽かに嘲笑を浮かべた。
ジャックは双子の少尉と、カーター少尉に取り囲まれていた。
「例の場に貴方が出なさい」
重々しくカーター女史が言う。
しかし本来ならば、それはカーター女史の仕事だ。
「あの、准尉二人では示しがつかないのでは」
ついでにボルト准尉も巻き込んでおく
「そんなことはどうでもいいのよ、とにかく貴方が出るの、いいわね、これは命令よ」
上官の命令は絶対。ましてやこのカーター少尉の命令は将軍の命令にも匹敵する。
「アイアイマム」
力なくジャックは敬礼した。
「気のせいか?」
そう気がついてみればいつの間にかずいぶんと周囲が変わっていた。変わってしまった周囲に眼をやれば今まで眼にとどめもしなかったものが映る。
さっきは気のせいだったが、あるいは気付かれたことに気づいて避けたのか。とにかくいつの間にか自分を監視している眼ができた。
それもずいぶん前に。
忌々しいが、記憶を総ざらいして新聞に載った写真を元に思い出してみた。
すべて、ミュゲと結婚してからだ。しかしミュゲとの結婚は公にしていない。となればこの写真を撮ったのは軍関係者か、魔道庁関係者である可能性が高い。
そうするとナルシッサはどう動いたのか。
完全にサンダース大佐は主犯をナルシッサと断定していた。
「しかし、さすがにミュゲを出さないわけがない」
レイシック卿とダンダルジャン卿、そしてサンダース大佐とミュゲ、四人で話し合いの席が設けられているのだ。
本来ならば、二人の婚礼の打ち合わせであるはずのその場所が二人の離婚調停の場になることになる。
さすがにこれにミュゲ不在というわけにはいかない。
ミュゲが出てくれば丸めこむ自信はいくらでもある。
そしてミュゲの顔を思い出そうとして、うっすらとしか思い出せないことに気づく。
整った顔は妙に印象が薄く、円い菫色の瞳しか思い出せない。
本当に印象の薄い女だ。だからこそ放っておく気にもなれた。
レイシック卿は新聞紙を何度も切り刻んでいた。
「どういうことだ、ミュゲと結婚しておいて、どうして」
「それはレイシック卿のなさったことを考えれば、どのような理不尽も妙忍んで当然であり、浮気ご時で文句を言う資格はないという論理だそうですよ」
秘書官は破り棄てられる前の新聞を片手のそう論じて新聞を渡す。
「許せんぞ、この私の娘を」
「だから、誰のせいです?」
どれほど秘書官が突っ込もうと何一つ聞いていない。
「軍人としては優秀だけど、魔道士としては並みの上レベル。レイシック卿が本気になれば勝てる相手よね」
残骸だけでも、残ればいいけど。
レイシック卿を常識が通じて耐えしのぶと考えた愚か者に、秘書官は幽かに嘲笑を浮かべた。
ジャックは双子の少尉と、カーター少尉に取り囲まれていた。
「例の場に貴方が出なさい」
重々しくカーター女史が言う。
しかし本来ならば、それはカーター女史の仕事だ。
「あの、准尉二人では示しがつかないのでは」
ついでにボルト准尉も巻き込んでおく
「そんなことはどうでもいいのよ、とにかく貴方が出るの、いいわね、これは命令よ」
上官の命令は絶対。ましてやこのカーター少尉の命令は将軍の命令にも匹敵する。
「アイアイマム」
力なくジャックは敬礼した。
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