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ビバ資格
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結局食券をもらって困惑しているミュゲを伴い食堂に行った。
「困るんです、こんなものをもらっても」
「報酬の一環でしょう。それ当日券だから今日しか使えませんよ」
「こんなものをもらえるなんて知らなかったから、お弁当を持ってきてしまったんです」
さすがにこの細い身体に定食と弁当は入らないだろう。
「手伝ってもらえますか」
どうやら食券をジャックにあげてしまうという選択肢はないようだ。
「お弁当半分食べてください」
基本的に食堂の食事より目の前の美少女の手料理のほうが好ましい。それを分けてくれるというのなら喜んでだ。
食堂ではすでに来ていたボルト准尉が肉の揚げ物をかき込んでいた。
「何してたんだ、先に行ってたはずだろ」
ジャックはミュゲにボルト少尉の向かいに座るよう促し、自分はボルト少尉の横に座った。
ミュゲは本日のチキンサラダ定食とお弁当をテーブルに置く。
「よかったら手伝ってください」
ミュゲがにっこりと笑う。
ミュゲの言葉が最後まで終わらないうちにボルト准尉はお弁当のサンドイッチを抜いていた。
「お前、ダイエットするって言ってなかったか?」
丸々と太ったボルト准尉の腹周りを眺めながらジャックが呟く。
「同じだけ食ってるのに何でお前は太らん」
「運動量が違うんだよ」
軍人としての義務のトレーニングをさぼりまくっているボルト准尉にジャックに文句をつける権利はない。
「で、お嬢さん何者?」
ボルト准尉がミュゲをしげしげと見た。
「検察庁で魔道関係の書類整理のバイトのものです」
「てことは魔道士?」
そしてミュゲの全身を舐めるように見る。
「呪具は服の下か?」
「つけてますよ」
ミュゲは耳たぶを指差した。ピンクの石のイヤリングが付いている。
ミュゲの呪具は小さい。普通大きな術を使う場合呪具は大きくなるのが普通だ。しかし例外もある。
呪具の素材によっては小さくとも大きな術を使うことができるのだ。たとえばサンダース大佐の指輪のように、まあその分お値段が張るが。
ミュゲはどちらだろう。
ミュゲのピンクの耳たぶにピンクの石と言うほぼ保護色な石を眺めながら進駐で呟く。レイシック卿のご息女ならお高い呪具も購うことは可能だろう。
しかしミュゲに大きな術を使う時が来るのかそれならば小さい術しか使えない奴か。
「お嬢さんずいぶん若いけど、こんなバイトしてもいいの?」
「資格は去年取りました」
こともなげにミュゲは言う。
「そんなにお金がいるんだあ」
ボルト准尉は探るような眼でミュゲを見ている。
「弟の学校のためのお金が足りなくて」
少し情けなさそうにミュゲはうつむいた。髪をきっちりまとめているので頸の細さにジャックは少しどきりとした。
「親はどうしたの」
「親はちょっと金遣いが荒くて、しょっちゅう生活費がなくなったりするの、幸い勉強だけはできる環境だったから」
レイシック卿の特殊な金銭感覚は知る人ぞ知るものだったが、子供の生活費まで使い込んでいたとは知らなかった。
ボルト准尉がミュゲの弁当のほとんどを腹に入れたところで食事はお開きになった。
仕事が終わったからと足早に去るミュゲを見送ったジャックはボルト准尉を睨みつける。
「なんだよあの態度」
「あれ、あの腸詰食べたかったのか」
「いや、それもあるが、なんかあの子に失礼な言い方してなかったか」
「いや、ちょっと興味あるだろ、あの若さで資格持ちなんて」
「バイトできる資格が一体」
「仮にも国家資格だぜフルタイムで働けば、俺達の三倍月給がもらえる」
資格すげえ。それがジャックの言葉だった。
「困るんです、こんなものをもらっても」
「報酬の一環でしょう。それ当日券だから今日しか使えませんよ」
「こんなものをもらえるなんて知らなかったから、お弁当を持ってきてしまったんです」
さすがにこの細い身体に定食と弁当は入らないだろう。
「手伝ってもらえますか」
どうやら食券をジャックにあげてしまうという選択肢はないようだ。
「お弁当半分食べてください」
基本的に食堂の食事より目の前の美少女の手料理のほうが好ましい。それを分けてくれるというのなら喜んでだ。
食堂ではすでに来ていたボルト准尉が肉の揚げ物をかき込んでいた。
「何してたんだ、先に行ってたはずだろ」
ジャックはミュゲにボルト少尉の向かいに座るよう促し、自分はボルト少尉の横に座った。
ミュゲは本日のチキンサラダ定食とお弁当をテーブルに置く。
「よかったら手伝ってください」
ミュゲがにっこりと笑う。
ミュゲの言葉が最後まで終わらないうちにボルト准尉はお弁当のサンドイッチを抜いていた。
「お前、ダイエットするって言ってなかったか?」
丸々と太ったボルト准尉の腹周りを眺めながらジャックが呟く。
「同じだけ食ってるのに何でお前は太らん」
「運動量が違うんだよ」
軍人としての義務のトレーニングをさぼりまくっているボルト准尉にジャックに文句をつける権利はない。
「で、お嬢さん何者?」
ボルト准尉がミュゲをしげしげと見た。
「検察庁で魔道関係の書類整理のバイトのものです」
「てことは魔道士?」
そしてミュゲの全身を舐めるように見る。
「呪具は服の下か?」
「つけてますよ」
ミュゲは耳たぶを指差した。ピンクの石のイヤリングが付いている。
ミュゲの呪具は小さい。普通大きな術を使う場合呪具は大きくなるのが普通だ。しかし例外もある。
呪具の素材によっては小さくとも大きな術を使うことができるのだ。たとえばサンダース大佐の指輪のように、まあその分お値段が張るが。
ミュゲはどちらだろう。
ミュゲのピンクの耳たぶにピンクの石と言うほぼ保護色な石を眺めながら進駐で呟く。レイシック卿のご息女ならお高い呪具も購うことは可能だろう。
しかしミュゲに大きな術を使う時が来るのかそれならば小さい術しか使えない奴か。
「お嬢さんずいぶん若いけど、こんなバイトしてもいいの?」
「資格は去年取りました」
こともなげにミュゲは言う。
「そんなにお金がいるんだあ」
ボルト准尉は探るような眼でミュゲを見ている。
「弟の学校のためのお金が足りなくて」
少し情けなさそうにミュゲはうつむいた。髪をきっちりまとめているので頸の細さにジャックは少しどきりとした。
「親はどうしたの」
「親はちょっと金遣いが荒くて、しょっちゅう生活費がなくなったりするの、幸い勉強だけはできる環境だったから」
レイシック卿の特殊な金銭感覚は知る人ぞ知るものだったが、子供の生活費まで使い込んでいたとは知らなかった。
ボルト准尉がミュゲの弁当のほとんどを腹に入れたところで食事はお開きになった。
仕事が終わったからと足早に去るミュゲを見送ったジャックはボルト准尉を睨みつける。
「なんだよあの態度」
「あれ、あの腸詰食べたかったのか」
「いや、それもあるが、なんかあの子に失礼な言い方してなかったか」
「いや、ちょっと興味あるだろ、あの若さで資格持ちなんて」
「バイトできる資格が一体」
「仮にも国家資格だぜフルタイムで働けば、俺達の三倍月給がもらえる」
資格すげえ。それがジャックの言葉だった。
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