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愛の不在
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チェリアは完全に凍り付いた表情でその場に佇んでいた。
チェリア以外の周囲は春。ここは恋人たちが集う公園。近くに愛の神話にかかわる彫像があり、それ目当てに訪れる恋人同士、そしてその恋人同士目当ての屋台の店。
そうしたものに取り囲まれながら彼女は大寒波を背負っていた。
そしてその傍らで何とか彼女の手を握ろうとする男を激しく睨みつけた。
そして、この日が来ると分かったその日のうちに買い整えた棘つきメリケンサックを掲げてみせる。男女間のハンディキャップを埋めるためだ。
刃物はさすがに殺傷力が高すぎて官憲に見とがめられるとあきらめた。
「触るな」
言葉は必要最低限に、顔を見るのも忌々しい男に言葉を紡ぐなどという労をかけてやるつもりなどなかった。
「お前、わかってんのか、これデートだろ」
「わかっている。私の人生でもトップクラスの人生の汚点だ」
吐き捨てるようにそう言った。
「お前、さっきから何も食ってないだろう。腹すいてないのか」
目の前の男は見てくれだけはいい。だがそれだけだ。多少の美点はあるかもしれないがそれを補って余りあるくらいチェリアはこの男が大っ嫌いだった。
「お腹はすいてる。だけど今は食べたくない」
「あれ、隊長でも悪いのか?」
「私は食事はおいしく食べたいだけよ、どうせあんたの薄汚い顔見ながらじゃ何食べてもまずくなるだけなんだもの。絶対あんたと食事なんかしない。その結果餓死してもね」
チェリアはあえて淡々とそう言った。冷静にそう言った。怒りではない心からの軽蔑のにじむ視線で。
「お前、俺の恋人なんだぞ」
「だから何、恋人だからあんたを好きになれっていうの。それと、別れたいならいつでも言ってちょうだい、喜んでそうするから」
そう言ってそっぽを向く。
「あのさ、これ」
そう言って男は小さな包みを差し出そうとした。それをとっさに手を振り払い地面に落ちたところでその包みを踏み潰した。
何度もぐりぐりと踏みにじった。
「そのごみ、捨てておいてね」
「お前がごみにしたんだろう」
「何言ってるの、あんたが差し出したものなんてごみよ、ああ、汚いものを踏んで靴が汚れたわ、もういいでしょう、帰るわ」
チェリアはそう言ってその場を足早に立ち去った。
「せっかくおぜん立てしたデートもこのありさまで、どうして仲良くできないんっすかね」
グレンはそう言ってため息をつく。
そしてカーライルとピーターとクルトはため息すら付けなかった。
どこを探しても愛などない。
「まさかそのカップルを取りまとめる方法を?」
「当たり前じゃないっすか」
何故威張るそう問いただしそうになった。
「真実の愛にどうしてチェリアは気づいてくれないんすか?」
だから愛なんかないんだよ。三人の心中はその時一致した。
チェリア以外の周囲は春。ここは恋人たちが集う公園。近くに愛の神話にかかわる彫像があり、それ目当てに訪れる恋人同士、そしてその恋人同士目当ての屋台の店。
そうしたものに取り囲まれながら彼女は大寒波を背負っていた。
そしてその傍らで何とか彼女の手を握ろうとする男を激しく睨みつけた。
そして、この日が来ると分かったその日のうちに買い整えた棘つきメリケンサックを掲げてみせる。男女間のハンディキャップを埋めるためだ。
刃物はさすがに殺傷力が高すぎて官憲に見とがめられるとあきらめた。
「触るな」
言葉は必要最低限に、顔を見るのも忌々しい男に言葉を紡ぐなどという労をかけてやるつもりなどなかった。
「お前、わかってんのか、これデートだろ」
「わかっている。私の人生でもトップクラスの人生の汚点だ」
吐き捨てるようにそう言った。
「お前、さっきから何も食ってないだろう。腹すいてないのか」
目の前の男は見てくれだけはいい。だがそれだけだ。多少の美点はあるかもしれないがそれを補って余りあるくらいチェリアはこの男が大っ嫌いだった。
「お腹はすいてる。だけど今は食べたくない」
「あれ、隊長でも悪いのか?」
「私は食事はおいしく食べたいだけよ、どうせあんたの薄汚い顔見ながらじゃ何食べてもまずくなるだけなんだもの。絶対あんたと食事なんかしない。その結果餓死してもね」
チェリアはあえて淡々とそう言った。冷静にそう言った。怒りではない心からの軽蔑のにじむ視線で。
「お前、俺の恋人なんだぞ」
「だから何、恋人だからあんたを好きになれっていうの。それと、別れたいならいつでも言ってちょうだい、喜んでそうするから」
そう言ってそっぽを向く。
「あのさ、これ」
そう言って男は小さな包みを差し出そうとした。それをとっさに手を振り払い地面に落ちたところでその包みを踏み潰した。
何度もぐりぐりと踏みにじった。
「そのごみ、捨てておいてね」
「お前がごみにしたんだろう」
「何言ってるの、あんたが差し出したものなんてごみよ、ああ、汚いものを踏んで靴が汚れたわ、もういいでしょう、帰るわ」
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そしてカーライルとピーターとクルトはため息すら付けなかった。
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