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成り行き任せ

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 アメリアは引きつった顔でじりじりと後ろに後ずさった。
 向こうもじりじりと距離を詰めてくる。
 端正な顔立ちをしている分不気味さが際立つ王子様だった。
 どうしてこんな外れ物件ばっかり攻略しなきゃならんのだと。かつてのゲーム会社の制作者を罵倒する。
 こうなれば死刑覚悟で脳天を。
 アメリアはそっとこれからの人生をあきらめた。
 財布に着けた紐を握る。
「殿下が見つかったぞ」
 そう雄たけびが聞こえた。
 訳が分からないなりにアメリアはできる限り全速力でその場から離れる。
 いったい何が起きているのか、暗殺者はどうなったのかさっぱりわからないが、とにかくその場を離れると決めた。
「ええ?」
 かすかに聞こえた声、振り返れば先ほどの女が訳が分からないという表情で立ち尽くしていた。
 窓から、ドアから大勢の人が駆けつけてきた。そして、いきなり腕をつかまれた。
「事情は聞いている。とにかくこちらに」
 ジョゼフはアメリアの腕をとってその場から隠れる場所に誘った。
 この哀れなお嬢さんをどうしたものかと思いながら引っ張っていく。
 アメリアはジョゼフを怪訝そうな顔で見ながらも逆らう様子はない。
「無理やりこちらに来させられたんだな」
 そのこと自体は事実なので頷く。
「あの王孫殿下の失脚を望むやつに頼まれた」
 それも頷く。そしてアメリアはようやく先ほどから言おうとしたことを聞いた。
「誰でしたっけ?」
「ああ、俺はジョゼフという。とりあえずエクストラ様つきだ」
 それだけ聞いてアメリアは納得する。おそらく不測の事態が起きたのだろう。この計画をエクストラが知らないわけがない。
「だが、おかしい、俺たち以外の誰かが動いているとしか思えん」
 それは少しおかしいかもしれない。この騒ぎは、王太子妃と王弟達の婚約者の争いのはずだ、それ以外の介入などあるだろうか。
「こんなところにあの殿下が現れるはずじゃなかった。
 周囲は騒がしくなってきた。大勢の人間が、右往左往し始める。いつの間にどうしてこんな人数が集まったのだろう。
「あの王子様を探していたみたい、もしかして脱走したの?」
「だが、ピンポイントでここに来た意味が分からない、あの殿下は計画の外にいたはずだ」
 別の、アメリアをつけていた誰かにアメリアと託す。
 アメリアはずっと張り付かれていたそうだがその相手の顔を初めて見た。
 グレイの紙と瞳ののっぺりとした印象の顔の男だった。あまりに印象が薄いので年齢も不詳だ。
 よくもまあこんな覚えにくそうな顔の男を探し当てたものだと思う。ここまで印象の薄い顔を探すのはかえって難しいのではないだろうか。
「こちらへ、いいですか貴女は何も知らない、それで押し通してください。こうなったら殿下が不審な女と渡りをつけようとしたその女の身元は分からないでこちらも押し通します」
 そういわれてアメリアは頷くしかできなかった。
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