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転機
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「殺人未遂?」
唐突に聞こえてきた脈絡のない言葉にアメリアはしばらくぽかんと口を開けていた。
「いったい誰が?」
キャロルはものすごく不本意そうな顔をしている。
「ブリジットをワンダがという話にはなっているわ」
「ワンダ?」
意味が分からずアメリアは首をかしげている。
「いや、私にも何が何だか」
ブリジットが大怪我で自宅療養しているという話がいきなり耳に飛び込んできた。
キャロルが知りえた情報を手短に言うと。ワンダとブリジットがいつも通り大喧嘩をしていたそうだ。これは目撃者がいる。
何故か大枝が落ちてきてブリジットに命中、頭を強く打って今ブリジットは現在療養中だという。ここも目撃者あり。
そして、ブリジットはワンダがあらかじめ枝を折れるように細工をしたのだと主張。これは目撃者なし。
そしてワンダはその容疑を否定している。
そして、問題の枝には半分だけ切込みが入っていたが、その細工だけではいつ折れるかは未知数だったので、誰かのいたずらが偶然そこでの不幸な巡りあわせとなった可能性もなきしもあらず。
現在この騒ぎの噂で、王宮内はもちきりなんだとか。
しかし、この騒ぎにアメリアは釈然としないものを感じていた。
「これって偶然だと思う?」
キャロルが異様に表情のない顔で言った。
「殺人未遂はこれで二件目よ」
言われてアメリアは首をかしげる。
「第一の被害者候補はあんたでしょ」
キャロルがこめかみに青筋を浮かべてアメリアの襟首をつかんだ。
言われて思い出す、あの祭壇近くに飛んできた矢。
「確かにあれは殺人未遂だったけど、無差別殺人ぽいなと思ってて」
宗教団体はいろいろ恨まれることも多いだろうと思っていた。これは前世の知識だったか。
「いい、ヒロインが二人も狙われたの、これは偶然じゃないわ」
キャロルが異様に沈んだ声でつぶやく。
その表情に思わずのけぞったがキャロルはつかんだ襟首を放さず言った。
「ゾディークが、暗殺者を雇ったらしいわ」
アメリアは思わず呟いた。
「その暗殺者、もしかして無能?」
もし、アメリアやブリジットを狙ったとしたらあまりにも成功率が低すぎる。
アメリアはぴんぴんしているし、ブリジットも重症ではあるが重体ではない。
少なくともワンダを誹謗中傷するぐらいの元気はあるし、あの罠はまかり間違えばワンダに当たっていた可能性もある。
「いや、それはそうなんだけど」
「そもそもその暗殺者ってどういう伝手で紹介してもらったのかしら」
「確かに」
言われて考えてみれば、暗殺者なんてそうそう見つかるものではないのかもしれない。まあ公爵家関連かもしれないが。
「それと、考えてみれば暗殺って王太子は関与しているの?この場合関与していないなら、王太子にとってもゾディークは地雷になってしまううんじゃないの?」
王太子妃が、王太子に内緒で暗殺者を囲い込む。これはちょっとまずいどころの話ではない。
「これがチャンスになるのかドツボにはまるのか、ちょっと賭けてみる価値はあるのかな」
アメリアが最後のほうが尻窄みになったのは男爵令嬢という立場と王太子妃という立場の格差を考えたためだろうか。
唐突に聞こえてきた脈絡のない言葉にアメリアはしばらくぽかんと口を開けていた。
「いったい誰が?」
キャロルはものすごく不本意そうな顔をしている。
「ブリジットをワンダがという話にはなっているわ」
「ワンダ?」
意味が分からずアメリアは首をかしげている。
「いや、私にも何が何だか」
ブリジットが大怪我で自宅療養しているという話がいきなり耳に飛び込んできた。
キャロルが知りえた情報を手短に言うと。ワンダとブリジットがいつも通り大喧嘩をしていたそうだ。これは目撃者がいる。
何故か大枝が落ちてきてブリジットに命中、頭を強く打って今ブリジットは現在療養中だという。ここも目撃者あり。
そして、ブリジットはワンダがあらかじめ枝を折れるように細工をしたのだと主張。これは目撃者なし。
そしてワンダはその容疑を否定している。
そして、問題の枝には半分だけ切込みが入っていたが、その細工だけではいつ折れるかは未知数だったので、誰かのいたずらが偶然そこでの不幸な巡りあわせとなった可能性もなきしもあらず。
現在この騒ぎの噂で、王宮内はもちきりなんだとか。
しかし、この騒ぎにアメリアは釈然としないものを感じていた。
「これって偶然だと思う?」
キャロルが異様に表情のない顔で言った。
「殺人未遂はこれで二件目よ」
言われてアメリアは首をかしげる。
「第一の被害者候補はあんたでしょ」
キャロルがこめかみに青筋を浮かべてアメリアの襟首をつかんだ。
言われて思い出す、あの祭壇近くに飛んできた矢。
「確かにあれは殺人未遂だったけど、無差別殺人ぽいなと思ってて」
宗教団体はいろいろ恨まれることも多いだろうと思っていた。これは前世の知識だったか。
「いい、ヒロインが二人も狙われたの、これは偶然じゃないわ」
キャロルが異様に沈んだ声でつぶやく。
その表情に思わずのけぞったがキャロルはつかんだ襟首を放さず言った。
「ゾディークが、暗殺者を雇ったらしいわ」
アメリアは思わず呟いた。
「その暗殺者、もしかして無能?」
もし、アメリアやブリジットを狙ったとしたらあまりにも成功率が低すぎる。
アメリアはぴんぴんしているし、ブリジットも重症ではあるが重体ではない。
少なくともワンダを誹謗中傷するぐらいの元気はあるし、あの罠はまかり間違えばワンダに当たっていた可能性もある。
「いや、それはそうなんだけど」
「そもそもその暗殺者ってどういう伝手で紹介してもらったのかしら」
「確かに」
言われて考えてみれば、暗殺者なんてそうそう見つかるものではないのかもしれない。まあ公爵家関連かもしれないが。
「それと、考えてみれば暗殺って王太子は関与しているの?この場合関与していないなら、王太子にとってもゾディークは地雷になってしまううんじゃないの?」
王太子妃が、王太子に内緒で暗殺者を囲い込む。これはちょっとまずいどころの話ではない。
「これがチャンスになるのかドツボにはまるのか、ちょっと賭けてみる価値はあるのかな」
アメリアが最後のほうが尻窄みになったのは男爵令嬢という立場と王太子妃という立場の格差を考えたためだろうか。
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