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とりあえず情報源として利用
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そして再び王宮でエルザはアメリアのもとにやってきた。
エルザはにこにこと笑ってアメリアを迎えてくれた。過去の悪行を弟がばらしたなど知らないのか知っていても気にしないのかその笑顔からは計り知れない。
「どうしよう」
昨日聞いた話ではエルザはブラウン男爵家から絶縁に近い扱いを受けているらしい。
まあ、無理もない。
キャロルも、貴婦人としての嗜みからあえて表情をしかめることはしなかったが、辛うじてという恵美を浮かべているだけだ。
そして、アメリアとしても未来の義姉の関係は微妙なところだ。
絶縁とはいえ、勘当ではないようだ、だとすれば、結婚式に呼ばないわけにはいかない。
絶縁のいきさつは、アメリアの口から家族に説明しずらかった。スティーブン側としてはもっとしずらかったであろうと思われる。
それを考えれば、今は様子見するしかない。
「それに、利用価値がないわけじゃないし」
キャロルにだけ聞こえるような小さな声でそう呟いたアメリアにキャロルは半眼になった。
「交友関係を利用できればよ、あの人みたいに家族の人生まで利用しようとなんて思っていないわ」
アメリアが考えているブラウン領での特産品から作る新商品。うまくエルザの人脈を利用して販売ルートを確保できるのではないかと考えてみた。
ブラウン領が潤うのは実家が潤うということ、それがエルザの嫁ぎ先での立場を上げると考えれば悪い話ではない。
人を利用価値でしか見ない人間であれば、アメリアとしても利用させてもらうのに罪悪感を感じなくていい。
それに、アメリアは王宮で経験値をあまり積むことができないでいた。おそらくエルザはその経験を積んでいることは確かだ。ならば盗ませてもらうのも一つの手だ。
「ごきげんようエルザ様」
キャロルもアメリアに合わせてあいさつを述べる。
「そうね、ちょっとおもしろいものを見せようと思うの」
エルザはそう言ってアメリアとキャロルを薔薇園に連れて行った。
薔薇園は春から秋にかけて常に薔薇を絶やさないように種類を厳選している。春先に咲く薔薇と初夏に咲く薔薇、真夏に咲く薔薇、秋に咲く薔薇とすべてを等分に植えて、常にどれかが咲いているようにしている。
だから同じ薔薇園ではあるが、季節ごとに色どりは異なる。
春先はピンクと白が多い。
夏場はもっと色の濃い花が咲いているようだが、まだ見たことはない。
「あそこの人達の話を聞いていると面白いわよ」
ピンクの一重咲きの薔薇を観察しているふりをしながらそっと耳をそばだてた。
三人の淡い色のドレスを着た令嬢たちだ、どうやら対岸の火事を笑っているらしい。
その内容は遊びすぎて、婚期を逃しかけた令嬢がいて、何とか家族のコネで婚約にこぎつけそうになっているのだが、その目当てのご令息にデビュタントしたばかりの若い令嬢が近づいてきているのだとか。
「ああなっては駄目ですよね」
そう人の不幸を笑いの種にしている。
「ちょっと心が荒むね」
キャロルが呟く。
「多分、親戚のコネというのが、お金になることとか?」
ふいに湧いて出た連想。
「まさか、ね」
キャロルも同じことを連想したようだ。
「さすがにかかわらないでおきましょう」
気を取り直してアメリアはエルザに別の話を振った。
「そういえば、王太子殿下が即位をしないという噂をご存知」
すでに巻き込まれているトラブルがあるのだ、それなら別のトラブルにこれ以上かかわってもどうしようもない。それより、この利に聡い女性なら当然虎視眈々とうかがっているだろう話題を振った。
「もちろんよ」
ぺろりと赤い唇をなめた。
「そうね、ちょっと詳しくお話ししましょうね」
エルザはにこにこと笑ってアメリアを迎えてくれた。過去の悪行を弟がばらしたなど知らないのか知っていても気にしないのかその笑顔からは計り知れない。
「どうしよう」
昨日聞いた話ではエルザはブラウン男爵家から絶縁に近い扱いを受けているらしい。
まあ、無理もない。
キャロルも、貴婦人としての嗜みからあえて表情をしかめることはしなかったが、辛うじてという恵美を浮かべているだけだ。
そして、アメリアとしても未来の義姉の関係は微妙なところだ。
絶縁とはいえ、勘当ではないようだ、だとすれば、結婚式に呼ばないわけにはいかない。
絶縁のいきさつは、アメリアの口から家族に説明しずらかった。スティーブン側としてはもっとしずらかったであろうと思われる。
それを考えれば、今は様子見するしかない。
「それに、利用価値がないわけじゃないし」
キャロルにだけ聞こえるような小さな声でそう呟いたアメリアにキャロルは半眼になった。
「交友関係を利用できればよ、あの人みたいに家族の人生まで利用しようとなんて思っていないわ」
アメリアが考えているブラウン領での特産品から作る新商品。うまくエルザの人脈を利用して販売ルートを確保できるのではないかと考えてみた。
ブラウン領が潤うのは実家が潤うということ、それがエルザの嫁ぎ先での立場を上げると考えれば悪い話ではない。
人を利用価値でしか見ない人間であれば、アメリアとしても利用させてもらうのに罪悪感を感じなくていい。
それに、アメリアは王宮で経験値をあまり積むことができないでいた。おそらくエルザはその経験を積んでいることは確かだ。ならば盗ませてもらうのも一つの手だ。
「ごきげんようエルザ様」
キャロルもアメリアに合わせてあいさつを述べる。
「そうね、ちょっとおもしろいものを見せようと思うの」
エルザはそう言ってアメリアとキャロルを薔薇園に連れて行った。
薔薇園は春から秋にかけて常に薔薇を絶やさないように種類を厳選している。春先に咲く薔薇と初夏に咲く薔薇、真夏に咲く薔薇、秋に咲く薔薇とすべてを等分に植えて、常にどれかが咲いているようにしている。
だから同じ薔薇園ではあるが、季節ごとに色どりは異なる。
春先はピンクと白が多い。
夏場はもっと色の濃い花が咲いているようだが、まだ見たことはない。
「あそこの人達の話を聞いていると面白いわよ」
ピンクの一重咲きの薔薇を観察しているふりをしながらそっと耳をそばだてた。
三人の淡い色のドレスを着た令嬢たちだ、どうやら対岸の火事を笑っているらしい。
その内容は遊びすぎて、婚期を逃しかけた令嬢がいて、何とか家族のコネで婚約にこぎつけそうになっているのだが、その目当てのご令息にデビュタントしたばかりの若い令嬢が近づいてきているのだとか。
「ああなっては駄目ですよね」
そう人の不幸を笑いの種にしている。
「ちょっと心が荒むね」
キャロルが呟く。
「多分、親戚のコネというのが、お金になることとか?」
ふいに湧いて出た連想。
「まさか、ね」
キャロルも同じことを連想したようだ。
「さすがにかかわらないでおきましょう」
気を取り直してアメリアはエルザに別の話を振った。
「そういえば、王太子殿下が即位をしないという噂をご存知」
すでに巻き込まれているトラブルがあるのだ、それなら別のトラブルにこれ以上かかわってもどうしようもない。それより、この利に聡い女性なら当然虎視眈々とうかがっているだろう話題を振った。
「もちろんよ」
ぺろりと赤い唇をなめた。
「そうね、ちょっと詳しくお話ししましょうね」
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