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プロローグ
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昔々、とある国に王子様がいました。王子様は将来、自分の国の王様になるためにたくさんの学問と魔法石の知識、剣や弓、乗馬の稽古もしていました。
ある日、他の国の文化を知るために王子様は旅に出ました。夜も煌びやかで眠ることを知らない国もあれば、山々に囲まれ厳しい冬を越す国もあり、優しい波の音を聞きながらのんびりと時間の流れる国もありました。
色んな国の文化に触れてたくさんの経験をした王子様は自分の国へ帰る途中の事。王子様を乗せた馬車が壊れてしまいました。その場所は人通りも少ないのどかな田舎道でした。王子様と付き添いの従者が困り果てていると、その土地の領主様と出会いました。
「もうすぐで日が暮れましょう。よろしければ、我が屋敷へお泊まりください。」
領主様は王子様達の身分を知りませんでしたが、とても優しくお屋敷に招き入れました。代わりの馬車がやってくるのにとても時間がかかると聞いた王子様は、滞在している間に何かお手伝いをさせてほしいと申し出ました。それならばと、最近お転婆がすぎる娘の遊び相手になってほしいと頼まれました。
お嬢様は三歳になられたばかりで走り回るのが大好きな元気な女の子です。メイドや使用人たちも、お嬢様の元気さに振り回されてみんなバテバテになるせいで、なかなかお嬢様の遊び相手になれませんでした。その話を聞いた王子様は、「まさに適任」と胸を張ってお受けしました。
最初は王子様を警戒していたお嬢様ですが、時間とともに少しずつ仲良くなっていきました。お嬢様はようやく満足に遊んでくれる相手が出来て、疲れ果ててしまうまで王子様と遊び倒しました。
そして馬車がやってきて、王子様達は領主様のご家族とお別れする事となりました。お嬢様は泣きながら、王子様の脚にしがみついて離れてくれませんでした。そこで王子様は、ポケットから小さい赤いリボンの付いた懐中時計を取り出し、お嬢様の小さな手に渡してこう言いました。
「私の瞳と同じ色の時計さ。これを私だと思ってくれるなら嬉しい。もし、貴女が素敵な淑女になられたら、その時に必ずお迎えに上がります。」
それを聞いたお嬢様は、「また必ず会える」と信じて元気よく二つ返事をして、約束をしました。
王子様は必ずその約束を果たす、と領主様たちにも言い、その屋敷を後にして帰国しました。
お嬢様は、その日から素敵な淑女になるために勉強を始めました。テーブルマナーや挨拶は勿論のこと、学問や魔法石の勉強にも打ち込みました。艶やかで綺麗な黒い髪をしているお嬢様でしたが、「お勉強の邪魔になるから」とバッサリ短く切ってしまいます。だけども「とてもお嬢様らしい」とみんなはにこやかに口を揃えて言いました。
それから数年後。貴族と平民が分け隔てなく通う学園に通い始めたお嬢様は友人に恵まれて、楽しい学生生活を過ごしておりました。もうすぐで三度目の春を迎え、卒業を間近に控えていたときの事。
「あの日懐中時計をくださった方からお手紙が届いたの。『春が来る直前にそちらに伺います』と。」
王子様がお迎えに来てくれるそうです。
だけども、嬉しいはずなのにお嬢様はどこか悲しい顔をしてしまいました。はてさて、一体どうしたのでしょうか?
このお話は自分らしく、それでいて相手を受け入れる……『みんな違ってみんなどこか残念』な、深く考えなくてもいい物語です。
それでははじまりはじまり。
ある日、他の国の文化を知るために王子様は旅に出ました。夜も煌びやかで眠ることを知らない国もあれば、山々に囲まれ厳しい冬を越す国もあり、優しい波の音を聞きながらのんびりと時間の流れる国もありました。
色んな国の文化に触れてたくさんの経験をした王子様は自分の国へ帰る途中の事。王子様を乗せた馬車が壊れてしまいました。その場所は人通りも少ないのどかな田舎道でした。王子様と付き添いの従者が困り果てていると、その土地の領主様と出会いました。
「もうすぐで日が暮れましょう。よろしければ、我が屋敷へお泊まりください。」
領主様は王子様達の身分を知りませんでしたが、とても優しくお屋敷に招き入れました。代わりの馬車がやってくるのにとても時間がかかると聞いた王子様は、滞在している間に何かお手伝いをさせてほしいと申し出ました。それならばと、最近お転婆がすぎる娘の遊び相手になってほしいと頼まれました。
お嬢様は三歳になられたばかりで走り回るのが大好きな元気な女の子です。メイドや使用人たちも、お嬢様の元気さに振り回されてみんなバテバテになるせいで、なかなかお嬢様の遊び相手になれませんでした。その話を聞いた王子様は、「まさに適任」と胸を張ってお受けしました。
最初は王子様を警戒していたお嬢様ですが、時間とともに少しずつ仲良くなっていきました。お嬢様はようやく満足に遊んでくれる相手が出来て、疲れ果ててしまうまで王子様と遊び倒しました。
そして馬車がやってきて、王子様達は領主様のご家族とお別れする事となりました。お嬢様は泣きながら、王子様の脚にしがみついて離れてくれませんでした。そこで王子様は、ポケットから小さい赤いリボンの付いた懐中時計を取り出し、お嬢様の小さな手に渡してこう言いました。
「私の瞳と同じ色の時計さ。これを私だと思ってくれるなら嬉しい。もし、貴女が素敵な淑女になられたら、その時に必ずお迎えに上がります。」
それを聞いたお嬢様は、「また必ず会える」と信じて元気よく二つ返事をして、約束をしました。
王子様は必ずその約束を果たす、と領主様たちにも言い、その屋敷を後にして帰国しました。
お嬢様は、その日から素敵な淑女になるために勉強を始めました。テーブルマナーや挨拶は勿論のこと、学問や魔法石の勉強にも打ち込みました。艶やかで綺麗な黒い髪をしているお嬢様でしたが、「お勉強の邪魔になるから」とバッサリ短く切ってしまいます。だけども「とてもお嬢様らしい」とみんなはにこやかに口を揃えて言いました。
それから数年後。貴族と平民が分け隔てなく通う学園に通い始めたお嬢様は友人に恵まれて、楽しい学生生活を過ごしておりました。もうすぐで三度目の春を迎え、卒業を間近に控えていたときの事。
「あの日懐中時計をくださった方からお手紙が届いたの。『春が来る直前にそちらに伺います』と。」
王子様がお迎えに来てくれるそうです。
だけども、嬉しいはずなのにお嬢様はどこか悲しい顔をしてしまいました。はてさて、一体どうしたのでしょうか?
このお話は自分らしく、それでいて相手を受け入れる……『みんな違ってみんなどこか残念』な、深く考えなくてもいい物語です。
それでははじまりはじまり。
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