223 / 242
初期は安静に
しおりを挟む
それは女体化の薬をまさに今日、飲もうかという日のことだった。
「なんか………胸がチクチクする…」
気がする、というちいさなぼやきは聞き逃されることなく狼くんからエルヴィンに伝えられ、あれよあれよという間に体を隅々まで調べられ触診される。
「ちょっとジンジンするだけですよ?大袈裟だなぁ」
「妊娠初期ですね」
「ほら、なんでもなかっ…………えっ、にっ?え、なんだって??」
「ご懐妊おめでとうございます。これで女体化の薬は必要なくなりましたね」
「ご、かいにん……」
ご懐妊て、あれだ、つまり、その、
「俺、妊娠してんの?」
「だからそう言っているでしょう?残念ですが、安定期に入るまでは性行為は禁止です。レイノルド様にもキツく言いつけておきますから、あなたも無駄に男共を煽らないように」
いいですね、とエルヴィンは龍之介に対して注意を促してくる。いったい誰がどの口で……!と言いたくなるところではあるけれど、正直ぶっちゃけそれどころではない。
(俺、マジで妊娠してんの??)
え、マジで?
「意外だな、もっとごねるかと思ったが」
「私は獣人共に比べれば性欲のコントロールが効くからな。それに溜まったら口で抜いてもらっている。なんの問題もない」
「それ、胸を張って言うようなことかね…」
「他人のことをとやかく言える立場か?お前らだって似たようなものだろう」
「そりゃね……龍之介は他で発散してこいとは言うけど、いまいちそんな気になれないのも確かなんだよなあ」
「その痩せ我慢がいつまで続くか見ものだな。獣人の性には勝てやしないだろうに」
「うるせえなあ、半獣だってたいして変わらねえだろうが」
これでも俺やエドは遠慮してんだよ!とスピネルはレイノルドに対して猛抗議する。何処の世界に悪阻で苦しんでる嫁を相手に無遠慮に盛る夫がいるというのか!!
「だから、口で我慢してるだろう」
「口でもさせんなよ!気持ち悪くて吐いてんの見えてねえの!?」
「あれは悪阻だろう」
「お前が喉奥まで突っ込んでトドメ刺してんのわかんねえ!?」
「おふたりとも、声が……」
「喧しいですよ、スピネル王」
あ、もう王じゃありませんでしたねとエルヴィンが微笑みながら前言を撤回するものだから、その場が一気に不穏な空気で包まれる。どうも開き直ったエルフは獣人共と仲良くする気はないらしい。困ったものである。
それでもこの場にいる4人の男たちの心はひとつだ。つまり彼らは無事妊娠した龍之介の今後の体調管理と、自分たちの差し迫った欲求不満の解消策について激しい議論を繰り広げている真っ最中なのである。
「なんか………胸がチクチクする…」
気がする、というちいさなぼやきは聞き逃されることなく狼くんからエルヴィンに伝えられ、あれよあれよという間に体を隅々まで調べられ触診される。
「ちょっとジンジンするだけですよ?大袈裟だなぁ」
「妊娠初期ですね」
「ほら、なんでもなかっ…………えっ、にっ?え、なんだって??」
「ご懐妊おめでとうございます。これで女体化の薬は必要なくなりましたね」
「ご、かいにん……」
ご懐妊て、あれだ、つまり、その、
「俺、妊娠してんの?」
「だからそう言っているでしょう?残念ですが、安定期に入るまでは性行為は禁止です。レイノルド様にもキツく言いつけておきますから、あなたも無駄に男共を煽らないように」
いいですね、とエルヴィンは龍之介に対して注意を促してくる。いったい誰がどの口で……!と言いたくなるところではあるけれど、正直ぶっちゃけそれどころではない。
(俺、マジで妊娠してんの??)
え、マジで?
「意外だな、もっとごねるかと思ったが」
「私は獣人共に比べれば性欲のコントロールが効くからな。それに溜まったら口で抜いてもらっている。なんの問題もない」
「それ、胸を張って言うようなことかね…」
「他人のことをとやかく言える立場か?お前らだって似たようなものだろう」
「そりゃね……龍之介は他で発散してこいとは言うけど、いまいちそんな気になれないのも確かなんだよなあ」
「その痩せ我慢がいつまで続くか見ものだな。獣人の性には勝てやしないだろうに」
「うるせえなあ、半獣だってたいして変わらねえだろうが」
これでも俺やエドは遠慮してんだよ!とスピネルはレイノルドに対して猛抗議する。何処の世界に悪阻で苦しんでる嫁を相手に無遠慮に盛る夫がいるというのか!!
「だから、口で我慢してるだろう」
「口でもさせんなよ!気持ち悪くて吐いてんの見えてねえの!?」
「あれは悪阻だろう」
「お前が喉奥まで突っ込んでトドメ刺してんのわかんねえ!?」
「おふたりとも、声が……」
「喧しいですよ、スピネル王」
あ、もう王じゃありませんでしたねとエルヴィンが微笑みながら前言を撤回するものだから、その場が一気に不穏な空気で包まれる。どうも開き直ったエルフは獣人共と仲良くする気はないらしい。困ったものである。
それでもこの場にいる4人の男たちの心はひとつだ。つまり彼らは無事妊娠した龍之介の今後の体調管理と、自分たちの差し迫った欲求不満の解消策について激しい議論を繰り広げている真っ最中なのである。
52
お気に入りに追加
1,649
あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

異世界のオークションで落札された俺は男娼となる
mamaマリナ
BL
親の借金により俺は、ヤクザから異世界へ売られた。異世界ブルーム王国のオークションにかけられ、男娼婦館の獣人クレイに買われた。
異世界ブルーム王国では、人間は、人気で貴重らしい。そして、特に日本人は人気があり、俺は、日本円にして500億で買われたみたいだった。
俺の異世界での男娼としてのお話。
※Rは18です
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結済み】準ヒロインに転生したビッチだけど出番終わったから好きにします。
mamaマリナ
BL
【完結済み、番外編投稿予定】
別れ話の途中で転生したこと思い出した。でも、シナリオの最後のシーンだからこれから好きにしていいよね。ビッチの本領発揮します。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる