社畜サラリーマンの優雅な性奴隷生活

話が違う

「貴様、俺を裏切ったな…！」
「ご、ごめーん…」

俺も、あの時はこんなことになるとは思ってなくてさ、と龍之介は平謝りする。が、目の前のロジアンは大層ご立腹である。それもそのはず、あれだけ一夫多妻制度反対！と口を揃えて言っていたはずの張本人が、愛人を持つことを了承しているからである。

「それも、父上と護衛騎士をそのまま愛妾にする、だと…？正気か？後宮を取り潰す意味がないではないか！」
「い、一応意味はあるんだよ…法的な妃はひとりだけにすることで、妃同士の諍いをなくせるし、愛人には王妃が得るはずの権力や加護は何ひとつ渡さない。愛妾は辞めたければいつでも辞められるし、子供が出来れば必ず認知もして、手厚く保護する」
「だが、それでは王家の血筋が…」
「王家の血になど、既に何の意味もない。これまでどれだけの王が他国から嫁をもらってきたと思う？現にお前の母親とてそうだろう」
「ですが、……半分は父上の血が俺にも流れているではないですか」
「俺自身も、母親は平民だ。獣人ではあったが、純粋な王家の血統かと言われればそれはノーだ。そもそも近親交配は数代前から禁じられているし、その時点で王家に流れる血は混じってしまっている」
「………………」

スピネルに言い返され、ロジアンはグッと言葉を飲み込んだ。
う、うーん…気まずい…普通に考えたらどう見てもロジアンの言ってることの方がまともっぽいのに、言いくるめられてる感が半端ない…

「それに、」とスピネルはダメ押しのように続ける。

「お前は俺を王位から引き摺り下ろし龍之介を嫁にすると宣言したが、その気持ちに今も変わりはないか？レイノルドに会った今も尚、それが実現可能であると言い切れるのか？」
「……………それは…」
「レイノルドの前で、借りてきた猫みたいだったと聞いたぞ？」
「龍之介…！貴様ァ…！」
「あっ、ゴメン、つい喋っちゃって…」
「……………！！！」

……めちゃくちゃに睨まれてしまった。ちょっとスピネルに漏らした雑談で、うっかりセンシティブな地雷を踏んでしまったらしい。ロジアンは涙目である。ごめん、マジでごめん…

「だが本当のことだろう、ロジアン。実力の差を思い知ったのだろう？お前の言う通りこの国を一夫一妻にしようと思うなら、龍之介の隣にはレイノルドしか立てなくなる。それは、俺も困るんだ」
「………………」
「レイノルドが即位したら、幾つか法改正を行う予定だ。お前や双子たちが健やかに育つ環境を整備するつもりだし、お前にも勿論それを手伝ってもらう」
「…………後宮がなくなっても、双子たちが命を狙われる可能性は、まだあるのですか？」
「あるだろうな。だからその芽を潰していく。少々乱暴な手も使うつもりだから、その心積もりでいろ」
「…………承知した」

そういうことなら、喜んで手を貸しましょうとロジアンは言った。やっぱりロジアンも幼い弟や妹たちのことは気掛かりだったのだろう。色良い返事がもらえたことでホッと一安心していた龍之介だったが、ロジアンは話はまだ終わっていないとばかりに龍之介の手を取ると、至近距離から顔を覗き込んできた。

「え、な、なに？ロジアン」
「愛人の件は、正直まだ納得いっていない。俺は今でも貴様を誰かと共有するつもりはないし、貴様の愛人のひとりになるのも御免だ」
「………………」


俺、そもそもお前を愛人にするとは一言も言ってないんですけど…？