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数少ない美徳

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「いや俺だって色々考えたよ?エドにとって何がいちばん良い未来なのかって」
「誰に向かって言い訳してんだ?」
「ええと…それは、その、世間に…?」

なんだそれ、とスピネルは笑う。レイノルドが来てからというもの、もっぱら夜はレイノルドと過ごしていた(というか勝手にヤられていた)ので、こうしてスピネルと過ごすのは久しぶりである。というか龍之介がロジアンに助け出されたあの日以降、スピネルは何かと忙しそうにしていて、正直少し心配していた部分もあった。

(後宮の解体だって、実際俺が原因みたいなもんだしな…)

そもそもスピネルは嫁たちのことを、皆可愛いと評していたのだ。自分さえいなければ、今もこの先もずっと、彼らは楽しく幸せに暮らしていたのではないか…?

(なんて考えないでもないけど、それだとニルやロジアン、双子たちは蔑ろにされたままになっちまうんだよな…)

それは、ちょっと、看過できない。
その気持ちだけは、龍之介の中に確かにあったのだ。


「王妃たちの件は、お前が気にすることじゃない。お前は被害者だし、妃たちを制御仕切れなかった俺に、全ての責任がある」
「そう、ロジアンに言われた?」
「……まあ、言われたな。成人に満たない我が子に、危うく殺されかけるところだったぞ」
「ハハ、ロジアンは良い男になりそうだよな」
「父親似だからな」
「……だな、」

至近距離で笑い合う。吐息のかかる距離。目を閉じれば自然に触れ合うくちびるの感触に、龍之介はゆっくりと瞼をあげる。

「…………後悔しないのか?6人の嫁たちにだって、愛情も愛着も残ってるだろ」
「ない、と言えば嘘になるか。だが、彼女たちは俺との約束を違えた、…………お前を排除しようとした時点で、俺は彼女たちより龍之介、お前を選んだんだ」

お前だけでいいと思った、とスピネルは囁くように額を預ける。
それはどんな愛の告白よりわかりやすく、龍之介の心に届いた。こんなことをスピネルに言わせるなんて、……言われるなんて、ついこの間までは想像すらしていなかった。


「…………俺、そんなに性格もよくないし、顔も普通だし、特別若いってわけでもないし…」
「うん?」
「そりゃ、ちょっと、人よりエッチなことは好きかもだけど、特別名器ってわけでもないし…」
「お前、意外と自己評価低いな」
「だ、って!なんか美形率高いだろ、こっちの世界!!俺なんて平凡過ぎだし!なのにあんな美人たちより俺の方がいいなんて……っ」
「なんて?」
「……………すげえ、うれしい…」


顔を真っ赤にさせてそう、正直に白状した龍之介を、スピネルは満面の笑みで抱き締める。
その素直さ故に、お前は何よりも尊いのだと、胸の内で思いながら。

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