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キャパ足りてない
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「なに……その、顔…」
目線が合って、数秒も立たぬうちに龍之介は昏倒した。
それはまさに、一瞬の出来事であった。
「…………恐らく、中の気にもあてられていますね」
「確かに、起きたようだな」
「こうなってしまっては仕方がない。彼には慣れてもらうしかないでしょうね」
まずは少しずつ、時間の制限をつけながら様子を見ましょうとエルヴィンは倒れた龍之介をベッドに寝かしつけながらそう判断する。
「つまり、すぐには触れないということか」
「そんなことをすれば彼はショック死しかねませんよ。魔人の気はやはり人間には毒ですから。レイノルド様に同化しているとはいえ、すぐに慣れるのは難しいかと」
「折角会えたのに、触れられぬとは…」
生殺しもいいところだ、とレイノルドは眉間に皺を寄せる。しかし久しぶりに見る寝顔はそれはそれで可愛いかった。今は苦悶の表情を浮かべているが、それもまた良い。
「…………寝ている間なら、好きに弄って構わないだろう?」
「嫌われますよ、単純に」
「そうか?私は別に、リュウになら何をされても構わないが」
「…………目が覚めるような行為は控えて下さいね」
「ならば眠りの魔法を上書きしてやろう。そうすれば何をしても起きない。そうだろう?」
「……………(もう好きにしてくれ)」
エルヴィンは溜息を吐いて部屋の隅に控えていた護衛騎士を引き連れ部屋を出ていく。
どうせあれはもう、何を言っても聞く気はないのだ。ならば進言するだけ無駄というものである。
(龍之介には気の毒ですが………これも運命と思って耐えてもらうしかないでしょう)
それがレイノルドを恋人に持ってしまった彼の宿命というものだろう。つまり、多少の無理難題は許容してもらうしかない。
それにもしかしたら、案外意識がない間に触れ合うという行為にはそれなりの効果があるかもしれない、とも思う。
「まあ、普通に怒るでしょうけどね。寝ている間に好き勝手されていたと知ったら」
「しかしそれは龍之介様を思ってのことなのでは?」
「違いますよ、あれはただ単に禁欲していた分をすぐに発散させたいだけでしょう」
「うう…」
「あなたも不本意でしょうが、まあ仕方がありません。暫く席を外していて下さいますか?」
「わかり、ました…」
「(何か気の毒だな…)」
折角の久しぶりの対面が僅か数秒で終わってしまったのだから、そりゃあレイノルドとしても欲求不満だろう。
だからと言って、気を失っている恋人相手に悪戯してもいいのかと言われれば、それはさすがに同意しかねるわけだが…
「そうですね、では3時間後にまた集合しましょうか」
3時間も…という絶望した呟きには聞こえないふりをした。大変気の毒ではあるが、致し方ない。こればかりは慣れてもらう他ないのだ。
この先も、あのふたりの傍にいようと思うのなら。
目線が合って、数秒も立たぬうちに龍之介は昏倒した。
それはまさに、一瞬の出来事であった。
「…………恐らく、中の気にもあてられていますね」
「確かに、起きたようだな」
「こうなってしまっては仕方がない。彼には慣れてもらうしかないでしょうね」
まずは少しずつ、時間の制限をつけながら様子を見ましょうとエルヴィンは倒れた龍之介をベッドに寝かしつけながらそう判断する。
「つまり、すぐには触れないということか」
「そんなことをすれば彼はショック死しかねませんよ。魔人の気はやはり人間には毒ですから。レイノルド様に同化しているとはいえ、すぐに慣れるのは難しいかと」
「折角会えたのに、触れられぬとは…」
生殺しもいいところだ、とレイノルドは眉間に皺を寄せる。しかし久しぶりに見る寝顔はそれはそれで可愛いかった。今は苦悶の表情を浮かべているが、それもまた良い。
「…………寝ている間なら、好きに弄って構わないだろう?」
「嫌われますよ、単純に」
「そうか?私は別に、リュウになら何をされても構わないが」
「…………目が覚めるような行為は控えて下さいね」
「ならば眠りの魔法を上書きしてやろう。そうすれば何をしても起きない。そうだろう?」
「……………(もう好きにしてくれ)」
エルヴィンは溜息を吐いて部屋の隅に控えていた護衛騎士を引き連れ部屋を出ていく。
どうせあれはもう、何を言っても聞く気はないのだ。ならば進言するだけ無駄というものである。
(龍之介には気の毒ですが………これも運命と思って耐えてもらうしかないでしょう)
それがレイノルドを恋人に持ってしまった彼の宿命というものだろう。つまり、多少の無理難題は許容してもらうしかない。
それにもしかしたら、案外意識がない間に触れ合うという行為にはそれなりの効果があるかもしれない、とも思う。
「まあ、普通に怒るでしょうけどね。寝ている間に好き勝手されていたと知ったら」
「しかしそれは龍之介様を思ってのことなのでは?」
「違いますよ、あれはただ単に禁欲していた分をすぐに発散させたいだけでしょう」
「うう…」
「あなたも不本意でしょうが、まあ仕方がありません。暫く席を外していて下さいますか?」
「わかり、ました…」
「(何か気の毒だな…)」
折角の久しぶりの対面が僅か数秒で終わってしまったのだから、そりゃあレイノルドとしても欲求不満だろう。
だからと言って、気を失っている恋人相手に悪戯してもいいのかと言われれば、それはさすがに同意しかねるわけだが…
「そうですね、では3時間後にまた集合しましょうか」
3時間も…という絶望した呟きには聞こえないふりをした。大変気の毒ではあるが、致し方ない。こればかりは慣れてもらう他ないのだ。
この先も、あのふたりの傍にいようと思うのなら。
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